ep.5 階段の怪談
…荻沢君に会わなきゃ
ここまできて、わかったのは彼は自殺していること。
それなのに私と会ってきたのはなんでなんだろう。
別段、彼とは知っている中でもなかったわけなのにどうして….
それに、この謎の白い玉もどことなく消えかかってて、どうにも落ちつかない。
この謎の白い玉というのも、本を開いた時に浮き上がってきた代物だ。
荻沢君を探そうとした時、ゆらゆらと外に向かっていったのだ。
「この先…?」
少し不気味な廊下を、転けないように駆け抜けた先に、薄暗い階段があった。
「運動不足かなぁ」
ようやく3階。すでに息はきれ、階段を上がっていく足もどんどん遅くなっていった。
「何かおかしい...」
一度呼吸を整え、再び駆け足で登り始めたはずなのに、なぜか登っても登っても上の階に辿り着かない。
月明かりが差し込む階段で、何度も何度も同じ景色を横目に登った。
「…だっる」
会って早く話をつけたいけど、それを拒むように続いてく階段。
廊下を見に行ってもその先はまっくらで足が進みそうになく、ゆっくり行っても、全力で走っても、たどり着くのは3階。
足が痛くなってきたから、階段の途中で腰をかけた。
ぼんやりと見える窓の外はどこか、寂しそう。
「…っん?」
何となく目を上にやった時にどうも違和感があるように思えた。
それを探るように目を皿のようにして見た。
「あ…」
階段の標識が片方しか書かれていないのだ。その裏の数字やら文字やらを隠すように、白い玉が覆いかぶさって3/○になっているのだ。
さっきまで私を導いたり、まとわりついてたその光の玉が隠れるように薄くなってそこにあった。
「…えい」
指でつんっと突いて見た途端、白い光がふわっと離れてRいう文字が浮かび上がった。
「今度こそ行ける…はず」
再び駆け足で、上に向かうとすぐに屋上の扉らしきものが見えた。
ドアノブに手をあて吐息をひとつ。
そしてドアノブを押し込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます