第351話 来年の春には県外へと(5)

 牧田は俺達の様子をチラッ! と見ると。


「……でもさ、それをすると。自分以外の男に甘えにいくんだよな。それがさ、いくら自分が好きでもない相手……。男友達とか、ツレの彼氏って奴に電話をかけたり、L〇NEでメールを送り。相談女って奴。結構いるじゃ、ん」と。


 牧田が俺に尋ねるから。


「いるな?」と答えると。


 更に沙紀と志乃の身体が小さくなり、俯き始めるから。


 牧田はこう言うところは、大変に性格いいから、ニヤニヤと意味深に微笑みつつ、沙紀と志乃を見るから。


 あいつの横に座っている翔子から、頭をパチンと叩かれ。


「痛ぇ~」と声を漏らすと。


 牧田はその後──。


「ゴホン!」と空咳をすれば。


「それってさ、相談に乗っている男もさ、最初はその気がなかったにしても。会話を続けているうちに。こいつとできる! やれるな! と思い。悟るんだよな……。だから俺が会って相談に乗ろうか? それともうちにくるか? と、下心丸出しで会うか? 呼ぶか? をするんだよな。女の方もやられると分っているのか? 分ってないのか? 知らないけれど。その男と会って嘆きや愚痴を聞いてもらう内に口説かれて、あっさりと身体を許しちゃうんだよね。異性に対してガードや羞恥心なんかないからさ。元カレだった俺が、全部破壊をしている訳だから。異性に対して裸になる事や交わる事だって平気になっているから。好きでも無い男でも。雰囲気に流され、平然とやっちまう。その男は只の知り合いや、ツレの彼氏なのにさ。あっさりと身体を許すような女だから。そいつらも絶対に付き合わないし。やるだけやったらポイだから。その後はビッチやセフレの出来上がりだよ」と。


 牧田の奴は、何度もこんな経験をしているのだろう。


 少し悲しそうな顔と声音で俺達へと、と言うか?


 俺かな?


 牧田が告げてきているのは。


 だから俺は、「だな」とだけ言葉を返せば。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る