第433話 文武両道ならばこれでしょう? (5)

「えぇ、えええっ!」、


「嘘~?」、


「本当に~?」


 やだぁ~ではないが? 山中の奴は絶叫を上げる。


「じゃ、澤田……。俺どうしたら良い?」と。


 この場にいる男子達から熱い視線ではなく、『大変に汚い男だ!』と白い目──。冷たい目で見られている山中が、大変に困った顔……。


 そう、今にも泣き出しそうな顔で幸へと尋ねる。


「……ん? 知らない……と、言うか? 山中、うちに聞かないでくれる? うちは山中、あんたと何の関係もないのだから」と。


 山中に、俺との勝負は何にしたら良いか? と尋ねられた幸なのだが。自分は、山中とは何の関係もなく、赤の他人なのだから尋ねられても困ると冷たくあしらえば。


「そんなぁ~」と、山中の口から絶望染みた声が漏れる。


「お、おい。幸……」


 幸の奴に全く相手にされずに落ち込んでいる山中の暗い背中を見ていると、俺自身も流石に何だか、あいつのことが可愛そうになり。俺は幸へと声をかけ、慰めてやれよ、ではなく。何か妙案を出してやれよ! と思い声をかければ。


「何、和也?」


 幸の奴が大変に重たく。冷たい声音で、俺に言葉を返してきたよ。それも冷たい目で俺を睨み、『何か文句があるのか?』と言った顔をするから。


「えっ、いや」と、俺は歯切れの悪い口調で言葉を返せば。




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