ep.2 図書館でのまったり

チャイムの音が聞こえた気がする。

空を眺めて惚けていたのか、はたまた寝ていたのか。

ふと視線を戻した時、周りはすでに起立していた。

まぁ…気づかれないでしょ…

「江夏さん。授業終わりましたよ」

「はいぃ!」


はぁあ…目立っちゃった……

そんなことを考えながら、図書館のドアを開けた。

「…」

「あ!司書さん」

「あぁ..江夏さんですか。今日当番でしたっけ?」

「あ…いや..そう言うわけじゃないんですけど」

「まぁ、ちょうどいいや。今日当番の子サボってるみたいで」

「調べ学習しながらなら」

「それで、いいですよ」

荷物を置いて、司書さんの隣に座った。

「ってなわけで、学校調べやるんですけど、司書さんはなんか面白い話知りません?」

「私ですか?」

「確か、ここで司書やってるのも長いんですよね?しかもここの元生徒で」

って先輩から聞いた話だけど…

「よく知ってますね。まぁかれこれ15年くらいはいますね」

「じゃあ、面白い話の一つや二つくらい!」

司書さんは持っていた本を閉じ、こちらを向いた。

「面白いかは分かりませんが、幽霊が出る話ってのはありますよ」

「ゆ…幽霊?」

「どうも屋上に出るらしいんですよね」

「…屋上!?」

「あ、でも私は図書館で見ましたね。」

「んん!?見た?見えるんですか?」

「何ならマブですよ」

「マブ!?」

「冗談です」

あはは…冗談ねぇ…

「にしてもどんな感じなんだろ」

まぁ、ほんとにいるかも怪しいけど

「いや?えな…」

「ん?」

「あぁ..いえ。どんな感じ..かはそうですね…優しい感じ…」

少しだけ、いつも見ないような顔をしていたように感じた。

「優しい幽霊…ですか」

「あれは…確か10年前でしたかね。この学校の男子生徒が飛び降り自殺したのは。」

「……じ…自殺…ですか…」

「えぇ。卒業式の一週間前でした」

「……」

「なんでも、受験に失敗したとか、親や友達とも上手くいかなかったとか…あ、この話あんまり他言しないでくださないね…」

「も…もちろん!言いふらしたりはしないですよ」

自殺だなんて…ね…

「あとはねぇ、この学校の面白い話ってなると、平均年齢の話くらいしか…ないですね!なんせ、うちの学校に風変わりな事とかって特にないですから。」

「まぁ…ですよね。まぁ、あとは適当にネットで調べます」

「もしかしたら細かいことは昔の文芸部だか新聞部だかの記事に載ってるのがあるかもね」

「ほほう」

「あ、私これから別の仕事があるので」

「わかりました!」

そのあとすぐに、司書さんが奥に行ってしまったきり、会話が続くことはなく1時間がすぎた。

「今日はこれぐらいにして閉めますか」

ひょこっと後ろから顔を出した司書さんがそう言ってきた。

「は〜い」

「では、お礼にこれを」

そう言って、渡されたのはたまごパンだった。

「あ...ありがとうございます」


図書館から出てすぐの電算室前を通った時、なぜか入りたくなった。

無くなってた筆箱があるかもしれないと思い立ち止まる。

ガラガラとスライドドアを開け、横にあった利用名簿を記入しようとした時だった。

ふと電算室の奥の方を覗くと、見たことある男子生徒がいた。

「あれは…」

目の前で手を振る荻沢明が、そこにはいた。

「お!荻沢くんおっひさ〜」

「そうっすね」

「あ、そこの前のパソコンって何番?」

「んと…38かな」

「オッケー」

なぜか、利用名簿には荻沢くんの名前がなかった。

「ねね、ここで何してたの?」

正面のパソコンに座って、いつものようにログインした。

「ちょっと一休み…みたいな?」

「そっか。あ、あれやった?」

「ん?あれ?」

「学校調べをまとめるってやつ」

「…そんなのあったっけ?」

「ほら、この前の授業の最後に言われたらしいやつ」

「あ〜あれね」

そういや彼、授業受けてたっけ…?

「ま、いいや。じゃあさ一緒に調べてくんない?」

「別に、いいっすよ〜」

「決まりね」

パソコンに自分IDとパスワードを入れ、早速検索エンジンとパワポを開いた。

「荻沢君は開かないの?」

「あ〜…なんか使えなくて」

「そんなことある?」

「まぁ、そういう日なんですよ」

どうしてか、目を合わせようとしてくれなかった。

「そ…そういう日?」

「ってなわけで、横で見てますよ」

「まぁ、わかった」

とりあえず、さっき司書さんが言ってたことを調べたい訳だけど…

口外禁止って言われてるしなぁ

「何から調べようかなぁ」

「まぁ、調べると言ったら、あれですよ」

「あれ?」

「怪談とか」

「階..段…階段?ステップ?」

「学校の怪談の方」

「なるほど?」

「まぁ僕が知ってるのだと…竹早高校七不思議…みたいな」

「みたいな?」

「全部は知らないからね」

「なるほど。それを荻沢君はまとめるの?」

「…いや?」

「なら、何をまとめるの?」

「まぁ…それは…おいおい」

「ふーん。じゃあ、学校の七不思議でも調べてみようかな」

「じゃあ、僕が知ってるのからいく?」

「お言葉に甘えて」

それから、4つの話を聞いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る