第293話 久し振りにあいつに叩かれたから終焉(8)

「えっ! さっきの牧田って人の件? ……でも、あれは、新宮寺さんは関係ないでしょう?」


 絵美が首を傾げ沙紀に尋ねると。


「うん、あの件は関係ないけれど。やっぱり一番初めの件で、和也をかなり怒らしているから。異性の話題に加わらないようにしているの、絵美さん」と。


 沙紀が絵美へと説明。


「あっ、ははは」と笑い誤魔化し始めると。


「ああ、和也。自分の事は棚上げするけれど。彼女の件に関しては本当に凄く煩いし、焼きもち焼き屋だもんねぇ」と。


 絵美の奴がケラケラ笑いながら、つまらないことを言い始める。


 でも俺は素知らぬ振りを決め込む。


 だって沙紀と絵美以外のメンバー達が一斉に俺のことをジト目で見るから。


 俺は流石にやばい! と思い。


 自身の身の危険を感じるから。


 安芸の宮島から見える海の向こう側──廿日市市の様子を窺う。


「う~ん、流石だ! 宮島から見る瀬戸内海は綺麗だな!」と。


 俺は独り言漏らしつつ誤魔化した。


「沙紀さん、和也は。従兄の件ならば怒らないはよ。昔から」


「えっ! そうなの?」


「うん。私も小学生くらいまでは、慎吾君達が和也の家に泊まりにきたら良く遊んでしたしね」


「へぇ、そうなんだ」


「うん」


 沙紀の感心した声に笑みが頷くと。


「沙紀?」


「ん? 何、蘭?」


「うち等、慎吾君達とはほとんど話しもした事もないよね? 挨拶ぐらい、しか。ねぇ、沙紀?」


「うん」


 今度は蘭の問いかけに、沙紀が頷く。


 それを聴き俺が。


「へぇ~、お前等。慎吾ちゃんと会えば挨拶とかしょぉったんじゃ?」と問えば。


「うん」と沙紀が頷き。


「だってうちと沙紀は、中学生までは和也の従姉、和江ちゃんと仲良かったもんね。ねぇ、沙紀?」


 蘭の奴が突拍子もないことを俺に告げるから。


 沙紀の奴が頷く前に。


 俺の口から。


「えぇ、えええっ! マジー! うそだろー!? 俺、そんな話しを聞いたことがないし。初耳だぞ!」


 と、絶叫交じりの声が、この安芸の宮島で響き渡る。


 でッ、この後も、俺の従兄弟達の話題をしつつ。


 俺達は仲良く、安芸の宮島を後にして、フェリーで帰宅。


 俺は陶晴賢公にならなくてよかったと思いながら帰宅の途に就く。



 ◇◇◇


(第二章終わり)

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