第61話 高校三年生になればこんな朝もあるとは思う? (5)

 まあ、みたのだけれど。


〈パチン!〉


 そう、『パチン!』と、安易に物事が済む、収まると思っていた私の頬から大きな音、叩かれた音が部屋の中に響き渡ってしまう。


 家のママが自身の目の前に立ち塞がり、彼氏のことを庇おうとする私の頬を強く平手で打ってきた。叩いてきた。


「沙紀ー! いい加減にしなさい! 貴女自分が何をしでかしたのか、していたのか分かっているの?」とも、私はママに荒々しく告げられた。罵声も吐かれた。


 だから私は自身の頬を押さえながらママに「ごめんなさい」と泣きながら呟き、あっさりと抵抗をする行為をやめて降伏をした。


 するとママは私から薫さんの背へと視線を変え。


「貴方、家のひとと話しもせずに逃げたらどうなるか分かっているわよね? 家は直ぐに警察へと電話をした上に弁護士も立てるから覚悟をしていなさいよ……。特に貴方が手を出し、悪戯行為を働こうとした家の娘は未だ親の庇護下にある未成年者の少女だと言う事をね……。だから貴方はもう既に家の娘に対して青少年育成条例に対して違反をし、と言う罪を犯している事をね。だから貴方がこの場から逃げれば私は直ぐに警察へと電話もしますから。それでも良ければ今直ぐ逃げなさい。さぁ、今直ぐに」と。


 家のママが気迫のこもった荒々しい口調で薫さんへと告げれば彼の足は部屋の扉の前で止まり。踵を返せば。


「本当に動揺をして申し訳御座いませんでした」と、家のママに深々と頭を下げて、彼はこの部屋から逃げる行為を辞め。この後私達二人はリビングで薫さんの会社の上役人達と、家のパパが帰宅するのを待った。


 でっ、パパが家に帰宅をすれば娘の私はこの通りの様でね。淫らで、ふしだらな娘のことを昨晩のパパは許す訳もなく。私はパパにあっさりと殴られ。私達二人は別れるようにと告げられて彼は、薫さんはあっさりと家の両親の荒々しい要求に了承したのだった。


 だから私と薫さんは昨晩をもって別れ、家庭教室、教師の方も辞めるような出来事が昨晩あったから。私の顔にこんな大きな青あざと腫れがあると言うことなの。


 まあ、私が昨晩自身の身に起きた出来事を走馬灯でも見詰めるかのように呆然としていると。


「沙紀ー! あんたぁっ! もしかしてお父さんに殴られたのって、元彼と変な事をしている最中をお母さんに見られたからじゃない、のぉ?」と。


 サチが興奮気味で声を大にしながら私に問いかけてきたから。


『えっ! いや、あの……』と、私がサチへと言葉を返そうとしたのだが。私の口からはそんな言葉など出ないで。


「あっ、あああっ、ど、どうしよう……。か、和也に今のサチの言葉を聞かれちゃった……」としか言葉が出ないで、私は自身の掌で顔を覆い隠し俯いてしまったのだ。


 だってサチの問いかけを聞いた和也の顔は直ぐに変化──。自身の顔色を青ざめ、悔しい。悲しい。切ない……。全部が交じり合った何とも言い難いか顔、様子になったのが私の目と瞳に映ったから。


 私自身も動揺しながら脳裏で、(和也、ごめんなさい。ごめんなさい)と、今更彼に謝罪をしても何も変わらない。起こらないとわかっていても、その日の私の脳裏をグルグルと駆け巡る言葉と台詞は和也への謝罪と、自分が彼へと犯した罪への自戒、自己嫌悪……。



 だから一日中嗚咽を漏らすことしかできない私だった。



 ◇◇◇



 第17話 高校三年生になればこんなフラワーフェスティバルもあるとは思う? (1)



「(はぁ~、沙紀の奴はやっぱりあの男と寝た。男女の深い関係になっていたんだぁ)」と。


 俺は溜息交じりで天を、青空を見上げ、仰ぎながら思い。そして歩く。歩行を続ける。


「(まあ、俺にはもう関係のないこと、どうでもいいこと。沙紀のばかが自分で思案、考慮、覚悟を決めてしたことだから。俺がとやかく言うこと、思うことではないか。あいつが今後どのような人生、男女の恋愛関係を送ろうが。それが坂を下るように落ちぶれて、奈落の底に落ちたようなドロドロとした男女関係に……。そう、アイツのような女になっても俺は知らないし。そんな女、浮気癖のあるような女とは俺は二度と付き合いたくはない。好きになった女に二度も三度も騙されるような経験はアイツで最後にしたいからね)」と。


 俺は春の大型連休前に教室で沙紀と友人達がしている小声での会話を聞く耳立てた訳でもなく。


 偶々俺の耳に、沙紀が自身の父親に顔を殴られたと言った話し、会話が。偶然にも俺の耳へと入ってきたから。


(沙紀の奴、何をして親父さんを怒らせたんだ?)と思いながらも。


(アイツの顔の腫れってどれぐらい酷いのだろう? 本当に大丈夫なのか?)と。


 沙紀のことを俺は何だかんだと言いながらも少しばかり心配しながら視線を変えた──。俺はアイツと目が合う。合えば俺の耳に新たな言葉が、それも今度は大きな声色で、『沙紀、あんた、男としているところをお母さん見られて殴られたんじゃないよね?』と言った内容だったと思う台詞が耳に入ってきた。


 でっ、俺はその言葉、台詞を聞き動揺、困惑……。俺は沙紀に対して、大変に情けない顔をしたと思う?


 まあ、以前からさ、沙紀とアイツの彼氏は、深い関係なのだろうな? とぐらいは、俺自身も思っていた。


 アイツ、沙紀が俺には見せなかった。しなかった。大人の女性のような笑みや甘え声色、仕草をアイツの彼氏の車の助手席で嬉しそうにしながら甘えていたのを俺は見て確認をしているから。




(お願い)


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