第14話 レイチェルの趣味
ロニーの家に戻った時には、すっかり寒くなっていた。
「ふぅ~、寒い! 今日は温かい物にしましょう」
「そうだね。お手伝いするよ」
「ありがとう、マリ。じゃあ、防寒具を脱いだら先にキッチンにいて。私もロニーのお使いの品を渡したら、すぐに行くわね」
「はい」
レイチェルは先にロニーのお使いの品を渡しに行った。
私は、先に部屋に戻って防寒具を脱ぐ。
そして、先にキッチンへと向かった。
ロニーの言う通り、廊下をまっすぐ歩いていくと、少ししてキッチンへと着いた。
今日はどんな料理にするのだろう?
私は楽しみになってきた。
「ロニー、マスターから頼まれたものを受け取って来たわ。あと、小瓶はいつもの場所にしまってあるから」
「ありがとう、助かるよ」
「準備は順調? 」
「まあまあ、ってところさ」
「そう……、なら良いけど」
「未だに少し、緊張したりもするさ。僕はね」
ロニーは優しい口調で言う。
レイチェルは少し安心したような、逆に自分も気が引き締まるような、そんな気持ちでいた。
「今日は本当に冷えるね」
「温かい食事を用意するわ」
「ありがとう、レイチェル」
レイチェルはキッチンへと急ぐ。
マリを待たせたままだったからだ。
「お待たせ、マリ! 遅くなってごめんね」
「ううん。あれだけいっぱいあったから、私も手伝えばよかったな、って途中で思って」
「良いのよ、あれは」
レイチェルは笑って言った。
レイチェルは小気味良い音を立てながら食材を切っていく。
「コトレッタ・アッラ・ミラネーゼとミネストローネにしますか」
「コトレ……、って何? 」
「ミラノ風カツレツって言ったらわかるかしら? 」
「うーん、あまり……」
「なら、楽しみにしていて」
レイチェルは笑って言う。
本当に、レイチェルは優しく笑う人だな、と改めて思う。
私は、野菜をスティック状に切る。
そして、ソースを温めていた。
一体、これは何のソースなんだろう?
私は不思議に思いながら、とりあえずソースを温めた。
「バーニャ・カウダも完成ね。さあ、ロニーを呼んでくるわ」
レイチェルはキッチンから出ていく。
私は、三人分のグラス、スプーンとフォークを出しておく。
コトレッタ・アッラ・ミラネーゼとミネストローネ、バーニャ・カウダが並んだ食卓に、つい目が輝く。
とても豪華だな、と少し感動した。
「お、今日はコトレッタ・アッラ・ミラネーゼがある! 」
「ロニー、これ好きだったわよね」
「そうそう、大好物なんだ。嬉しいな! 」
ロニーは子どものようにはしゃいだ。
グラスにグリッロという品種から作られたという白ワインが注がれる。
「お肉というと、やっぱり赤ワインと思われがちだけど、重めの白ワインも意外と相性が良いのよ。試してみて」
レイチェルが優しく言う。
「では、今日の恵みに感謝して……、いただきます」
ロニーを筆頭に、三人それぞれお祈りをして、食事を始める。
「今夜は、雨が降らないと良いわね」
「今夜? 何かあったかい? 」
「流星群があるじゃない」
レイチェルは少し興奮気味に言う。
「そういえば、レイチェルは天体を見ることも好きだもんな」
「そうよ。だって、キレイじゃない! 」
「まあ、そうだけどね。うんと寒くなってきたから、しっかり防寒をしないといけないよ」
「もちろんよ」
「私も見たいな……」
「もちろんよ、一緒に見ましょう」
食卓は、しばらく天体の話でもちきりだった。
夜中、三人で外に出る。
身を切られるような寒さに震えそうになる。
「見て、星が……! 」
レイチェルは興奮気味に言った。
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