第254話 終焉(4)

 そしてホッとすれば。


「はい、和也。牧田のスマホ」


 沙紀の奴が俺に声をかけつつ、牧田のスマートフォンを手渡してきたから。


「ああ」と、俺は言葉を漏らしつつ。


 沙紀から牧田のスマートフォンを受け取れば。


「ほら、牧田」と告げながら。


 あいつのスマートフォンを手渡すと。


「牧田、あんた本当にクズだね」


 沙紀の奴が呻りつつ、牧田に吠えるから。


 俺は(沙紀、どうしたんだ?)と思いつつ。


 牧田から沙紀へと視線を変えれば。


「和也が牧田を殴り怪我をさせたことを。あんたが両親や学校先生。警察へと訴えたら。私も両親に牧田に強姦されそうになったと告白して。学校へ報告。警察へと被害届を出す時に。牧田のスマホに入っていた娘達のうちの。私の知っている娘達のことも全部警察に報告するし。私のスマホに入っている牧田。あんたが私を強姦をしょうとした時の台詞も全部入っているから。これも提示するから」と。


 沙紀の奴は最後に自身のポケットの中からスマートフォン出して牧田に見せる。


「ああ、分っているよ、新宮寺……。もう、お前達には関わらないから大丈夫だ」と。


 牧田は沙紀へと告げると。


 俺から受け取った、自身のスマートフォンを制服のズボンへと入れつつ立ち上がれば。


 牧田はフラフラとした足取りで教室を後にした。


 だから教室の中は俺と沙紀の二人だけになる。


「ああ、沙紀、俺。机や椅子を片づけるから。お前は椅子に座って休んでいろよ」


 俺はこの場の何とも言い難い重たい空気……。


 そう、俺が牧田の奴を殴り、蹴りして作った空気ではなく。


 俺が最後の最後まで。


 アイツ、沙紀のことを信用せずに。


 牧田とした! やった! と言い続けて作った。


 この悲しくて、切ない空気に。


 俺自身が耐え切れなくなり。


 誤魔化すために沙紀へと告げた。


「……じゃ和也が、机と椅子を片づけるのならば。私は牧田が落とした鼻血を拭くね」


 沙紀が俺へ告げてきた。


 だから「うん」と頷けば。


 俺達二人は沈黙しつつ、教室の片づけを始める。


「うぅ、うううっ」


 俺と沙紀の二人が、静寂した教室の中で片づけを続けていると。


 沙紀の方から嗚咽を漏らす声が聞こえてくる。


 だから俺も沙紀のように俯きつつ。


「信用してやれなくてごめん」と謝罪をした。



 ◇◇◇



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