第47話 高校三年生になれば、元カノの様子も変わる (3)
だから後ろの席の娘はアイツの華奢な背をシャープペンシルで突く行為をやめて「はぁ~」と大きく溜息をつけば。
「それでもさ、沙紀。毎日授業中だろうと、大した用事もなくひっきりなしにメールを飛ばしてくるのは余り良くない行為だと私は思うから。先生にばれないうちに対処した方が良いよ。それと沙紀、あんたも授業が終わるまで彼氏にメールを返すのは控えた方が良いよ」と。
アイツの後ろの席の娘は大きく溜息をつきながら諫めるのだが。沙紀の奴は後ろの席の娘へと。
「だってぇ~」と、彼氏のことを嫌がる。不満、不快感を募らせる事もしないで嬉しそう。満身の笑み、天子の笑みを浮かべた上に甘え声色で言葉を返すのだよ。今彼からのメールが嬉しくて仕方がないと言った感じがね。
俺の二つの目、瞳に映り。安易にわかるくらいアイツは、今彼のことが本気、本当に好きなのだと俺はその日で理解ができた記憶がある。
だってさ、アイツ、沙紀の奴は、朝の授業から午後の授業、帰りのホームルームの時間まで今彼とL○NEでのメールのやりとりで満身の笑み、微笑み。嬉しそうな顔……。
そう、元彼の俺にあんな幸せそうな微笑みをくれたことがあっただろうか? と、思えるような満身の笑みや女神、天使の笑みを浮かべ歓喜しながら先生達の目をチラチラと見詰め。様子を窺いながら盗んでは今彼との刺激、興奮するメールを楽しんでいたよ。
と言うことは?
ハイスクールでさえアツアツ、ラブラブの沙紀と今彼だから。沙紀の奴は家に帰っても勉強……。受験勉強がおろそかになるぐらいL○NEでのメールや無料電話をしているに違いないと思われる。
だってさ、今でもそうなのだが、沙紀の奴の彼氏は、学校の授業の合間にある休憩時間になると正確に、愛する沙紀のために電話をかけてきてはアイツの様子を窺っているようでね。沙紀の奴の口から。自身の耳に当てているスマートフォンへと向けて──。
「……うん、うん、大丈夫だって薫さん。私のことならが心配はないから……。うん、うん。本当だから……。もう、薫さんは心配性、なのだから……」と。
沙紀の奴は今彼に対して気だるげ、面倒くさそう。不快感を募らせ、悪態をつく……。
そう、元彼の俺に対してしていたような容姿、様子ではなく、本気、本当に嬉しそう。満身の笑みを浮かべながら電話でも会話をしている姿が俺の両目、瞳に。休憩時間ごと映っているよ。未だにね。
だから俺と沙紀は時々目が合う。合えばね。
アイツは慌てて俺から目線を外し、俺の両目、瞳に映らない。そして耳に沙紀の声やスマホから漏れる彼氏の声が聞こえにくい場所──教室の隅か廊下へと慌てて移動をしている。
その都度俺は沙紀の華奢背を凝視しては苦笑いを浮かべ自身の脳裏でね。
(アイツ、沙紀の奴は学校で彼氏と電話やメールをあれだけしていると言うことは家、自分の部屋でも暇さえあれば電話とメールをしているのだろうから。アイツ受験勉強の方は本当に大丈夫なのか?)と思うし。
(沙紀の彼氏は大学生だし。家庭教師なのだから。受験生は今が大事な時だとわかっているはずだから。少しは電話とメールを控えるようにしてやればいいのに。アイツ、沙紀の奴も志望校は国立のH大だから俺は落ちても知らんぞ。あの二人は……)と。
俺は元彼なのに小姑とみたいな心配をすることも多々ある。俺自身は沙紀が受験に失敗、落ちようが。どうでもよいことのはずなのに、あいつら二人の電話やメールをしている様子を見て俺はクラスメイトの一人として……。
そう、みんな誤解をしないで欲しい。俺自身は何度も言った。告げた。呟いたと思うけれど。
俺自身は沙紀に対してマジで好き、愛しているといると言った感情と想いはもうゼロに等しくてね。只のクラスメイト、同じ学舎で学ぶ友人の一人として心配をしているだけだから誤解をしないで欲しいのだ。
だって俺自身は傷心による引きこもりと登校拒否から回復、復帰したから学校へと通い始めてもう十数日以上になるけれど。
毎日さ、沙紀と今彼とのアツアツ、ラブラブな電話、メールのやりとりの様子を見てさ、俺はアイツの彼氏みたいにあんなにもまめに電話、メールをかけて話し相手をしてやることはまず不可能。絶対にできない。真似ができない。
俺は沙紀からの電話やメールに対して嫌悪感を抱くこと、面倒だなと思い。舌打ちをすることも多々あった。
だから沙紀との電話での様子も悪態をついて悪くなるし。メールにしてもスタンプを送り誤魔化すことも多々あったのだ。
そう、以前俺が泣き言や嘆きを漏らした時に。俺はアイツ、沙紀のことを想い。電話の回数を極端に減らし。会話時間も短くしたと説明をしたと思うのだが。
あの時の俺は、沙紀に騙されたことへの憎悪のために自分自身が可愛そう。
実際の俺はと言うと?
沙紀に対してのメールも面倒だから一時間に一回なら未だよい方でね。
実は俺、受験勉強に集中し過ぎて沙紀のメールを一時間半や二時間ぐらい放置することも多々あった。
そう、要するに俺は自身の受験勉強が忙しくてアイツ、沙紀の奴を蔑ろにしていた。寂しい思いをさせていたみたいなのだと。
今のアイツ、沙紀の奴と、彼氏との沢山の電話、メールのやりとりを沙紀が本当に幸せ、嬉しそうにする姿。初々しいアイツを見ていたら。俺自身も沙紀に対しての恨みつらみは消え、一人のクラスメイトとしてアイツ、沙紀の背を優しく、ソッと押して、『沙紀! 彼氏との仲、がんばれよ! 俺はお前のクラスメイト、友人の一人として応援しているから!』と告げたい衝動に駆られているぐらいだからね。
まあ、ヲタクであり。理数系の俺と文系の沙紀とは、要するにあわなかったと言う訳だよ。
だってさ、俺自身も沙紀と話しをするよりも。俺に告白をしてくれた山本や親友の太田と話しをしている方があう気もするからね。
それにさ、俺自身も沙紀と今彼とのことを気にしながら見詰めるだけの余裕はないのだよ。
だってさ、あの日──。
俺が不登校を起こし、復活を遂げた日から。俺の身の回りは急激に変化──移り変わった記憶がある。
◇◇◇
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