第91話 (第3ルート完)高校三年生になればこんなお別れもあるとは思う? (21)

 特に今晩は近所に住む幼馴染の由美からバーベキューのお誘いを受けている俺だから。由美のおじさんやおばさんの手伝いもしないといけないので忙しい。


 だからこの場──平和記念館の前で俺は沙紀と長々とくだらないお話しをする必要性はないから。


「はぁ、何で俺が新宮寺のくだらない話し……。お前と元彼との惚気話しを聞かないといけないんだよ」と。


 俺は沙紀に対して悪態をつく。


「えっ! いや、あの、私……。和也に惚気話しを話しているつもりはないのだけれど……」


 沙紀の奴は俺の言葉を聞き、動揺した声音で言葉を返してきた。自分は俺に惚気話しをしているつもりはないとね。


 でもさ、沙紀の事を未だに恨み、憎悪を募らせている俺としては、アイツが元彼の事を名指しや、あの馬鹿男、ゲス男、ナンバでどうしようもないクソ男と呼ばずに、『あのひと』、『あのひとがね』と甘えるような言い方……。


 そう、男女の仲が深い間柄になった時に呼び合う。


『あなた』、『あのひと』、『おまえ』と、深い恋人関係若しくは夫婦の間がらの関係で愛しい者をお互いが呼び合う言い方に、沙紀の物言いが俺の耳に聞こえてきてならないのだ。


 だから俺の目の先でまた俯き、泣きそうな顔しながら目線を逸らし佇むコイツ──。


 俺は沙紀の事がうざくて仕方がない。今はコイツの顔も長々と見たくない程憎悪を募らせているから。


 いくら沙紀の奴が悲しそうな顔で演技していようがお構いなしだ。


「新宮寺、俺に言いたい事があるならば早く言えよ。俺もこれから家に帰って、由美の奴の家にいって、あいつの両親……。おじさんやおばさん達の手伝い……。今晩由美の奴に家の庭でバーベキューするからこいと誘われているから。俺も手伝いをしないといけないから慌てて帰宅の途につかないといけないんだよ。だから新宮寺、俺に言いたい事があるならば早く言え、聞いてやるから」


 俺は沙紀に正直に……と言うか?


 当てつけで言ってやったのだ。


 もう俺にはアイツ、沙紀の奴は必要ない。


 もう既に俺には仲の良い娘がいるのだろうとアイツ、沙紀の奴も薄々感づいてはいるだろうけど。


 この際俺は、沙紀に対してざまぁみろと悪しき思いを湧かせながら告げてやったのだ。


 沙紀の奴に対して俺はもう未練などサラサラないのだと言わんばかりに。


 夕方から由美との約束があるからと急かすように告げる。



(お願い)


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