第437話 文武両道ならばこれでしょう? (9)

「そうなの?」


「へぇ~」


「ふぅ~ん」と。


 幸が俺に尋ねてきて、篠田と加奈が呟けば。


「あっ、いいな、絵美ちゃんと由美ちゃんは」と沙紀の奴が羨望の眼差しを二人へと向け呟けば。


「うん、うちも思う」


「ああ、うちも、うちもそう思う」と。


 志乃と沙紀に続いて、蘭と翔子も絵美のノスタルジックに慕り、自身の頬を桜色に染め、嬉しそうにしている様子を凝視──。由美の奴も見詰め、二人へと羨望な眼差しを向け呟き、終われば。


「和也~」と、自分の欲望に正直で、物事をハッキリと言える翔子の奴が俺へと声大にして叫び、呼びかけてきた。


「和也~」、


「和也ぁあああ~!」と更に俺を呼ぶから。我が学園の男子生徒全員……。


 そう、只今考える人になり「う~ん、う~ん」と呻っていた山中の奴も考える人になる行為をやめ、みなが一斉に翔子の奴へと注目すれば。


「和也~、体育祭で~、幸の為に走ってよ~。うち~、和也のカッコ好いところを見たいからぁ~」と。


 翔子の奴がとうとう可笑しなことを俺に嘆願してきた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る