第117話 高校三年生になれば、こんな噂も立つよね? (15)

 そう、この後は皆の予想通りだ!


 竹内君の絶叫も直ぐに収まり。


「山田、貴様……。一年坊の癖に、汚ねぇ真似しやがって、絶対に許さねぇからな……」と。


 俺の朦朧とした意識の中での耳へと、『自分だって大変に汚い事をしたじゃないか?』と告げたくなる。竹内君の憤怒が聞こえてきた。


 だから俺はその後、竹内君に一方的に殴られたよ。俺の意識が遠のき、堕ちてしまうぐらい。


〈ボコボコ〉と。


 俺自身の意識が飛び──痛みが和らぎ、わからなくなるぐらい。一方的に竹内君に殴れ、蹴られ、半殺しだよ。俺は多分彼にサンドバッグにされて気絶、堕ちたのだと思う?


 俺自身もあの時は意識がないから覚えていないけれど。


 でもさ、俺の薄れる意識の中で何故かあいつ? 俺を裏切った筈のあいつの声が、何故か意識が薄れる中、耳へと聞こえてきた。


 それもあいつは泣きながら俺の身を……。


 そう、完全に切れて、誰も手がつける事が不可能になっている竹内君を己の身を挺しながら俺を守り。彼を正気へと導く……。


 そうあの馬鹿は、『わぁん、わぁん』と泣きながら。もう今更俺の事を竹内君から泣き、庇ってもらっても。


 俺自身があいつの事を許すつもりもないし、寄りを戻す気はないとも。先程あいつと別れる時にはっきりと告げた。


 もう俺ではなく、お前は竹内君の事が好きなのだからあの人の家にいき。その身を委ねたのだろうから。


 俺ではなく竹内君と付き合えと告げた。


 いくらあいつが泣きながら首を振ろうが駄目だ。もう三度目だから俺は許す気はない。


 だから沙紀の奴に言ってやった事と同じ言葉……。


『俺の事を安易に裏切り、直ぐに他の男に己の身を任すようなビッチ、セフレ女と。俺は付き合う気も。寄りも戻す気はないから。ごめんな……』と告げた筈なのに。


 あの馬鹿は……。


 本当に馬鹿だったよ。


 う~ん、でも俺は?


 あの時にあいつの声を聴いて何故か『ホッ!』として、安堵しながら意識がなくなった記憶もある。




(お願い)


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