第286話 久し振りにあいつに叩かれたから終焉(1)

「痛いの、わりゃぁ、何をしよぅるぅならぁ?」


 俺は自身の頬を押さえつつ、呻り吠える。


 でも俺の頬を叩いた! 打った奴は!


 俺の頬を幾度も叩き、怒声を吐かれたことのある奴だから。


 俺がガル、ルルルと呻り、吠えようが。


 全く、恐れ慄くこともしないで、逆に呻り、吠えてくる。


「何しょぅるぅんって? 和也! あんたの方こそ! 何をしょぅるぅん! いい加減にしんさいよぉ! あんたわぁ~!」とね。


 それも俺の顔の近くまで、自身の顔を近づけつつ、久し振りに怒声を吐く……って。


 数週間前にアストラムラインの駅でも怒声を吐かれ、叩かれたことを忘れていたよと。


 俺は思いつつ、絵美の奴に。


「こいつらが儂に喧嘩を売ってきたけぇ、いけん、のぅじゃろぅに」と不満を漏らせば。


「……そうかも、知れんけれど。和也! ここまで酷い事をする必要はないじゃろぅに」と。


 まあ、絵美の奴は、当たり前のことを告げてきたよ。


 でも絵美の俺への諫めはこれで終焉する訳ではなく。


「和也~、あんたぁ~。この人等に、こんな酷いことをしてどうするねぇ? 血が出とる人もおるじゃんねぇ。一体どうするねぇ? あんたぁ~? この人等に謝りんさいやぁ、和也~!」


 絵美が俺に牧田達に詫びろと告げてくる。


 でも俺自身は、別に悪いことをしたとは思っていない。


 喧嘩を売ってきたのはこいつらだし、俺がいくら卑怯者だと罵られようとも。


 上手く対処ができたからいいようなものだが。


 本来自身の顔を腫らし、鼻血を流しながら。


 砂の上で御行儀よく正座をする羽目になっていたのは、俺だった訳だから。


 俺は悪くはないと思うから。


「絵美! 何で儂がこいつらに頭を下げんにゃぁいけんのやぁ! こいつは、この間も沙紀に変なことをしよぅとしたんじゃぁけぇのぅ。なのに何で儂が謝らんにゃぁいけんのじゃ?」




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