第108話 高校三年生になれば、こんな噂も立つよね? (6)

 あいつが、あの時の沙紀……。


 そう、五月五日の背比べの日の平和公園……。原爆資料館前の広場──花の塔の前でね。


「和也、待って、お願い。お願いだから~。待ってよ~」と泣き叫びながら。俺の背に抱きついてきても。


 俺は荒々しくあいつを振り払ったよ。沙紀の時のようにね。


 俺は浮気をするような女は大嫌いだから。


 それに、俺にはちゃんと夢があるし、やりたい事がある。


 でも浮気癖──病気の奴を彼女、婚約者、妻にしたら。そいつの事が気になり仕事が手に着かなくなる違いない。


 だからあいつも、沙紀も……。それと絵美の奴も俺の事を捨てたのが、新しい彼氏ができたのが原因ならば。いくら家のお袋が庇い。由美の奴が俺が絵美を捨てたと言ってこようが。


 俺は絵美の奴とも寄りを戻す事はない。


 だって俺の本当の夢の事を知っているのは、元々彼女だった絵美の奴だけだから……と、俺が愚痴を漏らし終えたところで。俺の愚痴ばかり言っても切りがないから。あいつ、あの馬鹿の話しの続きへと戻す。


 でっ、あの馬鹿を振り切って別れた俺はね、あいつの馬鹿なツレが遠回しに告げてくれた。


『和也、竹内が探しているから逃げた方が良いよ。(笑)』を素直に受ける事にしないでね。


 そう、先程のあいつの態度を見れば俺も。彼女だったあいつが嘘を言っているのか、竹内君が大嘘をついているのかは、俺でも安易に悟る事ができたから。


 俺は荒ぶれ、高まっている。そのままの気の勢いで、竹内君から逃げる事もしないで一中の方角へと身体と足を向け──歩き始めたよ。


 俺の彼女だったあいつを自分の物にしたいからと邪な策を練り。あいつのツレに自分達が屯して、悪さをしている部屋へと連れてきてもらい。


 あいつが朦朧として、記憶が曖昧な頃を見計らって、強引に自分の女にした竹内君からは、勝利ができないとわかっていてもけじめだけはとらないと俺も気が済まないから一中へと向かった。


 どうせ竹内君達の一中の不良、ヤンキーメンバー達は、午後の放課後でも教室か、部室辺りで屯して雑談か、悪さをしていると俺は思うから向かったよ。


 家の学校の不良、ヤンキーの先輩やタメのツレ達も放課後は教室、部室……。他の部活の邪魔をしている事が多かったから。


 多分一中の奴らもそうだと思うから。俺は竹内君に臆する事なく向かったよ。


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