第353話 来年の春には県外へと(6)

 そう、この言葉が、志乃から罵声として吐かれる訳で。


 その後は、みなさんの御察しの通りで。


「和也! それってほんま?」と。


 俺の真横で、ゴロゴロ、ニャン、ニャン! と甘えていたはずの翔子が。


 俺に噛みつくような勢いで迫ってくるから。


「いや、あの」と。


 俺は、自身の胸の辺りまで腕を上げ、暴れ牝馬と化そうとしている翔子に対してドウドウ! と、していると。


「和也最低……」


「和君酷い……」


 加奈と由美の二人が、大変に冷たい口調で俺は酷い奴だと告げてくるから。


「いや、あの、あの時は」と。


 俺は誤魔化し、始めるのだが。


「和也、誤魔化すんだ」


「それって最低……」


 蘭と幸の余り怒らない、温暖なコンビも冷たいトーンで俺に告げてくるから。


 俺が「ごめんなさい」と。


「ほんとうに。ごめんね」と。


 みんなを見渡しつつ、最後に頭を下げ、俯きながら謝罪をすれば。


「和也、私達に謝ってもだめだよ。志乃さんに謝らない」と。


 沙紀が、にへらと笑いつつ、俺に告げてくるから。


「そ、そうだな? あっ、ははは」と。


 俺は笑い誤魔化しながら、志乃方へと、自身の身体の向きを変え。


「し、志乃、ごめんな……。あの時は、本当にすまない」


 俺は志乃に頭を下げ謝罪をした。


 でもさ、相談女の気持ちが何となくだが、わかると告げた俺だから。


 言い訳、謝罪をしようが確信犯なのは間違えないので。


 この後は、ラブコメのお約束ごと、テンプレ展開だから。


 俺は直ぐに志乃から八つ当たりで、自身の腕を噛みつかれ。


「うぎゃ、あああっ!」、


「ぎゃぁ、あああっ!」と。


 マックの二階で絶叫をあげた。


 他校の生徒や一般の人達がいる。


 見守る中で。


 その後もマッチポンプのマッチを発動した。


 牧田以外のメンバー達からさんざん罵られることになるのだが。


 当のマッチポンプのマッチ男の牧田はと言うと?


 あいつも罪を犯した経験があるのだろ。


 牧田は、俺を庇うことをしないで、素知らぬ振りを続けていたよ。


 みんなの気が済むまでの、俺への御仕置きが終わるまでね。



 ◇◇◇




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