「えっ！　あの綺麗で大人しく見える聖女の娘（こ）も山本と一緒で、山田の事を平気で殴るらしいぞ？」

「マジで？」

「うん、マジらしい？」

「ほんまか？」

「ほんまらしいぞ？」と。

　この後も男子生徒達は騒めき、喧騒しながら俯き、照れる絵美へと注目をしつつ様子を窺う。

　そんな恥じらいある、お嬢さま仕様へと変化している絵美へと。

「絵美、あんた、行かんの？」と志乃が首を傾げるから。

「絵美ちゃん、どうする？」と志乃に続き沙紀の奴までもが、バカ正直に首を傾げ始めるけれど。

「いかんでえぇよ。絵美ちゃん。山ちゃんが鼻息荒く行ったけぇ」と。

　翔子の奴が、肩で風を切り歩く加奈の後姿を凝視しながら、ケラケラ笑いつつ絵美へと告げれば。

「おっ！　珍しく。走り終えた幸も、和也の所に向かったみたいじゃけぇ。絵美ちゃんは行かんでえぇよ」と。

　蘭も絵美に、俺の許へと行かなくてもいいと告げ。

「山と幸と篠田達に任せよう」と絵美へと微笑むから。

「えっ！　あっ！　うん、わかった」と、絵美は頷くのだが。

「じゃ、絵美が行かんのならば。うちが行ってもえぇ」と、志乃が自身を指さすのだが。

「あんたは、行かんでえぇから」と、絵美の奴に釘を刺されるのだった。

　◇◇◇

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