第5話 買い物からの帰り道
レイチェルはおススメの雑貨屋さんに連れてきてくれた。
「ここよ。Acquamarina(アクアマリーナ)っていうのよ。とても可愛い雑貨も多くて、結構人気なのよ」
「へぇ、凄い! あ、キレイな色のカップがある……! 」
「ふふ、本当にマリはこの色が好きなのね。素敵な事よ」
レイチェルは楽しそうに笑って言った。
アクア系の色の雑貨には、ついつい目を引かれてしまう。
そして、一つの物がとても気に入った。
「ねえ、これってどう使うの……?」
「ああ、これ? セラピーで処方された香りを部屋で楽しめる加湿器よ。でも、なんでアクア色のカエル? 」
「なぜか心惹かれてしまって…… 」
「きっと、カエルがあなたを選んだのよ。いらっしゃい、レイチェルと……どちら様? 」
「ああ、ミーシャ。この子はマリ、ロニーのところでしばらく一緒に暮らすから、たまに一緒に買い物に来ると思うわ。よろしくね」
「よろしく、マリ」
私はミーシャのお店でカエルの加湿器と、アクア色のグラスやタオル、ミント色のタオルやちょっとした髪留めなどを買った。
「さてと、帰りましょうか……」
「うん……。凄い荷物になっちゃったね……」
「新生活の始まりは、誰だってそういう物よ。気にしないの! 」
レイチェルは笑って言った。
ただ、丘の上のロニーの家までは結構な距離がある。
とにかく歩こう、私が言うか言わないかの瞬間!
「そうだ! 荷物は配達屋を頼みましょう! ちょっと捕まえてくるから、ちょっと待っててね」
「つ、捕まえる!? え!? ちょ、ちょっと待ってー!! 」
私はびっくりして目が点になる。
が、あわててレイチェルの後を追おうとすると、レイチェルは振り返った。
「すぐ戻るから荷物と待ってて! 」
それから、ほんの少しの時間が経ち……。
レイチェルと、ガラガラという音とともに台車のようなものと見慣れない男性と動物がいた。
「さあ、荷物をここに乗せて! 」
「え!? あ、はい! 」
「これで全てかね? 」
「ええ。ロニーの家までお願いね」
「ああ、承った」
男性は台車と動物と共に去っていった……。
私はどう反応していいかわからず、ポカンとしていた。
「今のが配達屋よ」
「な、なるほど……」
「あれは馬がリアカーを引いているって原理よ。おじさんは馬の操縦士ってとこね」
「そうだったんだ……」
私はレイチェルの説明で何となく察しがついた。
ただ、ロニーの家は急な丘の上……。
「馬、大丈夫なのかな? 」
「ああ、アローニは急な丘も少なくないから大丈夫よ」
「そうなの? 」
「そういう風に進化して今の配達屋のシステムができたんだから」
私はその言葉に、ようやく納得した。
荷物のない私たちは、ロニーの家まで歩いて帰ることにした。
「またあの坂を登るのね……。大変だわ……」
「慣れたらそうでもないわ」
レイチェルは笑って言う。
他愛のないような話をして歩いていく。
レイチェルは何が好きとか、私の覚えていることを話す。
「レイチェルは動物が好きなんだ……いたっ……」
ふいに、ずきりと鋭く頭が痛みだす。
「大丈夫!? マリ、もうすぐ家よ。歩ける? 」
「へ、平気、歩くよ」
なぜか動物が好きという言葉で、頭痛が起きたのか……。
私はその時知る由もなかった。
『私、……になりたいんだ。……を可愛くしたいから』
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