第219話 高校三年生になれば、元カノのモテ期は未だ続くようです? (13)

「和也、そうなの?」と。


 蘭が首を傾げるから。


「いや、俺も、そんな話し、知らねぇ」と呟き。


「俺、蘭に一年の時に言ったじゃないか。前の彼女に捨てられたって……」と。


 また呟けば。


「だよね?」


「うん」と。


 俺は蘭に頷くと、踵を返し。


「沙紀、何だぁっ! その話しは……と、言うか? 誰から聞いた。その話し? と、言うか? いつから知っていたんだ。その話しを沙紀?」と。


 俺は沙紀の奴を睨みつつ、呻るように問いかけながら。


 アイツの許へと向かうと。


「和也、どうしたの、いきなり怒りだして」と。


 蘭が俺の前へと立ち塞がり。


 沙紀の許へといき訊ねようとしている俺の妨げをしようと試みるから。


「蘭、悪い。ちょっと退いてくれるか」と。


 俺はにへらと笑いつつ、蘭へと告げると。


「沙紀に対して和也、酷いことをしない?」と訊ねてきた。


 だから俺は蘭に「しない。しないって……。只その話しを誰から聞いたのか。沙紀から聞きたいだけだから」と告げると。


「和也、本当よね?」と。


 蘭が再度訊ねてきたから。


「ああ……」と。


 俺は、今度は蘭に面倒くさそうに言葉を返せば。


「和也~。私から~。その話しを聴いてぇ~。どする訳? もしかして、前の彼女の許へと戻る気なの?」


 今まで少しばかり御機嫌斜めな俺に対して、殴られると勘違いをして怯えていた沙紀だけれど。


 急にアイツは何を思ったのかは。


 俺はわからないけれど。


 沙紀の奴は急に御機嫌斜めと言うか?


 俺に対して急に切れたようになり。


 俺へと荒々しく訊ねてきた。


 だから俺は沙紀へと。


「別に沙紀、お前から話しを聴いたからって、アイツ、絵美の許へと戻るようなことはしないし」と告げていたら。


「じゃ、和也、別に。私に訊ねなくてもいいじゃぁん。前の彼女、絵美ちゃんだっけぇ? あの娘のことを……」と。


 沙紀の奴は俺ににへらと笑うどころじゃないか?


 自身の眼を細め、薄ら笑い。


 完全に嫉妬心と憎悪を含んだ目で見詰めながら告げてくるから。


「ああ、そうなだなぁ。わかったよ。もう聞かねえよ。じゃなぁ、沙紀」と。


 俺は完全に頭にきたから。


 これで五月の五日の鯉のぼり。


 子供の日から何度目になるかわからない別れ話を。


 また沙紀へと告げ。


 自身の頭に昇った血が収まらないから。


 その後、俺は子供染みた行為……。


 拗ね、不貞腐れ、教室を後にするのだった。



 ◇◇◇


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