第171話 高校三年生になれば、廊下に立たされることもあるらしい? (5)

「和也はなんで私ばかりを嫌がるのよ。これだと全然公平じゃないよ。だから私不満ばかり募るから泣いたんじゃない」と。


 沙紀が俺の身体を相変わらず自身の方へと。


 それも強引に引き寄せながら不満を漏らしてくる。


「あのなぁ、神宮寺?」と。


 俺は呆れ顔で沙紀へと言葉を返せば。


「なに、和也?」と。


 アイツはごく当たり前に言葉を返してきたよ。


 だから俺も今まで……。


 五月の五日~。


 柱の傷は一昨年の~♪


 五月五日の背比べ~♬


 ではなくてね。


 俺達二人がお付き合いをしたのも。


 まあ、一昨年だけれど。


 子供の日から何度もアイツ、沙紀の奴に荒々しく俺が告げ、諫めてきたように。


 沙紀が俺へと甘えてきたら、あの男……。


 沙紀の元彼のことを思い出し。


 こいつあの男に、こんなにも安易に異性に甘えられるよう調教されたのか、と。


 俺は直ぐに思い。


 憎悪を募らせるから辞めて欲しい訳だから。


「いや、あのな、神宮寺? 俺が何で。お前が俺に甘え、戯れると。俺がしかめっ面をして嫌がるかは、自分で察してくれよ。お願いだから……。頼むから、俺の口から理由や訳をきかないでくれ、お願いだ」と嘆願をすれば。


「いや」と直ぐに返事を返してきた。


 そして俺の腕を更に自身の方へと強引に引き寄せるから。


「あのな~、神宮寺? 俺また泣くぞ? それでもいいのか?」


 俺は沙紀へと、泣き虫和君になるけれど。


 それでもお前はいいのか? と訊ねる。


「別にいいよ。和也、泣いても。今度は蘭ではなくて私の胸を貸してあげるからおいで~」と。


 沙紀の奴は俺のことをおちょくっているのか? 


 俺に対してこの大馬鹿者は、揶揄するよう告げてくるから。


 俺の眉間に皺が入り。


 額の血管がプゥ~と膨らんで。


 プチン!


 パチン! と。


 良い音を奏でながら弾けたから。


「沙紀、お前なぁ~」と。


 俺が呻るように、この大馬鹿者を名指しすれば。


「沙紀が二年も付き合っていたのに。和也にやらしてあげないからだよ……。やらしてさえいればこんなことにはならなっただろうし。和也の甘え方をみる限りでは……」と。


 蘭の奴が大変に恐ろしいこと。


 高校生らしくないことをケラケラと笑いながら告げると。


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