17話 作戦『骨砕き』
「リブカイハ騎士団団長シンデレラ・T・クロノス、彼女の序列階級は第1位です。」
「序列…1位!?」
かぐやと桜音木の間に沈黙が少し生まれた時、
「おっ、やっと帰ったかあいつ等。」
白色短髪に赤色の瞳をもち、黄緑色と薄茶色を基調としたパーカーとミディアムパンツを身に纏う獣人族の少年─
「火千さん、見かけないと思っていましたが隠れていましたね…」
かぐやがジト目で火千を見詰めつつ、小さくため息をついた。
「俺みたいな性格の奴がいると、高確率で評価が下がるだろ?だから俺はこの組織のことを思って、陰ながら見守っていたんだよ。」
火千が自嘲を織り交ぜつつ、逃げていた言い訳をする。かぐやはハァと再度ため息をついた後、桜音木に話しかける。
「桜音木さん、リブカイハについてもう少し詳細にご説明しますので場所を移しましょう。」
「よろしくお願いします。」
かぐやと桜音木は話を場を変える為に移動をする。火千はつまらないのが目に見えていると言って別の所へと去っていった。
かぐやと桜音木は場所を変え、先程までの会合していた部屋に戻ってきた。
「リブカイハは先程申した通り、絶対序列国家です。リブカイハ出身の者には例外なく順位が割り振られ、順位が高ければ高いほど、リブカイハ内で権力を得ることが出来ます。」
正座をするかぐやが改めて説明をする。
「その順位っていうのは、どうやって決めているんですか?」
ちゃぶ台を挟み、かぐやの前に座る桜音木が質問する。
「『
「成程。ではどうやったら序列というのは上げられるのですか?やっぱり良い行いをするとかですか?」
「確かにそれでも上げれるかもしれません。ですが、それよりも明確に上げる方法があります。それは『力』を示すという行為です。」
「力を示す?」
「はい。ですが力と一言で表しても、その種類は様々です。腕力、暴力、財力、権力、魅力など、とにかく己が持つ何かしらの力を遺憾無く発揮している者が、序列を上げることが出来るのです。」
「つまり、自分の長所をいち早く把握し、それを最大限に活かすことが出来れば、誰でも序列を上げられる、ということですか。」
「そういうことです。そしてシンデレラさんは圧倒的な『戦闘力』と『統率力』を示したことにより、序列階級1位の座を手にしたのです。」
「ですが、リブカイハは
「はい。仰る通り、リブカイハは『リプスン・
「じゃあシンデレラはリプスン王に命令することにより、実質国を動かすことが容易ってことですか。」
「そうですね、ですが、シンデレラさんはあくまで騎士団団長として生涯を貫く覚悟をされていますので、それ以外の事には口出しをされておらず、リプスン王にお任せされています。」
「成程。取り敢えず大まかなことは理解しました。有難うございます。」
「いえ、お役に立てて何よ──」
その時、絶鬼団本部内に警報音が鳴り響き始めた。そしてすぐにオペレーターからアナウンスが入る。
「かぐや団長!至急司令室にお願いします!」
アナウンスを聞いたかぐやと桜音木はすぐに立ち上がり、顔を見合わせ、無言で頷き合ってから急いで司令室へと向かった。
司令室に到着すると、オペレーター達が大慌てでキーボードや空中ディスプレイを操作し、少しでも多くの情報を得るために奮闘していた。
「団長に桜音木も来たか!あれ見ろ!」
先に到着していた火千が、かぐやと桜音木に巨大モニターを見るように促す。2人は司令室内に入ると、巨大モニターの映像に注目する。巨大モニターには大海原が広がっており、水平線の中央に禍々しい影が確認できる。
「なんですかあれは?」
かぐやが目を凝らすが、ハッキリと見えるわけはなかった。
「現在、
女性オペレーターがタイピングをする手を止めずに返答する。
「場所は分かりますか?」
かぐやが違う質問をする。
「出現場所はリブカイハから遥か南下した海のようです!」
男性オペレーターが返答する。
「了解しました。では、オペレーターの皆様は取り急ぎ情報収集をお願いします。あと、今回の退治は第零期メンバーを中心に動きますが、他の部隊にもすぐに援護ができるよう伝えておいて下さい。」
かぐやの指示に、オペレーター全員が同じタミングで「はい!」と返事をした。
「俺らはどうするよ団長?」
火千がかぐやに尋ねる。
「そうですね…まだ敵の情報がないので、いつでも出撃出来る準備をお願いします。」
「オーケー!ちょっと体動かしてくるぜ!」
火千は司令室を飛び出し、ウォーミングアップをしに行った。
「探鳥、接近完了!モニターに表示します!」
その時、1人の女性オペレーターが告げ、巨大モニターに禍々しい影の正体が映し出された。
そこに映ったのは、『巨大な骸骨』であった。全長は約120メートル。周囲には巨大な紫色の火の玉が無数に飛んでおり、これが遠目から見た時に禍々しい影を作り出していたようだ。そして頭頂部には鬼ということを証明する鬼の角が2本、しっかりと生えいた。
余りにも規模が大きい敵の出現に、オペレーター達がザワザワと狼狽える。かぐやは冷静に巨大骸骨を観察し、とある事を思い出す。
「巨大な骸骨の鬼…古い書物で読んだことがあります。『
「「『がしゃどくろ』。」」
かぐやと同じタイミングで、桜音木も巨大骸骨の名前を言い当てた。
「──!!桜音木さん、あの骸骨を知っていたのですか?もしかして現実世界にもあのような怪物がいるのです?」
「いや、流石にそれはないです…。──がしゃどくろ、現実世界で『妖怪』に分類される架空生物です。架空ですので、当然本物を見るのは初めてです。ですが、様々な妖怪図鑑などに記載されているがしゃどくろに、外見や特徴が似ているのでそうじゃないかなと思っただけです。どうやら当たっていたようですが。」
「そうだったのですね。では、
「いえ、俺が読んだものにはそういったことは書いていなかったですね。」
「そうですか…。
「…それでも、やるしかないんですよね?」
桜音木がかぐやを見詰めると、腹を括った顔をするかぐやが、
「無論です。」
と、大きく頷いた。そして全団員に対して通信を繋げる。
「全団員に告げます。現在リブカイハより南下した海に巨大骸骨の鬼─がしゃどくろの出現を確認しました。十中八九階級は
かぐやからの命令が下ると、通信越しに団員達から一斉に返事が返ってくる。
「それでは!がしゃどくろ退治作戦──『
かぐやの気合いが入った一言をきっかけに、絶鬼団が一致団結で動き始めた。
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