第169話 高校三年生になれば、廊下に立たされることもあるらしい? (3)

「ひく、ひく、しゅん、じゅる、じゅる」、


「えっ、でも、蘭と私は幼稚園の年少組の時に。園内で悪戯をして、幼稚園の先生に廊下に立たされたことがあるよ」と。


 沙紀の奴が、泣き癖がついたまま。


 アイツは、自身の鼻水をズルズルと可愛く啜りながら自身の華奢指で。


 自分の目尻に溜まり、落ちる涙を拭きつつ、蘭へと告げれば。


「沙紀、そうだけぇ?」と。


 蘭は自身の両眼、瞼を大きく開け、驚いた声音で沙紀へと言葉を返した。


「うん、そうだよ。蘭……。覚えていない?」


 自身の説明を聞き、驚愕している蘭へと沙紀の奴が再度訊ね返すと。


「うぅん、そんな昔の事など。うちは全然覚えていないよ」と。


 蘭は沙紀の問いかけに対して苦笑いを浮かべ言葉を返せば。


「沙紀、あんた。そんな昔のことを良く覚えているね……。うちはそんな昔の事など全然覚えていないし。記憶の端にも残っていないよ」


「そうなんだ?」


「うん」と。


 沙紀の奴が頷けば。


「……どうやら新宮寺さんの涙も止まったようね……。良かった。良かった」と。


 蘭との昔話しに花を咲かせ、涙が止まり。


 笑顔が戻った沙紀の様子を窺いながら加奈が、首肯しながら微笑み、終えると。


 加奈は俺の方へと視線を変え。


「和也は大変に悪い子だったみたいだから。小さい頃から結構先生に立たされたことがあるんじゃないの?」


 加奈は『クス』と笑いながら。


 母親や姉が、自身の小さな子供や小さな弟でも見るような眼差し。


 そう、この俺様のことを小さな男の子でも見るような眼差しで、揶揄するように訊ねてきた。


「ん? 俺?」


 だから俺は、少し面白くない顔をしながら加奈に言葉を返す。


「そう。あなた。この暴れん坊さん」と。


 加奈は更にクスクスと笑いながら。


 俺達は悪いこと。


 授業の進行を遅らす。


 妨げることをして、廊下に立たされているにも関わらず。


 加奈の奴は平然と俺の真横へと並ぶと。


 そのまま俺の肩に自身の頭を乗せ、甘えてきた。


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