第55話 高校三年生になればこんな最悪な午後もあると思う? (1)

「薫さんとの連休のドライブってさ、多分朝早くから私達二人は遠出でかけると思うの」と沙紀が私達へと告げてくる


 だから私達四人は仲良く。


「うん」

「うんうん」

「そうだね」

「確かに」と。


 私、富美、サチ、翔子の順に真剣な顔で頷けば。


「すると午前中、お昼前にはね。私と薫さんは目的地となる場所、観光地へと到着して二人で仲良く和気藹藹と腕を組み、その辺りの観光地。場所をね。軽く観光して回り正午になって二人で仲良く会話をしながらランチ楽しむことになると思うし。そうなると思うから嬉しい。本当に楽しいと思う。まあ、ここまでの展開、経緯だけならば」と。


 沙紀は苦笑いなのか? 作り笑いなのか? 私があの娘の顔と様子を凝視して、どちらなのかわからない笑みを浮かべながら告げてくるから。


 私達は、四人は沙紀の説明を聞き、「うん」と仲良くまた自身の首を傾げると。


「でもね。薫さんは私とのランチが終われば直ぐに『帰ろうか?』と、言いだすと思うから。私も薫さんに『うん』と頷き。『じゃ、帰ろうか』と告げて二人は車で仲良く未だお昼過ぎたばかりだと言うのに慌て、その場から帰宅の途につくと思うの。薫さんが帰宅の最中にある……。そう、ラブホテルに入り夕方まで私と二人きりでの親密な関係を親の目と耳を気にすることなく仲良く戯れ堪能したいがためだけに早く帰宅の途につきたいのだと思うの……。私はそれが嫌……。私の身体だけが目的のドライブだからいきたくないの……」と。


 沙紀は、今度は私達四人へと分かりやすく。気落ち落胆をしながら嘆くように告げてくる。


「それって嫌だね」と、彼氏持ちの富美が言葉を返せば。


「うん、いや」と沙紀は頷く。


「沙紀が自分の身体だけが目的のドライブに行きたくないのならば、彼氏にドライブの件を断れば良いじゃない?」と、翔子が真剣な顔で言葉を返せば。


「薫さんに対してどうやって断ればいい?」と、沙紀が言葉を返せば。


「沙紀が今後も今の彼氏とお付き合いを続けたいのならば。お母さんに当日に風をひいた。こじらしたと言ってもらったら」と、サチが沙紀へと提案を出せば。


「家のお母さんに頼めないよ。薫さんは私の家庭教師だから。私と付き合っているとバレたら家のお父さんに薫さん、何をされるかわからないし。家庭教師のアルバイトだって首になっちゃうよ。だからお母さんに頼めないよ」と、サチの提案に対して沙紀が自身の顔色を変えながら言葉を返すと。


「じゃ沙紀がドライブの当日に彼氏へと風をひいた。体調を崩したからドライブは無理と断るしかないんじゃない?」と、サチがまた沙紀へと提案を出せば。


「沙紀、あんた。彼氏とラブラブだったんじゃないの?」と、翔子が怪訝な表情で訊ねれば。


「沙紀、あんたもしかして? 彼氏の事が嫌、嫌いになってきたの?」と、富美が苦笑いを浮かべながら問えば。


「えっ! いや。あ、あのね。別にきらいと言うか。薫さんのことはそんなにはきらいじゃないのだけれど……。ただね、薫さんは。和也とは違って事ある毎に私の身体ばかり求めてくるの。年上の彼氏とのお付き合いはこんなもんだよと。私のことをやたらと口説いてくるの。『やらせて欲しい』と、私の耳で囁きながら。それがね、私段々といやになってきているの……。でっ、そんな最中の連休だからどうしよう? どうしたらいいと思っているの……」と。


 沙紀は、最初は今彼の事を彼女らしく庇うように呟いてきたのだが。台詞の終わりには、沙紀の口から元彼の山田の名が出てきた辺り。あの娘はもう既に今の彼氏から心が離れかけてきているような気がすると思う。


 まあ、思ったから「沙紀?」と、私は怪訝な表情で訊ね始める。


「……ん? なに、蘭?」と、あの娘が小首を傾げながら言葉を返してきたから。

「あんた、今の彼氏とまさかよね?」と、遠慮せずに問いかけた。


 すると沙紀は驚愕──。


「えっ!」と驚嘆を漏らせばあの娘、慌てて私から目線を反らしながら。


「し、していないよ。絶対にしていなから」と、沙紀は自身の顔色を変えながら慌てふためき、しどろもどろと、自身の目を泳がせながら言葉を返してきた。


 でも沙紀の様子が余りにも挙動不審過ぎるから


「沙紀、あんた~。様子が可笑しいけれど。今彼ともう既に事を済ませて、逢う度にしているんじゃないの?」と、翔子が強い口調で訊ねれば。


「わ、私し。私はしていないから。本当に。本当だよ。信じて。お願い。翔子」と、沙紀は相変わらずしどろもどろな口調、物言いで。最後には今にも泣き出しそうな顔で翔子へと祈るように告げるから。


「まあ、別に私の事ではなく沙紀、あんたの事だから私がとやかく言う必要性はないのだけれど。もしも今彼とで別れても山田君にはばれないようにしないと駄目だよ」と、翔子が再度自身の口を開いて諫めと釘を刺せば。


 沙紀はコクコクと無言で頷き返事を返すのだ。


 それも自身の両目、瞳に涙を一杯溜めながら翔子へと何の反論する事もなく頷き返したのだった。


「……ん? あれ? あれって……」


 私が沙紀と翔子の会話、やり取りを凝視しながら。


(沙紀は私達には今の彼氏とは深い関係ではないと告げてきたけれど。あの娘の様子が余りに可笑しいから。もしかすると沙紀は私達に嘘をついているのではないか?)と。


 私は沙紀の事を猜疑心のある目で見詰めながら思っていると。


 富美の口から驚嘆が漏れたから。




(お願い)


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