第344話 元ヤンの御姉様は学生らしい(5)

「はい、そうです」、


『パクパク』と加奈がげっ歯類のように可愛く食べながら告げると。


「うちもしませんよ。先輩」と翔子も告げれば。


「由美もしませんよ。ヤンキーのお姉さん」と。


 志乃へと次から次へと報告すれば。


「みんなじゃ、ないんだね?」


 志乃がフムフムと呟くから。


「うん、そう」と。


 俺は志乃へと頷けば。


「加奈は『和也痛いから辞めて。ムードが壊れる』と俺に不満を言ってきたから辞めて。翔子は『和也、痛いじゃんかぁ!』と殴り返してきたから。俺も殴り返し、プロレスになるから辞めた。でッ、由美も『和君は痛いじゃんかぁ! もう辞めてやね!』と言って噛みついてきたから。俺痛いので辞めたし。絵美の奴も翔子と一緒で殴り返してきたから。幼馴染同士の喧嘩になるから、もう辞めた」と。


 俺が相変わらずケラケラと腹を抱え笑う牧田のことは無視して、みんなに少しばかり落胆しながら、残念、無念と告げると。


「え! 和也は叩かないと嫌な訳?」


 翔子が俺の様子が気になり、慌てて尋ねてきた。


「……ん? 俺?」


「そう、和也は、お尻ペンペンしたいのかな? と思って……」


 翔子が少しばかり気落ちした様子、声音で尋ねてきた。


「いや、翔子……。俺は別に無理強いはしないよ。嫌なことは、嫌だと言ってくれた方がいい訳だから……」、


「それで翔子が断るからと言って俺は別に、お前に対して変だ。気に入らない。お前のことなど、どうでもいいからと思わないよ。それが翔子や加奈、由美に絵美と。みんなそれが個性だからね」と。


 俺は翔子に……。


 まあ、他人が聞けば牧田ではないけれど。


 自身のお腹を抱えながら笑うようなことでも。


 あいつに微笑みかけながら説明をした。




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