第8話 不思議な夢
『……、ふ……、シーノと本当に組むのかい? 』
『うん。アクティビティはやっぱりシーノじゃないと! 』
……ふ?
だが、私の視界は霧がかったまま、姿はわからない。
自分の事なのか、傍にいる人の事なのか……。
一体何者なんだろうか……。
『……ふ……はどうしたいんだい? 』
『専門学校行くよ。夢のために』
『……ならできるだろうね。……かはどうするんだい? 』
「……考えてない」
『もうすぐお前も進路を考える時期だろう? 本当に考えていないのか? 』
『考えてない。』
『……かはどうして何も考えていないんだろうね? ……だというのに』
『比べないで! 私は私、……は……だよ! 』
『確かにそうだけど、ちゃんと将来をもっと考えるべきだよ』
「分かってる! でもね、考えても決まらない人だっているの! 」
『急かすことじゃないと思うよ』
『でもね、受験をするか、仕事をするか、アンタたちの人生の大きな分岐点なんだからそこだけはしっかりしないといけないよ』
その人は、たくましい体格の男だった。
私にとって、その人は誰なのか……。
顔は霧がかって分からない。
その後ろには、二人の女性、いや、女学生。
同じく顔がわからないから、私にとってどんな人なのか……。
それは分からないままだった。
けど、妙にその雰囲気は温かく、居心地がいいように感じた。
ふとか、聞き取れる言葉はそれだけだった。
私はどちらだ?
そして、……だというのに、ってどういう意味だろう?
私は眩しい光に目を覚ます。
そこは、やはりロニーの家の寝室。
「あれ……、夢だったのかな? ……なにか思い出せそうな気はしたのに」
相変わらず、名前も思い出せない。
自分が何者なのか、私は私自身がわからない。
ただ、生きて動いているだけの存在に思えてきた。
「起きてるかい? 」
いきなりロニーが部屋に顔を出す。
「ロニー! ノックしなさい、って何度言えばわかるの!? 」
ロニーとレイチェルの声がする。
二人は本当に仲が良いな、としみじみ思う。
「起きてるよ」
私は笑って答えた。
私は着替える服を手に持つ。
「先にキッチンにいるからね。」
ロニーは笑って部屋を出ていった。
先に着替えて、そしてキッチンへと向かう。
けど、私は忘れていたことを一つ思い出した。
ロニーの家が、途方もなく広い上に……。
「迷路じゃん! あれ? どっちだっけ……」
中は結構ごちゃごちゃといろんな曲がり角だらけ。
迷路のようになっているのだから、なかなかキッチンにはたどり着けない。
「このままここで彷徨うのかしら……。それはそれで良いのかもしれない……」
「マリ、こっちよ? 」
「えっ? 」
振り返ると、レイチェルが困った表情で入り口に立っていた。
「通り過ぎちゃったからびっくりしたわ」
「迷子になっちゃってたの……」
「広いからね。仕方ないよ。さあ、いらっしゃい」
レイチェルのおかげで、美味しい朝食にありつくことができそうだ。
けど、やっぱり……
「あとでロニーに文句言っていい? 」
「ここ、ロニーのお爺様からこんな家だったらしいから、ロニーに文句を言っても変えられないけどね……。文句を言いたい気持ちは痛いほどわかるわ……」
「へくしっ!」
ロニーは一人、大きなくしゃみをした。
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