第65話 高校三年生になればこんな目撃もあるとは思う? (2)
「ふぅ~ん、残念ね。私高校生活最後の思い出に山田君とこの辺りにあるラブホテルに入り休憩……。私の初めてを差し上げても良いのにと思っていたのに」と、山本は俺へと平然告げてきた。
「まあ、その代わり山田君にはちゃんと責任の方はとってもらうから。私は今日から山田さんになっても良いかな?」と、山本は笑い事、冗談にならいないことを俺へとまた告げてくるから。
「えっ!」と俺が驚嘆を漏らすと。
「もう、山本先輩は冗談を言わないでください」と、由美が自身の頬を膨らませながら不満を漏らせば。
「いいえ、本気を隅田さん。私山田君が他の娘にNTRをされる前に、既成事実を作るつもりだから」と、不平不満を漏らす由美に対して山本は照れることもなく平然と告げるから。
「ちょっと山本待ってくれよ」と、俺が困惑しながら声をかければ。
「あっ! あの人」と、山本が遠目で誰かを見て捉えながら呟くから。俺は彼女が自身の瞳で捉えている者は何、誰のかを確認するために踵を返すのだった。
◇◇◇
「お前ふざけているのかぁっ?」
「はぁ、何の事だ? お前は何の事を言っているんだ?」
「はぁ~、何のことじゃないだろう。何のことじゃ。俺が言っているのは新宮寺だ! 沙紀のことだ!」
俺は自身の気を高ぶらせ、憤怒しながらこのチャラ男、女癖の悪いだらしない男の胸元を片手で掴み持ち上げるようにしながら怒声を吐く、放てば。
「……ん? 新宮寺って……。あっ! お前沙紀の元彼だった奴か?」と。
新宮寺の彼氏──。彼女であるはずのアイツを放置して、他の大学生、ぽい姉ちゃんと和気藹々、楽しそうに笑いながらホテルデートを満喫、堪能をして出てきた新宮寺の彼氏が怪訝な表情──。自身の首の襟を掴み握っている俺の左の腕を離そうと試みながら訊ねてきた。
だから俺は、「ああ、そうだよ。新宮寺の元男だよ。それがどうした! 悪いか!」と。
俺は新宮寺の彼氏、浮気男へと更に罵声を吐けば。
「新宮寺の顔の傷。アイツの親父さんにあんな大きな顔の傷がつくほど新宮寺が殴られたのは、お前と自身の部屋で変なことをしていて親に見つかったのが原因だろうに……。なのに、何故お前は、アイツと一緒にいるのではなくて他の女と……。それもラブホテルから出てきているんだよ」と。
俺にはもう既に無関係になり、どうでもよいこと……。只のクラスメイトへと変わった新宮寺沙紀のことで何故か、自分自身でも数時間後、後日ゆるりと思案をしてみれば、何故あんな可笑しなことを突発的に……。
そう、自身の顔を鬼、修羅の如く変貌させ、気を荒々しく高ぶらせながら。
「わりゃぁあああっ! お前ぇっ! 何を考えとるんじゃぁっ! しばいちゃろぅかぁあああっ!」と。
新宮寺の彼氏へと広島弁を丸出しに、しながら唸ると。直ぐに猪突猛進──。
相手が大学生の成人男性だろうとお構いなしさ、直ぐにヘラヘラとアイツ、新宮寺以外の女と嬉しそうに腕を組み、戯れ歩く大学生の兄ちゃんの首元、襟を掴んで左手で持ち上げ。右手の拳はグゥと力強く握り込みいつでもこのナンパ男。女癖の悪い男の顔面を殴れる状態でうなりながら身構え──。
そう、俺はばかだから、もう既に自分には関係のなくなっている真宮寺と、彼氏との恋仲のトラブルへと首を突っ込んでしまった。
だからアイツの彼氏は直ぐに、「あいつ、沙紀の元彼だったお前に、俺達二人の事をとやかく言われる筋合いはない」と、俺はハッキリ言われ。
「おい、ガキ。早く俺の首から手を離せ」とも、新宮寺の彼氏から息苦しい声色で言われた。
でも、新宮寺の彼氏が言う通りで俺はガキだから。
「はぁ、誰に向かってお坊ちゃんの大学生風情が、俺のことを『ガキ!』だと言っているんだ。お前本当にしばく、ぞ!」と。
俺が荒々しく新宮寺に彼氏へと咆哮をすれば。
「お前なぁ、いい加減にしないと本当に警察を呼ぶぞ!」と、気だるげに告げてくるから。
「ああっ、警察に言いたいのならば好きに言えばいいだろう。それよりもお前このビルの裏にこい。今から俺がしばいちゃるけぇ」と。
俺は他人の目……。
そう、俺の吐く、放つ、咆哮をする怒声、罵声を聞き足を止めた。立ち止まった野次馬達の視線も気にせずに、新宮寺の彼氏の胸元の襟を強引に引っ張りながらチンピラ、不良少年……。昔取った杵柄であるヤンキーへと逆戻りをしながら呻り。新宮寺の彼氏を人気のない場所へと連れていこうと試み始めると。
「ちょっと貴方、何を考えているの、私の薫を何処に連れていくつもりなの?」と。
新宮寺の彼氏の浮気相手の女が、アイツの彼氏のことを『私の薫』と、自身の顔色を変えながら告げてくるから。
俺は苦笑を浮かべながら「何が私の薫だ」と、ガキの癖にお姉さんへと嘲笑うように言葉を漏らしたところで。俺達三人の話し、会話、言い争いを遮断、止めるように。
〈バチン!〉だ。
パチンと俺の頬から叩かれた衝撃音がこの騒めき、喧騒を遮断──。この場を沈黙化、静寂な空間へと変化をさせる。
でっ、少しばかり間が開く、と言うか?
彼女、山本の華奢な掌が完全に振り下ろされて彼女の括れた腰へと固定、落ち着くまでの時の流れの中で静寂が続いたのだ。
だって山本は、自身の容姿が仁王立ち状態へと完全に移り変われば、俺のことを睨みつけながら。
「山田君いい加減にしないと。今がどういった時期が分かっているの?」と問いかけてくる。
だから俺は唖然、呆然としながら。
「えっ、いや」
「いや、じゃないでしょ」
「……でも」
「でもじゃないよ。山田君は。大学入試がある大事な時期なのにいい加減にしないといけないよ。分かった?」
(お願い)
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