第175話 高校三年生になれば、廊下に立たされることもあるらしい? (9)

 だから俺は沙紀へと気だるげに。


「お前なぁ~」と呆れ声で呟けば。


「和也」と。


 蘭がシクシクと泣く、沙紀の奴をハグしながらヨシヨシ──。


 俺のことを呻るように見詰めてくるから。


「はい、はい。俺が悪ぅございましたよ」と。


 苦笑を浮かべつつ呟けば。


「和也は本当に子供だよね。ヨシヨシ」と呟きながら。


 加奈が俺の頭を小さな子供でもあやすかのように撫ででくれた。


 だから俺は、そんなにも拗ね、不貞腐れた顔をしているのか? と。


 俺は言わんばかりな顔で蘭へと無言で見詰め問うと。


「うん、うん」と。


 蘭の奴は大変に困った顔をしながら頷くから。


 俺はそうか、そんなにも未だ、コイツ、沙紀の奴を。


 あの大学生に盗まれたことに対して嫉妬心と、憎悪を募らせ、未練がましくしているのだと思うと。


 自分自身が嫌になって笑いがでる。


 だから俺は泣いている沙紀や蘭の方を見詰めつつ。


 不謹慎にもケラケラと笑いながら自戒、反省を始めだすのだが。


 蘭と沙紀、加奈の三人には、俺が自戒しているようには見えなく。


 沙紀の奴がエンエンと泣いている様子を。


 俺が嘲笑っているように見えるみたいで。


「和也」と。


「もう、和也……。そして沙紀も、もう泣かないの」と。


 加奈と蘭の呆れ返った声が聞こえると。


 その後は沙紀の奴に泣きながら高一の夏……。


 俺からあんなこと~♪


 こんなこと~♬


 あったでしょう~♪


 そう、他人には恥ずかしくて言えることができないことをされた。


 だから自分は泣いたのだと。


 俺自身がもう覚えていないことを延々と。


 授業が終わるまでアイツ、沙紀の奴は。


 俺へと不満を言い続けたよ。


 だから授業が終われば。


 廊下に立たされている俺達四人は。


 今度は隣のクラスの先生に。


「お前達四人、授業が終わる最後まで煩かったぞ。いい加減にしろ」と叱られる。


「先生、ごめんなさい」


「すいませんでした」


「本当にごめんなさい」


「うわぁ~、うわぁ~。先生、私が全部悪いんです」


 だから蘭、俺、加奈、沙紀の順に先生に謝罪をしたのだった。


 ◇◇◇




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