第114話 高校三年生になれば、こんな噂も立つよね? (12)

 喧嘩、タイマンをする。張った者達ならばわかる。理解ができると思うけれど。鼻血が垂れるのって痛い──。己の顔に激痛が走るよりも、自身の鼻での呼吸ができなくなるのと、血が垂れ流れるのが妙に気になって仕方がなくなるから。


 鼻血が垂れる度に自身でズルズルと啜り上げてみたり。腕や手を使用して事ある毎に鼻血を拭いてしまう程、俺自身も気になるから。


 そうなれば猶更竹内君の思惑通り……。彼が自身の口角の端を吊り上げ──ニヤリと薄ら笑いを浮かべたのも俺は気が付かない程、鼻血が出て垂れるのが気になっているから。


 それを見計らった竹内君は一気に俺へと詰め寄りながら。


「わりゃあああっ! クソガキがぁあああっ!」


 と罵声を吐きながら殴りかかってくる。


 だから俺は絶体絶命だよ~。


 まあ、普通は、この場面、状況下になればさ~。物語の主人公ヒーロー達は、瞬時に敵の攻撃を避け──。


『うりゃ、あああっ!』、

『わりゃ、あああっ!』と罵声を吐き、返しつつ絶体絶命のピンチを切り抜けるのだろうけれど。


 現実、リアルの世界は夢のない。ファンタジーなどない世界だから……。


 俺が(あっ!)と脳裏で思えば。もう遅いのだよ。


 竹内君の攻撃を中学校一年のガキの俺が安易に……。


 そう、三年生の彼の大きな握り拳──鉄拳を避けきる事などできる筈はないから。


〈ドン!〉だ。


〈ガン!〉だよ。


 俺は竹内君からのパンチをワン! ツゥ! と。逆に食らう失態を犯してしまう。


 ……だけじゃないのだよ。竹内君の攻撃はね。


 そう、俺と竹内君の背丈、体躯は、元々大きさが違う訳だから。彼のような大きな体躯の者は、小さい者を捕獲して──ヘッドロックをしてしまえば。もう勝利は確実だからね。


 竹内君は、彼に殴られた為に身体がよろけ、状態を崩していく俺の小さな身体を慌てて捕まえ、捕獲だよ。


 でっ、その後は、俺の華奢首へと自身の太い二の腕を回し、ヘッドロックを入れてくる。


 だから俺の身体は完全に身動きがとれなくなる。


 となれば?


 俺が今後どうなるかと申せばね?


 まあ、だいたい皆さんの思っている通りでね。


 俺は彼、竹内君からの一方的な殴り──。


 そう、竹内君は俺の顔の真ん中を狙って一方的に、彼の握り拳を連続で入れ──攻撃を繰り返してくる。

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