第319話 えっ! うそ? (2)

「おっ! 行く~!」と。


 牧田がいつものノリ良く、高らかな声音で言葉を吐けば。


「うん、いくいく」


「そうしよう、皆~」


「うん」


「はぁ~い」と。


 翔子と幸も、牧田に続くように、御機嫌麗しくマックへといく! いこう! と。


 自身も頷き、みんなに告げるから。


 加奈が無表情、無感情で頷き。


 由美が大きな声で返事をする。


 いつもの俺達の帰宅の様子へと戻るから。


「蘭と沙紀もいくぞ」と。


 自身の口から大きな声を出すだけ、出して。


 呆然! 唖然! としている志乃の様子を窺っていた二人へと、俺は声をかけ歩き始める。


「えっ!」


「あっ!」


「うん」と蘭が頷き、歩き始めると。


「ちょっと待ってよ。和也……」


 沙紀の奴も、慌てて俺の許へと駆け寄り歩き始めるから。


「ちょっと待ってよ。和也! うちの事を置いていかないでよね」と。


 俺の今の恋愛関係を牧田から聞き、動揺をしていたはずの、志乃の奴までマックへとついてくると言いだしたから。


「志乃?」


「何、和也?」


「お前、先ほど牧田から聞いただろう? この場にいる娘達は、各自各々が納得済みの、俺の彼女だって聞いたよな? それなのについてくるのか?」


 俺はにへらと笑いつつ志乃へと尋ねると。


「それに俺達が今からいくのは、洒落たコーヒーショップではなく、マックだぞ。それでもついてくるのか、志乃?」


 俺は今度は少し困った顔で、志乃へと尋ねる。


「うん、うちは別に構わないよ。和也……。特にうちは学生時代の初々しい頃に、彼氏とデートでマックなんか行ったことないし。和也も連れて行ってくれん、かったから。マックへと行くの、楽しみ」と。


 志乃の奴は満身の笑み。


 そう俺が、自身の頬をポッ! と、桜色に染めながら、見惚れるような満身の笑みを浮かべるから。


 今度は俺が志乃に見惚れ、呆然とすれば。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る