第86話 (第3ルート完)高校三年生になればこんなお別れもあるとは思う? (17)

「…………」


 何故か沙紀の奴は、自身顔色を急変させ、笑みも薄れ沈黙を始め下を向き始めだす。


 だから俺は沙紀の様子を凝視して、


(……ん? どうしたんだ、沙紀の奴は?)


 自身の脳裏で首を傾げる。


「和也?」


 そんな俺に対して沙紀の奴が呼ぶから。


「……ん? 何だ、新宮寺?」


 俺は小首を傾げ言葉を返すと沙紀は俯いていた顔を上げ──悲痛な表情で。


「か、和也、あ、あのね……。和也の私への呼び方なんだけれど。今のような他人行儀と言うか? 苗字呼びではなくてね、以前のようにではなくてと名指しで呼んでくれていいから……と、言うか? 呼んでくれないかな、和也……。お願いだから」と。


 沙紀の奴は、最初は俺の顔を凝視しながら嘆願……。でも言葉の最後の方はアイツ、俺の目を真面に見る事ができなくなり視線を外し、悲痛な表情でしどろもどろ、申し訳なさそうに嘆願をしてくる。


 でもコイツ、沙紀の奴……。


 俺を騙して迄強引に別れたこの女……。


 俺に対して自分に未練タラタラ執着してストーカーにならないようにとケラケラと笑い。


 もしもなれば自身の両親に告げて警察に言ってやるからね、と嘲笑いしながら俺に暴言を吐いたこのビッチ女が。自身の事をまた名指しで呼んでくれと嘆願をしてきたと言う事は、沙紀が何考え想い。その気持ちを俺に告げたいと思っている事ぐらいは十分に承知している。


 でも俺は自身の目の前で悲しそうな顔をして俯く、他所様の物になった元カノの事を哀れに思う気持ちは今のところ一切無いに等しいから。


「いいや、いいや、そう言う訳にはいかないよ。俺と新宮寺はただのクラスメイトなのだから名指しで呼ぶわけにはいかない」


 俺は沙紀へとにへらと笑い首を振り。


「それに俺がいつまでも新宮寺の事を名指しで呼んでいたら。俺が新宮寺に対して未練があるように傍から思われるのも嫌だしね。もう俺自身も仲のいい娘達もいるから。その娘達にも悪いと思うから御免……」と。


 俺はまたにへらと笑いながら沙紀へと告げる。


「そ、それでもね、和也……。あ、あのね、また私のことを名前で呼んで欲しいの、お願い。お願いだから……」




(お願い)


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