第7話 アローニ初の夕飯
食卓には、大好物であった『ミネストローネ』がある!
私はそれだけで嬉しくなった。
ミネストローネは、トマトベースの野菜スープだ。
可愛らしく、カラフルなマカロニも一緒に入っていて、さらに嬉しくなった。
「これって、ミネストローネ!? 」
「そうよ。私の得意料理なの。いっぱい食べてね」
「嬉しい! 私、ミネストローネは大好きなのよ」
なぜ、ミネストローネが大好物だということを覚えていたか……。
不思議なことに、食に関してだけはある程度記憶が残っていてくれた。
「どうして、食は記憶に残っていたんだろう? 」
「生存本能じゃない? アレルギーとかを回避するために、とかあると思う」
「それもそっか……」
私はロニーの意見に納得してしまった。
レイチェルはグラスに何か注いでいた。
ほろ苦い、薬のようなにおいがした。
「そういえば、マリは成人してるのよね? 」
「多分……」
「そこの記憶はまだ戻ってないのね……。もし成人してるなら、良かったらワインか何か一緒に飲むのもいいかと思ったんだけどね……」
「そういえば……」
ポケットの中に、小さなメモが入っていたのを思い出した。
「あ、私、成人してるわ」
「名前とかは書いてないの!? 」
「多分、当たり前になってて後でいいや、って書かなかったんだと思う……」
「分かる気がする……。確かに名前は当たり前みたいになっちゃうもんなぁ」
ロニーは横でうんうんと頷く。
「私は真っ先に書くわよ! 」
レイチェルはメモを見た。
「お酒は飲めるみたいね。じゃあ、カンパリで乾杯としましょう」
「そうだね、出会いに感謝ってやつだ! 」
「これ、カンパリっていうの……? ちょっと薬みたいな匂いがするのね」
「カンパリは、ビターオレンジやハーブを混ぜたお酒だからちょっと薬っぽいにおいがするのも仕方ないかな」
「そうだったんだね……」
ロニーは笑った。
「明日、カンパリに似た香りのエッセンスを見せてあげるよ」
私はその言葉にビックリする。
「あるの!? 」
「あるよ。プチグレイン、それとネロリもそうだね。どちらもビターオレンジから採れるんだ。ネロリは花から、プチグレインは枝や葉からエッセンスを採取しているんだよ」
「同じ一本の木から、こんなにも活用できるんだね……」
「驚いたかい? 僕も最初は驚いたからね。こんなに有効活用できるんだ、って感動したもんだよ。懐かしい気分だ」
レイチェルはグラスのカンパリに何か液体を入れていた。
「レモンジュースを少し入れたの。柑橘同士でさっぱりとしているわ。試してみるなら少し入れてあげるわよ? 」
「じゃあ、お願いします」
私のグラスのカンパリに、ほんのりとレモンジュースが入る。
赤いカンパリに、ほんのりと薄黄色が混ざる。
私はその様子を、つい見入っていた。
一口飲むと、確かにさっぱりしていた。
「いっぺんに飲むのはお勧めしないわよ。少しずつゆっくり飲んでちょうだい」
「はーい」
三人で話しながら料理をつついていると、急に安心感と満腹感で眠たくなってきた。
「あ……お片付けは手伝わないと……」
「良いわよ、今日は。色々あってマリも疲れたでしょう? 今日はゆっくり休んで、明日から一杯手伝ってもらうから」
「良いの? 本当に」
「ええ。今日はゆっくりしてちょうだい」
「レイチェルがそう言うなら、マリはゆっくり休むことだね」
「ありがとう、レイチェル」
私は一応自分のお皿を下げて、部屋に戻る。
そして、そのままベッドの中に体を預けると、そのまま寝てしまった。
『シーノ、やっぱり可愛いなぁ。もっと可愛くしたいなぁ』
『……は本当にシーノが好きだよね。わざわざ……に行くくらいだし』
『一番の相棒だからね! ……に行って、もっといっぱい勉強して……になりたいな、って思ってる』
これは……、記憶なのか夢なのか……。
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