第56話 高校三年生になればこんな最悪な午後もあると思う? (2)

「富美、驚いた声でどうしたの?」と、私が問えば。


「えっ! いや。そあそこ二人カップルと言うか? 今そこのラブホテルから出てきたカップルなのだけれど。沙紀の彼氏じゃないかな?」と、富美は驚愕、慌てた声色を漏らしながら指をさすから。


 どれどれと私が富美の指さす方向へと目と視線を向け確認すれば。


「あっ!」と、私の口から驚嘆があっさりと漏れてしまったよ。


 と、なれば?


「本当だ!」

「あのカップルの男性の方は沙紀の彼氏で間違えないよ」と。


 サチ、翔子も順に沙紀の彼氏の浮気の現場を見た。確認したと言葉を漏らし出すから。


 自身の彼氏がいた。それもカップルで仲良くラブホテルから出てきて歩いていると聞いた沙紀の顔は真っ青へと移り変わりながら。


「えっ! いや。うそ。ど、どうしよう?」と。


 沙紀が悲痛な顔、声音で呟き。その場で佇んだまま涙を流し始めだしたのだった。



 ◇◇◇



「ちょっと沙紀、泣いている場合じゃないよ」

「早く彼氏の元へと駆け寄って声をかけて浮気現場を押さえないと逃げられちゃうよ」と。


 その場、あの場で自身の顔を両手、掌で抑えながら嗚咽を漏らす私に翔子が𠮟咤激励。


 その後はサチが私に薫さんの許へと駆け寄り。隣の女性は誰なのかを問いただし確認……。


 そう、二人が何故仲良く腕を組みながら平和公園近くの川沿いにあるラブホテルから退出したのか問うようにと急かし告げてくるのだが。


 今自分が目と瞳で確認した薫さんの浮気現場に対して困惑、動揺……。本当に私自身がどうしたらいいかわからない状態へと陥っている。それも漆黒の闇、奈落の底へと堕ちた気分へとなっている私が彼の許へいっても真面な会話、話しなどできる訳がない。


 だから私は自身の首を「いやいや」と振りながら嗚咽を漏らすことしかできない。情けない姿でいる。


「ちょっと富美」

「何、蘭?」

「悪いんだけど。あんたスマホは最新のiフ○ンだから。望遠機能を使用して沙紀の彼氏の浮気現場の証拠写真を撮ってよ。ちゃんと彼氏の顔と女性の顔が映るように」と。


 立ったまま嗚咽を漏らす私の背を優しく撫でてくれている蘭が、薫さんの浮気現場を最初に見た。発見をした富美へと、彼と一緒に仲良く立ち並び腕を組み、彼の顔を愛おしそうと嬉しそうに見上げ見詰めていた女性の顔をもちゃんとスマホで証拠として盗る。撮影をするようにと指示をだす言葉が私の両耳へと聞こえ。少し間が開けば。


「沙紀! あんたが彼氏の許へと行って問いかける。訊ねる事が今できないようだから。私があんたの代わりに彼氏の所に行ってきてどう言うことかと問いかけ。こちらに連れてあげるね」と、蘭が自身の気を高ぶらせ興奮気味に私へと告げてくるから。


「ら、蘭いいよ。今はいいよ。今薫さんがこちらにきても今の私は、彼と真面に対話、話しのできる精神状態じゃないから。今はこちらに連れてこないで蘭お願いだから」と。


 相変わらず嗚咽を漏らす私は、蘭に対して祈るように嘆願をしたのだ。


 でも、蘭を含めた私の友人達は、浮気をした薫さんに対して不満を募らせているようだから。


「えっ! まさか沙紀。あんた~。彼氏の浮気をこのまま見逃し放置。許す気じゃないよね?」と、翔子が荒々しく私へと問いかけてくれば。


「そうだよ。沙紀。翔子の言う通りだよ。沙紀の彼氏、今丁度ラブホテルから出てきたばかりで御機嫌が良いようだから。彼氏の所に行って思いっきり頬を殴ってやらないと駄目だよ」と。


 今度はサチが嗚咽を漏らす私のことが哀れ、可愛そうに思ったのか? 鼻息荒く、荒々しく告げてくると。


「沙紀、サチの言う通りだよ。私は直人の浮気現場を押さえたら直ぐにあいつの許へ言って、自身の拳を握り。グゥで直人の頬へと鉄拳制裁を加えてやるよ。だから沙紀も今から彼氏の許へと行き。浮気相手の女の前で彼氏の頬を拳で殴ってやれば良いに」と。


 サチに続いて富美までもが、浮気をした彼氏に対して厳しい態度がとれない私に対して不満を漏らしてくるのだが。


 もしかすると彼の、薫さんの本命の女性が、未だ幼さが残るJK私ではなくて、大人の雰囲気を漂わす女性と言う可能性だってある訳だから。私はそのことを考えると自身の気を高めることもできなし。薫さんとあの女性の許へといくことに私はためらいが生じてしまうし。足も竦んで動かない。


 だから私はみんなに対して、自身の顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら。


「も、もしかするとね。浮気相手はあの大人の女性でなく。まだ子供染みた私かもしれないの。だから私今は薫さんの許にいって聴き、訊ねることができない」と呟けば。


「だから私が沙紀の代わりに彼氏に聞いてきてやるから」と、蘭が告げれば。


「私もついていく」と、翔子も泣く私のことを凝視して不憫、可愛そうに思ったのだろう? 彼女は鼻息荒く告げてくる。


 でもね、これは私自身の問題であり。彼の、薫さんの口車に乗り。和也を蔑ろにした私への神の天罰だと思し。自分の不祥事は自分自身で何とかしないと私はいけないと思うから。


「ひっく、ひっく、みんなごめんね。本当にありがとう。これは私と薫さんとの問題だから。私が彼と話しをするから大丈夫。大丈夫だよ。もう心配をしないでみんな……。特に今晩は家庭教室の日だから私の口から薫さんへと直接訊ねてみるから大丈夫。大丈夫だから」と。


 私は泣き癖のついた声色で四人へと自分は大丈夫だから心配をしないでお願いと告げるのが精一杯だった気がする。


 ◇◇◇




(お願い)


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