第311話 会いたくない奴! (1)
「ちょっと、離せって! 俺帰るから!」
「いいじゃ、ん、和也! 少しくらい。うちと話しをしてくれても。ねぇ、良いでしょう。和也。少しぐらいならば?」と。
俺の二の腕を強引に引きながら話しをしたいと嘆願をしてくる女性に俺は。
「俺は、お前と話すことなど。何もない……。それに俺はツレ達と帰らないといぇないから。志乃! 俺の腕をいい加減に離せ! 離しやがれぇ!」と。
俺がこの女……。
志乃の腕を怪訝な表情で振り払うのだが。
志乃の奴も中々頑張ると言うか?
俺自身も流石に女相手に酷く振り払うことは出来ないって……。
あれ? 俺、沙紀の時は、平和公園でアイツを強引に振り払い、泣かしたよな。
そう言えば? と。
俺は思いつつ。
こいつ、志乃の奴は確か?
病院に入院していたはずだよな? と、思っていると。
「山田……」って、牧田の奴が志乃のことを憐れんだ顔で見ながら、俺に声をかけるから。
俺が志乃の方を向けば。
あいつがまた昔のように泣きそうな顔をし始めるから。
「ああ、わかった。志乃……。少しだけだぞ、話し……」と告げ。
「だから手を離せ、志乃」と。
俺が気だるげに言えば。
「うん」と、あいつは嬉しそうに頷けば。
「和也~、逢いたかったの~。ずぅっと探していたんだよ。和也の事~。家に行っても、和也の妹達や両親に居留守を使われるし~。私困っていたの~」
志乃の奴が残念無念みたいな顔をしながら、不貞腐れつつ、俺へと遠回しに嫌味を言ってくるのだけれど。
「お前なぁ~。俺に留守を使われるようなことを何度もするからだろう!」と。
俺が憤怒しつつ、罵声を吐けば。
「もう、そんなに怒らないでよ。和也……」
志乃の奴が甘え声音で、猫のようにじゃれながら告げてくるから。
「志乃。何で、俺がこの辺りにいるって知っているのだ?」と尋ねる。
だって志乃の奴は、俺のことを探していたと言った。
だから俺は尋ねてみた。
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