19話 時間稼ぎ
海上。出発地点であるガラスの浜はもう見えず、辺り一面大海原が広がる中、何隻もの船が編隊を組んで走行している。その編隊の中央には、周りの船より大きな船がおり、そこに主戦力である
「うえぇ〜…気持ち悪い……」
出撃する前のテンションとは打って変わり、船酔いのせいでテンションが下がりに下がっている火千が、船尾で項垂れている。
「船に乗る前までのテンションはどこにいったのやら。」
凛太郎がハァとため息をつく。
「お、桜音木…お前のま、魔法でどうにかできないか……?」
青ざめた顔で桜音木に助けを求める火千。
「船酔いを止めるか…これならどうだろ。」
桜音木は魔導書に『
「おっ…!おぉぉぉぉぉ!サンキュー桜音木!」
火千は桜音木の両手を掴み、ブンブンと振って感謝を示す。
「よっしゃー!いつでもこい骸骨野郎!」
テンションが再び上がった火千は、船尾から船首へと移動し、仁王立ちをする。
「お前は船酔い大丈夫なのか?」
凛太郎が桜音木に訊く。
「あー…うん。船酔いよりも緊張の方が勝ってる…かな。」
桜音木はどんどん鼓動が早くなっていくのを感じている。
「そうか。ならば極度な緊張状態にならないことだけは心掛けよ。なって生まれるものはデメリットのみだ。」
「……分かった。」
桜音木と凛太郎の会話が終えた時、遂に退治対象である巨大骸骨がしゃどくろの姿が目視で確認できた。そして上空には戦闘中のレッドフードの姿もあった。
「火の玉の形状が…あれは…小さい骸骨になっているのか。」
桜音木が目を凝らしながら空を見上げ、火の玉の形が変化していることに気付く。その時、団員達が耳元に装着している小型通信機からかぐやの声が聞こえてきた。
「皆さん聞こえますか!現状を
かぐやの指令に従い、団員達が攻撃の準備を始める。
「では…攻撃開始!」
かぐやのからの合図により、団員達による一斉攻撃が開始された。戦闘機よる爆撃、大砲による砲撃、機関銃による射撃と、ありとあらゆる兵器の攻撃ががしゃどくろを襲う。
2分ほど続いた総攻撃は、弾切れという形で一旦中断された。しかし、目に見えての成果は、周囲を飛んでいた火の玉骸骨が全滅しただけで、がしゃどくろ本体にはヒビ1つ入っておらず、依然としてリブカイハに向けて移動を続けている。
「はぁー…あんだけの攻撃を受けて無傷か。」
火千が傷1つないがしゃどくろを見上げながらため息をつく。
「流石は狂鬼級、といったところか。概ね想定通りではあるが。」
凛太郎は特にリアクションをするわけでもなく、次の手を思考する。そこに、上空からレッドフードが降下してきて、凛太郎達と同じ船に着陸する。
「てか、あんなに攻撃されたのに俺等には見向きもしねぇな。」
火千はがしゃどくろの視線が自分達には向けられず、未だ真っ直ぐガラスの浜の方角を見詰めていることに注目する。
「意に介していないわけではないと思います。私が偵察している時、突然襲撃をしてきましたから。」
レッドフードが告げる。
「そうか…そういうことか。」
桜音木がある事に気付く。
「どうした桜音木?」
凛太郎が尋ねる。
「現実世界の妖怪図鑑での説明をそのまま引用すると、がしゃどくろとは埋葬されなかった死者の骸骨や怨念が集まって生まれる妖怪。夜中にガチガチと音を立てながら彷徨い、生者を発見次第に襲撃し、握りつぶして捕食する。というのが、あの巨大骸骨の説明文だ。」
「その説明文がなんだってんだよ?」
火千は意味が分からず首を傾ける。桜音木はちゃんと説明するからと言って話を続ける。
「注目してほしいのは、『生者を発見次第に襲撃し、捕食する。』というところだ。この一連の行為が奴の本能的な動きだとしたら、奴の目的は『生者の捕食』。そしてその目的を効率よく達成するには、生者が多ければ多いほどいい。つまり、奴は『より人が多い所に向かう』傾向があるのかもしれない。」
「リブカイハの人口は現在157万1817人です。」
レッドフードが捕捉情報を入れる。
「確かに。その傾向があるのなら、それだけの捕食対象がいるリブカイハに直行するのも納得だな。」
凛太郎が桜音木の推測に納得する。
「まぁ奴の生態が分かっただけで、これで倒せるってわけじゃ───」
桜音木が話している時だった。
桜音木達は爆音の咆哮に、反射的に耳を塞ぐ。そしてそのまま動けなくなってしまった。
咆哮を上げていた時間は1分となかったが、精神的ダメージとして申し分なく、殆どの団員が動けなくなってしまった。遠くでは操縦士が気を失った戦闘機が、無慈悲に海へと墜落している。
がしゃどくろはそんな団員達を置いて、リブカイハの方角に顔を向け直すと、進行を再開した。
「追尾は私に任せて、皆さんは回復に専念を。」
すぐに防音システムを発動し、多少視界にノイズが走る程度で止めたレッドフードが、すぐに両足をジェットエンジンに換装して飛び立った。
──がしゃどくろ上陸まで、残り1時間30分。
がしゃどくろの周囲には紫色の火の玉が再び展開されている。レッドフードは火の玉を壊しながら、がしゃどくろにも攻撃を与えるが、やはり手応えは感じられない。
その時、ガラスの浜の方角から多数のリブカイハ兵士が飛んできた。同時にかぐやから通信が入った。
「あっ!やっと繋がりました!」どなたか応答出来ますか!」
かぐやが心配している声色で叫ぶ。
「こちらレッドフード。他の団員達はがしゃどくろの咆哮によってダウン中。絶鬼団としては私のみ追尾し、現在交戦中です。そしてたった今、リブカイハの兵達と合流しました。」
レッドフードが火の玉からの突進を回避しながら応答する。
「咆哮?こちらに地響きが起きたのですが、あれは咆哮が原因だったのですね。」
「今私の視界にも度々ノイズが走りますので、恐らく奴の咆哮にはジャミングに似た力があったのかもしれません。それより、私はどうしたらよろしいですか?」
レッドフードがかぐやに指示を促すと、かぐやとは別の声が聴こえてきた。
「ここからは少し、私から指示を出そう。」
声の主はシンデレラであった。
「君達は今から、がしゃどくろを『退治する』という考えから、がしゃどくろを『遅らせる』という考えに変えてほしい。」
「承知致しました。」
レッドフードが即答すると、シンデレラが通信越しでクスッと笑った。
「普通は作戦変更の理由を訊く場面の筈なのに、君はすぐに承諾するんだな。」
「その方が作戦成功率が高いのですよね?ならば従うのみです。」
「いいね、君を気に入ったよ。それで、遅らせることは可能か?」
「尽力します。」
「ああ、期待している。──さぁ!作戦再開だ!」
シンデレラの合図で、リブカイハ兵とレッドフードはがしゃどくろに対して攻撃を開始した。
──がしゃどくろ上陸まで、残り1時間20分。
攻撃再開から数分、がしゃどくろの進行速度は未だ変わらず、ただ時間と体力を消耗するだけの状態となってしまっている。
(闇雲な攻撃を繰り返しても埒が明かないですね。やはり、強力な一撃ではないといけないようですね。)
レッドフードは周囲の紫火の玉を蹴散らしながらがしゃどくろの正面に回り込む。そして右腕を自身の身長より数倍ある巨大ハンマーに換装すると、アンドロイドがゆえの超馬力で巨大ハンマーを構え、ぐるぐると横回転をして遠心力をつける。
「[ミョルニル]!」
たっぷりと遠心力を乗せた強力な一撃が、がしゃどくろの
(やはり、あまり連発できる武器ではないですね。)
レッドフードは巨大ハンマーから右腕に戻し、前屈みとなって静止したがしゃどくろの動向を注視する。その間もリブカイハ兵による攻撃は続けられているが、やはり効果は見らせない。
──がしゃどくろ上陸まで、残り1時間25分。
5分が経過。がしゃどくろがようやく動きを見せた。ゆっくりと前屈みから元の体勢へと戻っていく。
(あの一撃でようやく5分の時間稼ぎ。連続であのハンマーを使用すると、私が先に壊れる。だがハンマーと同等、もしくはそれ以上の威力を与えなければがしゃどくろは止まらない。最善策は……自滅覚悟の一撃を与え続ける。)
レッドフードが自身の破損を覚悟した時、がしゃどくろが動きを見せる。右腕を引く形で大きく振り上げたのだ。
瞬時に危険を察したレッドフードは、周囲のリブカイハ兵に対して、
「全員逃げて下さい!」
と、声量拡大機能を使用しつつ警鐘を鳴らした。しかし、予測よりもがしゃどくろの動きが早かった。横薙ぎに振り下ろされた右腕はリブカイハ兵達を吹き飛ばしていく。レッドフードは紙一重で右腕は回避出来たが、台風並みの風圧によって遠くまで吹き飛ばされてしまった。
がしゃどくろは薙ぎ払いながら数人のリブカイハ兵を捕獲すると、そのまま自身の口へと運んでいく。そして大きく口を開くと、踊り食いの如く中に放り込み、噛み砕いた。そして歯の間からダラダラと大量の血を垂らす口を開けると、そこには一つの肉片もなかった。
その光景を遠目から見ていたレッドフードが違和感に気付く。
(食べた者の死体が見えない。肉も臓器もない骸骨に食われたのなら、顎のところから死体が落下する筈なのに。………食われた時点で吸収された……?)
レッドフードが思考回路を巡られせていると、開けた口の空間にエネルギーが集められる。
「これは…高エネルギー反応…!」
スキャンシステムが危険だと判断した為、レッドフードは阻止するべく急いでがしゃどくろに突撃する。しかし、エネルギーが溜まる方が早いようだ。
「間に合わな……!───!!」
レッドフードが半ば諦めかけた時、がしゃどくろの背後から猛スピードで迫る一隻の船を発見した。
船ががしゃどくろの真下に潜り込んだ時、中に乗っていた獣人化した兎の獣人─兎跳山火千が姿を現した。火千は両足に炎を纏うと、グッと力を込め、一気に真上に跳び上がった。
「その汚ねぇ口を塞ぎやがれ![
火千は炎を纏う脚でがしゃどくろの顎を思い切り蹴り上げ、口を無理矢理閉じさせた。そして火千が落下していく間に、発射しようとしていたエネルギー砲が口の中で暴発し、がしゃどくろの顔面が爆発する。
「へっ…ざまぁみやがれ!」
火千が意気揚々と船に着地する。しかし、すぐに船酔いによってダウンした。
「うっぷ…お、桜音木ぃ〜…もう一度俺に魔法をかけられないのか…?」
同じ船に乗船していた導和桜音木に対し、火千が助けを求める。
「さっき説明したでしょ。今の俺の力じゃ、二つ以上の文字の力を発動できないって。今は魔法でこの船を『
魔導書と万年筆を構える桜音木が、操縦室から出てきて謝る。
「だが、船酔いに負けずに放った一撃は、かなりの功績を挙げたようだ。」
同じく乗船していた桃川凛太郎が見上げる先には、先程のエネルギー暴発によってダメージを受けたがしゃどくろが、空に顔を向けつつ、口から煙を上げながら静止していた。
「今の間に距離をとるぞ。桜音木、頼む。」
凛太郎の指示により、桜音木は魔法の力で船を操作し、がしゃどくろから距離をとる。そして一定の距離をとったところで、レッドフードが合流した。
「皆さん、ご無事でしたか。」
レッドフードが船に着地する。
「ああ。だが、他の団員達はもう動けない。辛うじて動ける者は動けぬ者の治療に回っている。」
凛太郎が報告をする。
「たった一回の咆哮で一組織をほぼ壊滅。決して油断はしていませんでしたが、これが狂鬼級の力、というものですか。」
レッドフードが改めて狂鬼級の鬼の強さを実感する。
「作戦変更については通信で聴いていた。時間稼ぎに専念するぞ。」
凛太郎がスーッと鞘から刀を抜いた。
──がしゃどくろ上陸まで、残り30分。
時刻は11時40分。口内エネルギー砲暴発によって5分の時間稼ぎは成功したが、そこから目立った時間稼ぎは出来ず、1時間が経過した。残り30分の距離となると、ガラスの浜からも目視することが出来てしまう。がしゃどくろもスライド移動を止め、二足歩行を開始した為、より一層その巨大さが際立つ。
「あれががしゃどくろか。肉眼と見ると禍々しさが違うな。」
ガラスの浜のテント前で、シンデレラが前方に確認出来るがしゃどくろを見ながら感心する。
「感心している場合ではありません。どうにかならないのですか?」
隣にいるかぐやが焦る顔でシンデレラに尋ねる。
「焦っても時間は進まないぞ、かぐや。ここは彼等に頑張ってもらうしかない。アーフェア、現時刻は?」
シンデレラは少し後ろで待機するアーフェアに尋ねる。
「11時40分です♪」
可愛らしい声で返答するアーフェア。
「今のペースだとギリギリだな。もう少し…あともう少し頑張ってくれ。」
シンデレラが海上で奮闘する桜音木達に願うのであった。そうしていると、がしゃどくろが不意に標的をガラスの浜のがくや達に変え、攻撃を仕掛ける為に右腕を振り上げ始めた。
「やべぇ!あの野郎団長達を狙って……!うぷ……」
火千ががしゃどくろの動きを止めようとするが、船酔いがそれを妨げた。
「俺が止める!」
次に動いた凛太郎が船から飛び出し、水切りの石の如く海面を跳ねながら、がしゃどくろの左足に接近する。
「[
真横に構えた刃で、横一閃の強力な一撃を左膝の裏に喰らわせた。それにより、スパッとがしゃどくろの左足が斬り落とされた。
足が斬り落とされたことにより、バランスを崩したがしゃどくろは、抵抗することなく豪快に仰向けに倒れた。その際に大波が発生してしまい、桜音木達が乗っていた船は流されて座礁し、ガラスの浜に設置していたテントや兵器は押し流されてしまった。テント前にいたかぐや達は背後の浜より高くなっている地面にジャンプして飛び乗り、難を逃れた。
「いっってぇ…」
座礁した際に船から放り出された桜音木が、頭でぶつけた所を押さえながらガラスの浜で立ち上がる。
「大丈夫ですか?」
かぐやが桜音木に近寄って心配する。
「大丈夫です。ちょっと切ったみたいで血は流れていますが。」
桜音木が押さえていた手が血で染まっているのを確認する。
「団長、俺の心配はしてくれねぇんで?」
桜音木の近くで仰向けに倒れる火千が告げる。
「火千さんは丈夫なので気にしません。」
かぐやがクスッと笑いかける。
「ひっでぇな……まぁ実際無事だけど。」
火千は軽い身のこなしで立ち上がる。
「君は確か、
シンデレラが腕の調子を確認している凛太郎に話しかける。
「ああ。その認識で間違っていない。」
「つまり、さっきの一撃は魔法なしで放ったと。大したものだ。」
「日々の鍛錬は裏切らない、とでも言っておこう。だが、強力な攻撃には反動というものが付き物のようだ。」
「どうしたのだ?」
「先程から腕の筋肉の痙攣が止まらない。当分、刀を握れそうにない。」
「だが、しっかりと見返りはあった。時間稼ぎとして上々だ。良くなってくれた。」
シンデレラはポンと凛太郎の肩を叩く。
「さて、後は時間まで寝ていてほしいのが本音なんだが。」
シンデレラが海に倒れるがしゃどくろに小さな望みを抱くのであった。
シンデレラの望みも虚しく、切断されたがしゃどくろの左足は15分ほどで再生され、何事もなかったように立ち上がった。そしてより最悪なことに、ここにきてぎゃどくろが歩行速度を急激に上げてきたのであった。
「測定完了。今の速さだと5分後には上陸します。」
レッドフードが即座に再計算をし、がしゃどくろの上陸時間を告げる。
「脳がないくせに悪知恵を働かせる。厄介な骸骨だ。」
シンデレラが小さく舌打ちをする。
「俺が止める!」
獣人化した火千がいち早く動き出し、驚異的な跳躍力でがしゃどくろに突撃する。そして渾身の飛び蹴りを額に喰らわすが、ビクともしなかった。
「兎跳山火千!どいてください!」
そう叫ぶレッドフードの片腕は、巨大ハンマーに換装されていた。火千は慌ててがしゃどくろを踏み台にして、また驚異的な跳躍力で浜辺に蜻蛉返りする。
「[ミョルニル]!」
火千が離れたのを確認すると、レッドフードは二度目の巨大ハンマーによる一撃をがしゃどくろの肋骨に喰らわす。それによりがしゃどくろは怯み、進行が一時停止する。しかし反動がレッドフードに襲い、激しいノイズが視界に走る。
「私はここまでのようです。」
ハンマーから腕に換装したレッドフードは、その場から撤退する。
──現時刻11時57分。
怯みから回復したがしゃどくろが、再度進行を開始する。加えて最悪なことに、更に歩行速度が速まるのであった。
「やべぇ!もっと速くなったぞあいつ!」
火千が叫ぶ。
「もう少しなんだ!誰か足止めできないか!」
流石に焦りが顔に出始めたシンデレラが周囲の凛太郎達に尋ねるが、応えれる者はいな──いや、1人だけいた。それは片手に魔導書、もう片手に万年筆を携える青年─導和桜音木であった。
「俺がやってみます!」
桜音木は魔導書に『罠』の文字を書き込んだ。そして
「これが
シンデレラが桜音木を褒めるが、桜音木はそれに応える余裕はなかった。
「な、なんだこれ…!少しでも気を緩めたら弾かれそうな感覚は…!しょ、正直…!もう持ち堪えれない…!」
──現時刻11時58分。
「本当にあと少しなんだ!頑張ってくれ!」
シンデレラが激励する。
「頑張って下さい桜音木さん!」
かぐやもエールを送る。
「ファイトだ桜音木ー!」
「この瞬間が全てを変えます。導和桜音木。」
「頼んだぞ、桜音木。」
火千、レッドフード、凛太郎も応援をする。
仲間達からの応援を受け、桜音木は己が出せる最大限の力で、反発してくる力に耐えるのであった。
──現時刻11時59分。
──現時刻11時59分10秒。
──現時刻11時59分20秒。
──現時刻11時59分30秒。
──現時刻11時59分40秒。
──現時刻11時59分50秒。
──現時刻11時59分55秒。
ここで桜音木が力尽き、虎バサミが破壊されてしまった。動けるようになったがしゃどくろは更に速度を上げ、あの10歩を歩けば上陸してしまう距離まで迫ってきた。
──現時刻11時59分56秒。
──現時刻11時59分57秒。
──現時刻11時59分58秒。
──現時刻11時59分59秒。
──現時刻12時00分。
長針と短針が頂点で重なった時、遂に彼女が動いた。
「有難う諸君。よくここまで耐えてくれた。」
レイピアを抜くシンデレラ。その瞬間、髪と瞳がガラスの如く透き通った透明な色に変化した。そして瞬く間にがしゃどくろの顔の目の前で移動したと思うと、レイピアで額をひと突きした。
次の瞬間、全長約120メートルを超えるがしゃどくろが、放物線を描きながら大きく後ろに吹き飛んだ。だが、がしゃどくろが豪快に海に倒れたことにより、また大波が発生しまった。
しかし、当然のように空中に浮くシンデレラは、全く動じることなく大波を待ち受ける。そして目の前まで接近してきた時、レイピアによる高速な薙ぎ払いをする。すると次の瞬間、大波がスパッと上下に斬られたのであった。
「ここからは、私に任せろ。」
シンデレラはお団子ヘアをほどき、透き通る髪を風に靡かせた。
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