第434話 文武両道ならばこれでしょう? (6)

「和也~、足早いから~。体育祭で選手リレーに出るの~?」と。


 遠く~! 更に遠くから、志乃の奴が声を大にして叫びながら、俺へと尋ねてきた。


「えっ!」


 だから俺の口から驚嘆が漏れる。


 でも俺と志乃との距離感は学校の塀──! ネットを挟んで上に、更に距離が離れているから、俺が驚嘆を漏らした声等、志乃の奴には聞こえるはずはないけれど。


 あいつ! 志乃奴は! 絵美とは違い。馬鹿程目が良いではないが? 志乃の奴は、俺が少しばかり驚いた顔をしたのがわかったようだから。


「えっ! 違うの、和也?」と、自身の首を可愛く傾げ。


「和也、本気で走ったら。中坊の頃は、陸上部の奴等よりも足が速かったのだから。選手リレーに出ればいいじゃ、んか~!」と。


 あの阿保! 志乃の奴が! 全校生徒がいる中で、俺に向けて声を大にして叫び、『走れ!』、『走って!』と告げてくるものだから。


「えっ! そうなの、志乃さん?」


 今まで、遠目でこちらの様子を窺っていた沙紀の奴が、志乃の話しを聞き、興味津々に尋ね始める。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る