第111話 高校三年生になれば、こんな噂も立つよね? (9)

 すると彼? 一中の三年生の男子生徒だけれど。


 渋々と「うん、分かったよ。ここで待っていて、今から竹内呼んでくるから」と告げてくれて、彼は一中の校門から踵を返し──校舎へと向かって走りだした。


 だから俺はその後少しの間独りで一中の校門前で、陽が落ちかけている空を見上げ──。自身の利き足では大地に転がる小石をポーン! 軽く何個も蹴りながら呆然と佇んだよ。


 自身の脳内では、(さてさて、どうやって竹内あのひとと喧嘩をするかな……ああでもない? こうでもない? ああ殴り。こう蹴ってみるか? いやそれだとあっさりと負けてしまうな……。じゃ、こうしてみるか? こうしてもみよう……。汚いがあれをするしかないかな?)と、苦笑いを浮かべながらね。



 ◇◇◇



「山田ぁっ! わりゃぁあああっ! ガキの分際で儂を舐めているのかぁあああっ!?」と。


 まあ、良く見て聞く、昭和、平成初期を彩ったヤンキーシネマやドラマの不良学生の喧嘩や格闘シーンのような罵声が辺りに響けば。


〈ドン!〉と。


 鈍い打撃音と衝撃音が聞こえてくる。


 すると竹内君の鉄拳を受けた俺の、中学一年生の小さな身体よろよろと後ろへと後退……。


 まあ、当たり前の事だけれど。リアルは異世界ファンタジーやラブコメの物語の主人公達のように甘い出来事など起きない。


 そう、先ず奇跡など起きる筈はないから。年齢差の大きさ、体力、力の差が、俺と竹内君との間にこれだけあると流石に辛い。


 でも俺、辛いからと言ってこの場から逃げると言う事は、もうここまでくるとできないからね。


 できるだけ長く立っている時間を稼ぐ……。


 そう、俺と竹内君の喧嘩を傍から、をしながら面白がって見ている一中のヤンキー達……。男女も含めて多々いる事はいるけれど。


 これはあくまでも俺と竹内君との二人だけのタイマンだから他の者達は手を出したりはしない。


 先程も俺が説明をした通りで、一中のヤンキーの中には俺と仲の良い先輩、タメの奴もいるし。ヤンキー姉ちゃん達は、あいつのツレや後輩達だから。


 俺をヤンキーの兄ちゃん達が一斉に袋叩きにしようとすればヤンキー姉ちゃん達が煩いからそう言う事もないので。俺は竹内君と心置きなくタイマンが張れると言う訳だから。


 このままフラフラと後退……。


 その後竹内君に一方的に殴られ、終わると言う訳にはいかない。




(お願い)


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