第275話 俺って陶晴賢公? (5)

「はぁっ! 何、あんたらいい加減な事を言ぅちょるんねぇ。和也一人に三人って……。始めから、和也とちゃんとしちょぉる話しなんか、する気なんてないじゃ、ん!」


「ほんまよ! 蘭の言ぅ、通りじゃけぇ。あんたら三人がかりで和也に、何をする気なんねぇ?」


 他校の奴のカッコ良い? 台詞を聴き。


 気の強い蘭と翔子が呻れば。


「はぁ、お前等は女なんじゃけぇ、黙っちょきぃやぁ!」と。


 他校の奴が蘭と翔子に凄めば。


「お~い。山本と幸~。そいつらは俺のツレじゃけぇ。先生とか人を呼ぶなよなぁ~」と。


 先生か、フェリー乗り場の人達を呼びにいこうと歩いている加奈と幸を足止めする声──。


 そう、俺達が何処かで聞き覚えのある声音……。


 それも一週間前後まで、よく俺達の教室内で聞いていた声音で。


 加奈と幸に待った! をかける台詞が聞こえてきた。


「えっ! 牧田君?」


「もしかして、あの人達って牧田の知り合いなの?」


 牧田に呼び止められた加奈と幸の口から驚嘆が漏れると。


「えっ!」


「嘘?」


「牧田の知り合いだったの」と。


 蘭と翔子、沙紀の順で。


 俺に殴られた箇所の腫れが引かずに。


 まだ眼帯やマスクを着衣している牧田の奴の、ニヤケ顔を拝みながら。


 三人が驚嘆を漏らすのを俺は聞き。


(はぁ~、なるほどなぁ。こいつらは、牧田のツレか)と思う。



 ◇◇◇



「えっ、何を言っているの」


「人を呼びに行くに決まっているじゃ、ん」


 牧田に対して不満を漏らす二人に対して。


「山本さんと幸ー! 牧田のツレみたいじゃけぇ。マジで人を呼んできてくれん!」


「牧田! あんたぁ~、やる事、汚ねぇ、ねぇ。和也とはタイマンじゃぁ、なかったんねぇ? なのに、何で知り合いを呼んできちょぉるんねぇ!」


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