第58話 高校三年生になればこんな朝もあるとは思う? (2)

 やはり彼は確信犯だと直ぐにわかる。悟ることが私にはできた。


 だって彼は私に対してやはり何かしら隠し事でもあるかのように直ぐに目を逸らし。瞳を泳がせながら素知らぬ振りを決め込もうとする様子、素振りが窺えるから。


 私はこのまま彼のことを無い、無い尽くしや知らぬ、知らぬ。わからないで終わらす気は毛頭ない。


「平和公園近くの川沿いにあるラブホテルから薫さんは女性が仲良く腕を組みできたわよね。私学校帰りに偶然この目で見たんだからね。間違いないよ」と、彼に荒々しく告げてやった。


「はぁ、知らないって。俺じゃない。赤の他人……。俺に良く似た男のカップルが偶々いただけだよ。だから俺じゃないし。知らない。沙紀の勘違いだよ」と、彼は睨む私に対してそっぽを向き、やはり素知らぬ振りを決め込み始めだした。


 でも昨晩の私は、年上の彼に対していつものように素直に『そうなんだ。わかったわ~。薫さんのことを私信じているから大丈夫だよ』と言った言葉を甘え声音で漏らすことはなかったから。


「薫さん、うそを言わないでよ。あなたと女の人が腕を組み歩いているのを見たのは私だけでなく友達の蘭や翔子、サチに富美も見たんだからね」


「はぁ、それでも俺じゃない。俺じゃないって沙紀。お前達四人が仲良く他人の空似をしただけだよ。だから俺は知らないし。浮気などしていない。俺は沙紀以外の女には興味がない。だから信じてくれよ。沙紀。お願いだ。なぁ、頼むよ」と。


 薫さんは言葉、台詞の終わりには、彼女だった私に対して両手を合わせて拝むように告げながら自分のことを信じて欲しいと嘆願をしてきた。


 それでも浮気の確信犯である彼のことを私は絶対に許す気はないから今度は、自身の持つスマートフォンをカーキ色のパンツのポケットから出し──富美がL○NEへと送ってくれた写真を慌てて画面にだすと。


 薫さんへと、彼と女性が微笑みながら腕を組み、中慎ましく歩く写真の画像を突き付け見せる。魅せてやったのだ。


「あっ!」


 するとこの通りだよ。薫さんはね。流石に私達が彼と女性との中慎ましい写真。証拠写真の方は撮っているとは予想もしていなかったみたいでね。自分と女性が映っている画像を見て呆然、唖然とし始めだした。


「チッ!」


 しかしだ。彼はこの通りなのだ。


 彼は直ぐに我に返り舌打ちをすればね。今まで自身の、泳がせ余所見をし、素知らぬ振りを決め込んでいた自身の目と瞳を冷淡、冷やかなものへと変化をさせ。


「ああ、そうだよ。俺だよ。悪かったなぁ。このあいだサークルのグループコンパで知り合った女を食事に誘って口説きやらせてもらったんだよ。それが悪いか?」と。


 彼は自分のした浮気。彼女だった私を裏切る行為をしたにも関わらず。何故自分が悪いのか? と、苦笑を浮かべながら棚上げをしてきた……だけではなく。


「俺の彼女である沙紀、お前がちゃんと男の性を処理してくれないから浮気をするんだろうが。お前がちゃんと俺の彼女らしく振る舞い。尽くしてくれさえすれば。俺は沙紀。お前の事が本当に好きだから浮気などしない」と。


 彼は、薫さんは、浮気の原因は年上、成人をしている彼に対して私が彼女らしい振る舞いで尽くすことができないから。


 私の代わりに他の女性とラブホテルに入りベッドインして交わったのだと。今度は彼は荒々しく勢いよく私へと不満を漏らしてきた。


 でも私も彼に何もあげていない訳でもないし。ちゃんと薫さんの彼女らしく、自分自身のできる範囲で尽くしてきたつもりだから。


「私だってちゃんと薫さんにあげることができる物はあげたよ。なのに、なんであなたは私の目を盗んで浮気をするの? それにコンパにいく。いったなんて私しらないし。そんなところにいく男性ひとなんて私いやだし。知らないよ」と彼に悲痛な表情で訴えかければ。


「はぁ、沙紀、お前なぁ、大事な物って、俺は高校生のガキじゃないんだぞ。キスや肢体に触れ触り堪能したぐらいで、お前に『ありがとうございます』とお礼を告げて満足ができると思っているのか?」


 薫さんはいつもの彼とは違う険しい表情……憤怒しながら荒々しく私へと。今回の浮気の原因は全部私が悪いのだと告げてきた。


 でも昨晩は私も薫さん、彼に負けず劣らず。臆し、怯むこともなく。


「あのね。薫さん。私達未だお付き合いをしてひと月も経っていないんだよ。それでも私は薫さんのことを信じて、前の彼氏に拒み続けあげなかっただってあなたにあげたし。私の肢体にだって前の彼氏が振れることを拒み続けた私だったけれど。薫さんが触れ触ることに対して私は憤怒、不満を漏らすようなことはしなかったのになんで私を裏切るの。前の彼氏は結婚をするまで待ってくれると言ってくれたのに。なんで薫さんは私のことが本当に好きならば私の幼い頃からの夢……。そう、のようにウエディングベルの当日までファーストキスも待ってくれと言ってくれなかったのよ」と。


 私が昨晩薫さんに最後は泣きながら訴えかける。


 まあ、訴えかけたの。


 でもね、彼は、薫さんはね。私の泣きながらの、訴えかけ、問いかけに対して納得をしてくれるどころか。彼は更に自身の顔を、真っ赤に染め怒りをあらわにしながら。



(お願い)


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