第290話 久し振りにあいつに叩かれたから終焉(5)

 だから俺は、『加奈、どうした? どうしたのだ? お前は俺に何が言いたい? 言いたいのだ?』と思いながら見詰めると言うことはないよね!


 もうこいつ、加奈が俺に言いたいことはわかっている。


 そう加奈の奴は、俺に対して無言で、自身の告げたことが了承できないのか? と。


 俺のことを無言で脅しているのだ。


 だから俺は、自身の顔色を変え、『ゴクリ!』と生唾を飲み込み、喉を鳴らす。


「和也、どうしたの?」


 俺が生唾を飲み込み、硬直した状態でいると。


 俺の背に隠れていた沙紀が、制服を引っ張りながら尋ねてくるから。


「い、いや、何でもないけぇ。あっ、ははは」と。


 俺は笑いながら沙紀へと告げると。


「もう、えぇでぇ、牧田……。帰ってえぇでぇ」と告げ。


「もうお前等、つまらんことを、すんなよ」と。


 俺は呆れた声で告げ。


 加奈と絵美へと視線を変え。


「これでえぇんだろぅが、二人とも?」


 俺が告げ、尋ねると。


「うん」


「良いよ、和也」


 加奈は相変わらず無表情で頷き。


 絵美は嬉しそうに微笑みながら、俺に言葉を返してくるから。


「じゃなぁ、牧田」と。


 俺はあいつらに別れの手を振る。


 すると牧田達は立ち上がると。


 俺達に別れの言葉も告げず、逃げるようにしながら、目の前から立ち去る。


「あら、行っちゃったね」と蘭が呟けば。


「うん」


「そうじゃねぇ」と。


 翔子と幸も頷く。


 だから取り敢えず牧田達との騒動は片付き、一件落着……。


 俺自身、あいつ等に袋叩きに逢わなくてよかっと。


 自身の胸を撫で下ろせば。


「蘭ちゃんと沙紀さんはM中だったんだね?」


 絵美が二人へと尋ねる。


「うん、そうだよ」


「絵美さん、誰か知り合いがいるの?」


 沙紀と蘭が絵美へと言葉を返すと。


「うん、多分、知り合いはいるとは思うけれど。和也は従兄弟がいたよね、確か?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る