第46話 高校三年生になれば、元カノの様子も変わる (2)
アイツ、沙紀は、自身の後ろの席の娘へと。
「ごめん、ごめん」と笑い誤魔化し。
「わかっている。わかっているから」と。
「先生にはばれないようにするから」と、アイツは後ろの席の娘へと小さな声色で囁くように謝罪をおこなえば直ぐに。
〈カチカチ〉
とまさに早業、神速でスマートフォンの画面をアイツのしなやかな指先でリズムよくタッタ──。
〈カチカチ〉
と、アイツの今彼から送られてきたのだろうと思われるL○NEのメール文の返信のための言葉を満身の笑みを浮かべ、嬉しそうに打ち返し、送信をした。
まあ、した記憶が俺の脳裏に未だに残る。まあ、大変に印象的に残っているのだ。
だってアイツ、俺の元カノさまってね。俺に対してあんな満身の笑みや、アイツの心の奥底から嬉しそうに微笑む容姿、様子をね。俺自身はアイツ、沙紀の奴の付き合っている時に天使の笑みと言う奴を見たことがあるだろうかと。俺は自身の脳裏で思案を始めだした記憶がある。
それもさ、自身の顎に手を当てながら元カノさまの様子を授業そっちのけ。英語の先生が黒板に書いてくれている大事な英文や翻訳を自身のノートに写すのを忘れるくらい夢中……。俺は真剣に沙紀の様子を食い入るように見ながら窺ってしまった記憶があるよ。
まあ、今は少し慣れたと言うか? 今はもう俺自身がアイツ、沙紀に対して憎悪、恨みつらみもないし。不満もない。
アイツ、沙紀の今彼に対してもさ、俺自身が完全に踏ん切りがついたからね。只先ほどアイツと沙紀の今彼にたいして山本や由美の目の前でキッキッキとお猿さんのように地団駄を踏みながら不満を漏らす悪態行為をとった。したのはアイツ、沙紀の奴がわざわざ俺に対して当てつけのように、自分の車持ちの大学生、家庭教師の彼氏をね。俺が通る通学路へと白のユーノスロードスターを道路際へと停車、待てせ、自分が助手席へと乗り込んで、今彼とのラブラブな様子……。
そう、未だ夏、真夏でもないのに、『ああ、熱い。熱いな~。未だ真夏ではないけれど。俺達の目の先で白のユーノスロードスターに乗車しているバカカップルが俺達の目のやり場に困るほどアツアツ、ラブラブだから本当に暑くて仕方がないやぁ~』と、扇子か団扇、掌を気だるげに振りながら俺が悪態をつきたくなる衝動に駆られるほどの大変に仲の良い様子をビッチ、セフレの沙紀とチャラ男の彼氏とが見せるから。俺がお猿さんになっただけで普通。学校での授業の最中や休憩時間では綺麗サッパリアイツ、沙紀のことを忘れている俺と言うか?
まあ、俺もアイツの様子を窺い続けるほど暇でもないし余裕もない。
まあ、その辺りはもう少し先の方で説明をすると言うことで話しが飛んでしまったから元に、俺の過去の話しに戻すけれど。
沙紀の奴は本当に嬉しそうな顔……。元彼の俺と二年ばかり付き合った最中に何度魅せてくれただろうか? と。
この俺さまが思う。見惚れるような天使の微笑みを浮かべながら彼氏へとメールを送ったのが俺の瞳に映る。映った。印象に残ったし。未だに俺の脳内へとセーブ、保存をされているぐらい印象に残ったね。
だから俺は、「はぁ」と、小さな溜息をついて、また黒板へと目線を変えるように、己の脳へと指示をだす。
まあ、だしたと同時にさ、沙紀の奴の顔色が瞬時に変わったのが俺の目に映った。だから俺は黒板へと視線を変える。移すこともなく。沙紀の奴に悟られぬようにアイツの様子をまた窺い始めだした記憶がある。
(……ん? なんだ、アイツ? 沙紀の奴はどうしたのだ?)と、自身の脳裏で思い。小首を傾げながら様子を窺っていると。
沙紀の奴は自身の制服のポケットからまたスマートフォン。それも今の今、アイツが嬉しそうに自身のポケットへと入れたばかりのスマートフォンを慌てて出して膝の上──机で隠しながら俯き加減でスマホの画面を食い入るように見て確認を始めだすのだ。
だからアイツの席の後ろの娘がね。自身の持つ、握るシャープペンシルで沙紀の背をツンツンと突きながら。
「沙紀、あんたまさかまた彼氏からのL〇NE?」
アイツの後ろの娘は、また先ほどのように沙紀の耳へと怪訝な表情で自身の唇を近づけながら囁くように問いかけ始めたよ。
だから沙紀の奴は苦笑い。そして笑って誤魔化しながら。
「うん、そうみたい」と、後ろの席の娘へと説明をした。
「沙紀、あんたさぁ、今は三年生。一番大事な時だよ。だからさ、彼氏にいい加減にするようにと注意をした方が良いよ。悪い事は言わないから」と。
アイツの後ろの席の娘は、先ほどと一緒で注意を始めだした。
さから沙紀の奴は苦笑いを浮かべながら。
「そうだね」とだけしか言わずに言葉を返した。
それもさ、「薫さん、私に夢中。好きだから仕方がないんだって言うんだもん。だから私もまあ、よいか、と思うの。それに薫さんから本当に私って愛されているんだと思えるから良いの。ふっ、ふふふっ」と。
自身の今彼に対して不満や不信感、悪態をつく訳ではなくて、沙紀の奴はまた先ほどと一緒だよ。自身の今彼のことを慈愛に満ちた女神、天子、聖母の微笑みを浮かべ愛おしそうに微笑み、後ろの席の娘へと庇ってみせたのだ。
大変に嬉しそう。幸せそうに、だよ。
(お願い)
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