第113話 高校三年生になれば、こんな噂も立つよね? (11)
俺が彼に〈ガン!〉と一発入れたら。竹内君は〈ガン! ガン!〉と二発は入れてくる、どころか?
俺の脇や膝を狙って回し蹴りもコンスタントに入れてくるから。
(や、やべぇ)と、俺は脳裏で思いつつ。避けようと試みるのだが。
そうなると?
俺自身は、自身の足元が気になり始めるから。
俺の視線は自然と竹内君の目を、瞳を追いかけながら敵の動きを察知する能力と、敵の攻撃を瞬時に避ける瞬発力が送れ、始める。
だから自身の下──己の足元ばかりを見てはヒョイ! と彼の足蹴りをかわしつつ。
竹内君の顔へと向けてワン! ツゥ! と、自身の握り拳を入れ込んでは後方へと退避を繰り返していた俺自身も正面──。竹内君の顔、目を見る事が疎かになっているから。
彼の蹴りを避け──ワン! ツゥ! と殴りかかった瞬間に。
〈ドン!〉
〈ガン!〉
俺の顔へと竹内君の大きな握り拳が。俺のような余り威力のない。ワン! ツゥ! なストレートの握り拳ではなく。大振りぎみではあるのだが。彼の大きな身体で、腰の入ったフックがね。俺の眉間にめがけて入ってくるから。
俺の俯き加減の、正面を向いていた顔は──竹内君の握り拳が入った逆の方向へと向き──。
そのまま、自身の身体もよろけてしまうから。もうこんな状態へと少しでも俺がなれば彼の思惑通りになってしまう。
だって竹内君はよろけた俺の身体についている。悲痛な表情をしている俺の顔へともう一発──。
それも下から掬うように、アッパー気味で、俺の顔の中心──鼻を狙って打ち込んできたから。
俺の顔の中心──鼻から殴られた鈍い音が聞こえると。
それと同時に、俺の鼻の穴から生温かい液体……。鼻水とは違う赤い色をした液体がタラリと垂れ始める。
と、なれば?
(お願い)
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