第4話 カミラ
「お嬢様、そろそろ起きてくれないと準備ができませんよ?」
身体をゆすぶられて、目を開けた。
目の前には…侯爵家で雇っていた侍女の…
「カミラ…?」
「はい、カミラですよ~。
もういい加減起きて準備しないと、間に合いませんよ?
レイニード様が来てしまいますよ~。」
「…レイニードが来る?」
「ええ。今日は婚約の挨拶に来るってお約束でしょう?
そろそろ起きて準備しないと間に合いませんよ。」
は?
どういうこと?がばっと起き上がると、そこは侯爵家だった。
しかも、昔の私が使っていた部屋だ。この寝台も昔使っていた寝台。
父が再婚してしばらくして、この部屋はエリザベスに奪われていた。
一番いい部屋だからと。
何かと私に味方したカミラも、その頃に辞めさせられてしまっていた。
「起きましたか~?」
のぞき込んできたカミラは、昔のままのカミラだ。
茶色の髪、緑色の目、優しい笑顔。数年たっても変わらない?
しかも、レイニードが婚約の挨拶に来るって言わなかった?
それは、もう5年前の話よね?どういうこと?
何よりも…私、神の審判から落ちたのではなかったの?
「カミラ、私、さっきまで夜会に行ってて…。」
「あら、素敵な夢ですね~。
お嬢様が夜会に行けるようになったら、カミラが張り切って準備しますからね!」
「行けるようになったら?」
「ええ。夜会に行けるのは15歳からですよ~。
お嬢様が行けるようになるまで、あと3年お待ちくださいね。」
あと3年お待ちください…レイニードの婚約の挨拶。
確認したくて手のひらを見てもよくわからない、けど、胸は小さいように見える。
もしこの疑問が本当なら…。
「カミラ、私、12歳になったばかり、よね?」
「そうですね~。先日12歳の誕生日を迎えましたね。
さぁ、いい加減起きてください!」
無理矢理に寝台から引っ張り出され、鏡の前に座らされると、
明らかに自分が小さいのがわかる。
きちんと手入れのされた腰まである銀色の髪。お気に入りの香油の匂い。
幼い顔立ちの私が、目を見開いたまま鏡の中から見つめ返してくる。
間違いなく12歳の頃の私だわ…。
カミラに髪をとかされながら、まだ働かない頭を必死で動かそうとする。
神の審判は本当だった?
無実の罪というか、乱暴されそうだった私を神が助けてくれた?
時間が戻っているということは、ああならないようにやり直せっていうこと?
でも…レイニードと婚約した後に戻すなんて。
せめて婚約する前に戻してくれたら、婚約しないですんだかもしれないのに。
ため息はカミラに聞かれなかったようだが、重い気持ちは変わらなかった。
あぁ、12歳のレイニードと何を話したらいいんだろう。
そうだ。
この日だった。
「俺はエミリアを守る騎士になるよ。」
そう言って、レイニードは私に騎士の誓いをしてくれた。
その後、騎士団に入ったレイニードとはまったく会えなくなるなんて知らずに、
素直に喜んでいた私が馬鹿だったのだけど。
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