第38話 高校三年生になれば春らしい出来事も色々と(1)

「あれ、和也? 今日は学校へと行くのかい?」


 我が家のお袋さまは、自身の首を傾げつつ、俺へと尋ねてきたから。


「うん」と俺は頷き。


「ああ、今日からはいくよ。学校へは」と言葉を返し。


「直人や蘭から『和也、学校にこい!』とスマホにL〇NEで、電話やメールがひっきりなしにかかり、送られてくるから。俺も今日からは学校へといくことにするよ」と告げれば。


 俺はお袋さまへとケラケラ笑いつつ。


「俺自身もこのまま家でダラダラとしている訳にはいかなしさ。学校の授業も遅れるす。単位がやばくなって留年をするのも嫌だしね。それに塾代だってかかっている訳だから。塾の方もこれ以上は休みたくはないから。今日から学校へといくよ。母さん」とも告げれば。


「……それに俺の担任からもどうせ家の方へと電話もかかっているんだろう? 山田、早く学校へとくるように?」と。


 俺がお袋さまへと尋ねれば。


「うん」と、お袋さまは頷き。


「担任の先生からも、家の電話にかかってきたよ。『山田君はどうしたのですか? そんなに体調が宜しくないのか?』と、母さんにねほり、はほりと尋ねてきたから困ったよ」と。


 我が家のお袋さまは、息子の俺に苦笑いを浮かべながら告げてきたから。


「本当にごめん、な、母さん! ごめいわくをおかけしました!」と。


 俺は自身の顔の前で、両手を合わせつつ、家のお袋さまへと謝罪、詫びる。


「……ん? ああ、もう良いよ。和也……。母さんに対してそんなに頭を下げなくても良いから」と。


 我が家のお袋さまは、自身の顔の前で、手を振りつつ、俺に気にするなとつげてくれたのだ。


 そう、実は、あの日、あの時……。俺が沙紀に対して、


『二度と俺のスマートフォンへと、L〇NE電話やメールをかけてかくるな!』


 と、怒声を吐いた次の日から俺は、何だか学校へといくのが面白くなくなり、、登校拒否と言うやつを。俺は三日間ほどしてしまった。


 すると次の日から直人や大田……。その他の友人達と、俺の隣の席のあの娘……。


 そう俺に自身のファーストキスという奴を献上してくれた山本がね。あいつ誰から俺のL○NEのIDを教えてもらったのかまではわからないけれど。


「(山田君大丈夫?)」


「(もしかして新宮寺さんのことで辛いの?)」


「(もしも山田君が精神的……。そう気持ち的に辛いのならば。私が山田君の家に行って側にいて、慰めてあげるよ」と。


 山本の奴は、今度は俺と二人だけの世界に入りたいと、積極的にアプローチをしてきたのだ。


 それも長々と遠回しに、自分の初めて、〇女、バー〇ンをあげるとも、積極的なアプローチをしてくるから。


(加奈、少し待て! 落ちつけ! 俺とそんな深い関係になると後悔をすることになるし。俺自身は別に沙紀の件はもう、全くと言ってよいほど気にしていないから大丈夫)と。


 俺は加奈に……。


 そう、あいつ! 加奈の奴が、俺とはキスをした関係……。


 それもファーストキスをあげた男子ひとだから、俺に下の名前……。


 彼女のように呼んで欲しいと。まあ、あいつ! 加奈は遠回しに、俺へと責任をとれと言ってきているのだよ。


 あいつが自分からキスをしてきたのだけれど。それでも沙紀とは違い、俺のために大事にとっておいたのだと。


 あいつ、加奈の奴がL〇NEで涙マーク、涙マークを入れつつ訴えかけてきた後の、L〇NE電話だから。


 俺自身も加奈への付き合う、付き合わないの、返答に困いる最中の、止めの押しのような電話だから。


 加奈がやたらと。


「(山田君、今から家に行って良い?)」、


「(良いよね? 山田君と私とは、そう言う関係だから?)」とも告げ、押しを加奈は、俺へと何度も告げ、急かすから。


(加奈、あのな? お前の返事は来年の春でいいかな? お互いが受験が終わり、H大の合格発表が終わってから。俺が加奈、お前に返事をするではだめかな?)と、何処かで聞き覚えのある台詞……。


 そう、沙紀のアホが俺へと告げ、言い訳をしてきた台詞と同じことを。俺は加奈へと告げた。


「(うん、わかった。和也、待つね)」と、加奈の奴はスマートフォンの向こうから満身の笑みを浮かべつつ、俺へと告げてきた。


 それも多分ね? 俺自身はあいつの真横で見ていた訳ではないから。俺自身はよくはわからないけれど。


 嬉しそうな声音だから、俺もホッ! としたよ。俺のズル休みの初日はね、と。


 その後は、さて、どうしよう、加奈の件は? と、俺は思案……。来年の春には、加奈に返事をするからと告げた訳だから。


 それまでには考えないといけないな? と思うのだが。


 俺は加奈だけではなく、大田蘭からも『山田の事が一年生の時から好きだった……。片想いだったの』と告げられ。告白を迫られているから、俺はマジでどうしよう? どうしたらいい? と思案をすれば。


『山田、これから先は、特定の彼女を作るのは禁止ね!』と。


『もしも、自慰で我慢ができなくなるようならば。うちらが相手をしてあげるから。絶対に特定の彼女を作るのは禁止! 分かったわね、和也!?』と。


 俺は篠田率いる親衛隊にもファーストキスと呼ばれるプレゼントされ、脅されている最中でもあるから二人への返事……。


 蘭と加奈に対して、どう返事を返してよいかわからない! 悩む! 困惑をしてしまう!


 だから俺はどうしたらいいのだぁあああっ! と。


 俺が、気が触れたように声を大にして叫びたい衝動に駆られると。


「あれ、貴女は?」と、我が家のお袋さまの少しばかり驚いた声が、俺の耳へと聞こえた。


 だから俺は(誰だろう?)と思えば。


「あの、私は山本言います……。山田君の隣の席で、彼への学校からのお知らせプリント等を持ってきました」と。


 俺の耳に聞き覚えのある少女の名字と声……。


 それも俺にファーストキスをくれた少女の名字で声音でね。先ほどと言うか?


 今の今まで、この俺さまと会話……。ファーストキスを俺にくれたくらいだから。


 元カノ、沙紀を忘れるためならば。その先の行為も、安易にあげると、先ほどスマートフォン越しに告げてきた少女の声だから。


 俺は、(えっ! うそ? 冗談だろう……)と。


 あいつ! 加奈の奴は! あの日! あの時! 電話の最中は! 俺の部屋が見える位置から。こちらを見つつ、薄ら笑いを浮かべつつ電話をしていたのか? と、俺は思うと。


 自身の背に急に寒気がくる! まあ、走るからね!


 俺は加奈のストーカー染みた行為に、自身の身体をブルブルと震わせつつ二人……。


 俺のお袋さまと加奈の様子を、自身の部屋の二階から、あの日に窺がった。


「あっ! そうなんだ!」と、家のお袋さまの高らかな声が聞こえると。


「本当にごめんなさいね。わざわざ遠くから家まで、和也のプリントだけを持ってきてもらって本当にごめんなさい」


 家のお袋さまは、学校のプリントを俺の許へと持ってきてくれた加奈へとお礼と謝罪を告げた。


「あの、山田君は?」


 沙紀と俺が不仲……。多分別れたと気がついている家のお袋さまは、ニコニコと満身の笑みを浮かべつ加奈の容姿を舐めるように見ていたに違いない?


 自身の息子の彼女は、今度はこの娘なのだろうか? と思いつつね。


 だって家のお袋さまは、加奈からのテンプレ染みた問いかけ対して、あの人はあっさりと。


「和也ならば二階にいるはよ。上がってみたら?」と。


 息子のガールフレンド慣れをしていると言うか?


 男子の俺が、自身の部屋で一人っきりでいるにも関わらず。相手の親御さんに悪いとは思わずに加奈のことを追い返すこともしない。


 そう、家のお袋さまは、加奈が乙女の赤ずきんちゃんだと思っているから? あいつがキス魔で、オオカミちゃんなのを知らないから平然と家に! 俺の部屋へとあげてくれるから。


「お邪魔します」と、加奈の口から漏れ。


 その後はトントンと、加奈がリズムよく、御機嫌よく、俺の部屋へと向かってくる音が、耳へと聞こえてくる。


 だから俺は三日前に、(どうしよう?)と思い。


 先ずは、自身の部屋の中を慌てて見渡すように窺い。部屋の中が散らかっていないかを確認した。


『フムフム』とね。


 でッ、俺の部屋の中を確認すれば、みなさんも見てわかる通りだ。


 俺はずる休みをしても受験勉強はしないといけないから。自身の机の上や部屋中も整理整頓──。何処に何があるかが、俺が分り易いように本棚等に整理……。


 それと俺の部屋にはガラスの温室が置いてあるように。沙紀の奴が大嫌いで、俺の部屋にくることを基本拒み。俺の部屋にきても。俺のことで双子の妹へとL〇NE電話をかけられるぐらいと。


 俺への不満や嘆きを泣きながら言えられるくらい、双子の妹と仲が良いと言うことは。基本沙紀の奴は、俺の家へと遊びにきても妹の部屋にいることが多かった。


 俺の部屋には国産、外国産のオオクワガタと外国産のヒラタクワガタやニジイロクワガタ、ヘラクレスリッキーの幼虫等が、ガラスの室内温室にいるから。


 家のお袋さまや妹達が、ダニが湧くと煩いので、掃除だけは毎日のようにおこなっているから問題はない。


 だから加奈が俺の部屋に入ってもオッケーなのだが。


(加奈、あいつは、虫オッケーなのかな?)


 そう、それでも俺は、こんなことを直ぐに思ったと思うよ? あの日の午後は。


 だって女の子って基本虫は、苦手な娘が多いじゃないか? 我が家の女性連中だって、ゴキブリや蜘蛛、カメムシでも出たら大騒ぎだよ。


 いつも俺か、親父さまが呼ばれて駆除をしているぐらいだからね。


 まあ、そう言うことだから、俺はあの日──。加奈って虫さん。俺の大事なペット……。


 沙紀の奴は死ぬほど嫌ったクワガタ達に対して、どんな反応を魅せるのだろうか?


 俺はそんなことを思いつつ、自身のベッドをソファー代わりにして座りつつ。加奈が俺の部屋へと向かってくるのを待てば。


 トントン! と、家の階段を上がる足音が止んだので、俺は生唾を『ゴクリ!』と喉を鳴らし待てば。


「山田君、起きている?」と、俺の部屋の外で、加奈が俺を呼び、尋ねるから。


 俺は、自身の部屋の中で、「うん」と頷いた。



 ◇◇◇



「お邪魔します」


「どうぞ、どうぞ」と、微笑みつつ声を返した、あの日の俺だ。すると山本加奈は、俺の部屋に入るなり。


「ふぅ~ん」と声を漏らしつつ、部屋の中を見渡す。


 そう、まるで何かを探索しているかのように山本加奈は、俺の部屋の中を注意深く見詰め観察をするから。


「あ、あの山本?」


 俺は、にへらと笑いつつ山本加奈へと声をかけた。


「何、和也?」


 すると、いきなりこれだよ。あの日の山本加奈は。完全に沙紀に代わり。そう加奈は、自身の大事な物、ファーストキスをプレゼントした俺の彼女として君臨し、名指しで返答してきた。


 だから俺は正直驚愕したと言うことはないよね。あの日、あの時の加奈は、事前に俺へとL〇NE電話をしてきて、


『何で学校に来ないの?』、


『私寂しい』


『山田君と逢いたい』、


『甘えたい』、


『そしてまたキスもしたい』、


『だから山田君の家に行っても良い?』と。


 まあ、その他にも色々なことを俺に告げては誘っていた訳だから、山本加奈……。


 そう、加奈に俺は名指しで呼ばれても困惑、動揺をすることはないから。


「山本、立っていないで座れば」と、俺が告げれば。


「和也、何処に座ったら良い?」と尋ねてきたよ。


 だから俺は、「好きなところに座ればいい」と加奈へと告げた。


「じゃ、和也の横が良い」


 やはり加奈の奴は、スマホで告げてきた通りで、自身が俺に甘えたいから、真横を所望してきた。


 だから俺は、「いいよ」と言葉を返せば。


「あっ!」だよ。


 そして「うん」だ。


 でッ、その後は「うぅ、ううう、ッ、うん」と声が漏れる。


 それも俺だけではなく、加奈の口からも優艶な声が漏れてくる。


 そう、あの日の加奈の奴は、本当に早かったよ。俺が(こいつ、本当にバー〇ンなのか?)と困惑するぐらい。


 あいつは俺の横に座るなり速攻──。素早く俺の唇を奪い、大胆に押し倒し甘えてきたから。


『お、おい山本! ちょ、ちょっと待てって! 山本! マジで不味いって! 男子の部屋で、こんなことをしたら』と。


 俺自身も思う訳ないよね。実際加奈とは、その日の、前の日の正午に教室内……。クラスメイト達が見ている前で、篠田率いる親衛隊達に対して加奈も、遅れをとるもんかと! 自身のファーストキスをくれ、その後も二度目のキスを今度は蘭と沙紀の二人に魅せつけ、威嚇をした訳だから。


 俺もあの日の加奈とのキス三度目、四度目、五度目……となる訳だから。俺自身も平気でチュチュするものだから。


 俺自身も段々とその気になるから、ふと気が付けば、加奈の少し膨らんだオ〇パイに手を当てている状態だから。


 これは俺自身も流石に(不味い! 不味いぞ! このままでは山本を押し倒し、して、やってしまう……ッて、俺が押し倒されているのだった。すっかり忘れていた)と。


 あの日の俺は思った。


 だから、あの日の俺は取り敢えず退避を思案……。


 その場! あの場! 濡れそうな場をどう誤魔化し逃げようかと試みるのだが。


(マジで、こいつバー〇ンか?)と。


 俺が本気でまた悩み、困惑したぐらい、加奈の奴は大胆でね。俺が自身の頭! 口の中で!


「(山本! マジで辞めろ! 辞めるんだ! 俺はお前にそんなことをされ突ければ。本当に理性が飛び、果てるようになるから辞めてくれ! お前! 山本がいくら濡れ場経験が多々あるとしてもだ! いきなり、こんなことをしてはいかん! 遺憾砲だから! マジで辞めてくれ、お願いだ! 生徒手帳にも記載してあるだろう! 不純異性交遊はだめだと! 清く正しい恋愛いじゃないと!)」と。


 俺は自身の脳内で山本加奈! 加奈に不満を呟いている訳ではないのだ!


 俺は、自身の口に出し、不満を呟いてはいる。


 でも、みなも知っての通りでキス魔! 接吻が大好き~! だいちゅき、ちゅき、ちゅきな、加奈に口を塞がれているから。


 俺の口から漏れる台詞は、「ふご、ふご、ふんが~! ふんが~! ふご~! ごぉ~!」としか、言葉に出ないよ。


 なのに? 加奈の華奢な手は、俺の腹部の下でごそごそと動き、小悪魔さまは悪戯し、続けるから。


 俺は本当に困ったものだと思う。



 ◇◇◇



「加奈?」


「……何、和也?」


「コーヒーでいい?」と。


 俺はあの日! あの時! まあ、三日前の夕刻のことだけれど。俺は加奈に尋ねた。


「うん」


 すると加奈は、この通りだ。俺への問いかけに対してしおらしく頷くと。俺にしな垂れ甘える行為を辞め、自身の身体を起こし、身なりを整え始める。


 そんな加奈の様子を俺はさり気なく見詰め、『可愛いなぁ』と本気で思いながら、自身の身体を起こせば。


「よいしょっと」と声を漏らし、自身の状態を完全に起こして、「ちょっくらぁ下の部屋にいってコーヒー入れてくるから」と、俺は加奈に告げて、自身の部屋の扉へと向け、歩き始め。部屋の扉の前へと到着すれば。


 自身の部屋のノブを回し、扉を開け。階段へと向かい、下の部屋──。キッチンへと向かう。


 そして到着すれば。


「和也?」と家のお袋さまに声をかけられた。


 だから俺はお袋さまへと。


「何、母さん?」と言葉を返せば。


「二階にいる和也の新しい彼女、家で夕飯食べてから帰るの?」と尋ねられた。


「ん? どうだろう? 加奈に聞いてみないとわからない?」


 俺はお袋さまにこう答えると。


「加奈に聞いてみる」と告げて、また階段へと向かう。


 そして「加奈~!」と叫び。「今晩、俺んちで夕飯を食ってかえるかぁ~?」


 俺は加奈に声を大にして叫びつつ尋ねた。


「……ん? いいの、和也? お父さんやお母さんの迷惑にはならない?」


 加奈が俺に尋ねてきたから。


「うぅん。大丈夫だ」と、俺は自身の首を振りつつ階段の下から、加奈のことを見上げるように見つつ告げれば。


「母さん、いいんだよね?」と。


 俺はキッチンへと顔の向きを変え、加奈の耳へと聞こえるように。俺は家のお袋さまへと尋ねれば。


「うん、家の方は大丈夫だけれど。和也の彼女さんの方は、御両親は大丈夫なのかな?」


 そう、家の方は加奈が、我が家の食卓に交ざるのは別に問題はないだが。只加奈の家──。御両親の方は大丈夫なのか? と、家のお袋さまが声を大にして叫び尋ねると。


 加奈は一瞬──。唖然、呆然だよ。少しの間、階段の上でボォ~! と佇むから。


「お~い、加奈~! どうしたんだ?」、


「何をボォ~! としているのだ?」と。


 俺が階段の下から、上で佇む加奈へと再度呼びかけると。


「えっ! あっ! 御免なさい、和也」と、加奈は俺に謝罪をすれば。


 自身の制服のポケットからスマートフォンを出して、慌てて電源を入れると。加奈は大変に素早い指使いでチャットを打ち、送信……。


 加奈は少しの間、スマートフォンの画面と睨めっこを始めだす。


 でッ、加奈がスマホと睨めっこを始めると、L〇NEメールの着信音が俺の耳へと聞こえてきたから。


(あっ! 加奈のお母さんから連絡かな?)と、俺が思うと。


 加奈は自身の顔を上げ、俺の顔を見ると満身の笑みを浮かべ。


「私のお母さんが和也の家まで迎えにきてくれると言っているから大丈夫」と俺に告げ。


「ごちそうになります」とも告げてきたから。


 俺は加奈に「了解」と微笑みながら言葉を返し。


「母さん~。加奈のお母さんが家まで迎えにきてくれるから大丈夫だって~。だから加奈は今日家で食事をして帰るから加奈の分もお願い」と。


 俺はお袋さまへと嘆願をすれば。


「加奈さんのお母さんがここまで迎えにくるって。加奈さんのお家は遠いんじゃないの~?」と。


「あれならば、家のお父さんに遅らすわよ」と、お袋さまが俺に尋ねてきたから。


「加奈~! お前~、お母さんに家まで迎えにきてもらうっていっているけれど。加奈家は何処だ~? 遠いいのならば。家の親父さんに車を出してもらうけれど。加奈~、そちらの方がいいんじゃないかな?」


 俺が階段の下から加奈のことを見上げつつ尋ねると。


「うぅん。大丈夫」と、加奈は自身の首を振れば。


「家のお母さん、帰りにフ〇で買い物するらしいから大丈夫」と、加奈が俺に、いつもの無表情告げてくるから。


「加奈~、お前~。何で、この近くにフ〇ショッピングセンターがあることを知っているのだ?」


 俺は余りにも加奈が、この辺りの地域……。俺の地元周辺のことがわかるから。


『何故だ?』と問えば。


「私の家は川の向こう側だから。この辺りも少しは分かる」


 加奈は俺の問いかけに対して、自身の地元は太田川を挟んだ向かい側の街だと教えてくれた。


「えっ! 加奈って、まさか家が高陽町なのか?」


 俺は少しばかり驚いた顔をしつつ、加奈へと尋ねる。


「うん」


 すると加奈の奴は、俺の問いかけに対して、無表情で直ぐに「うん」と頷き。


「和也、驚いた?」と俺に尋ねてきた。


 だから俺は「うん」と頷き。「そうか、それでお前、加奈は、俺ん家へくることができたのか」と尋ねれば。


「うん、そう、当たり。和也凄い」と、俺のことを褒め称えてくれた。


「ありがとう!」と。


「サンキュウ!」


 俺は少しばかり呆れ声で加奈へとお礼を告げた。


 でもこの後は直ぐに加奈へと説教……。


『何で俺ん家をスマホで探してまで、尋ねてくるのだ。お前は俺のストーカー?』と、俺は憤怒しつつ、加奈へと怒声を浴びせ。


 その語はお尻ペンペンの刑……。


 それも生尻叩きの刑にしてやろうか? と少しばかり思案をしたのだけれど。


 あいつ! 加奈の奴も、俺のことが心配になってきてくれたのだから。


(まあ、いいか)と、俺は思うと。


「母さん、食事の準備ができたら呼んで」と嘆願をすれば。


 俺はあいつ、加奈が待つ、二階の俺の部屋へと向かう。


 そして自身の部屋に入るなり。(えっ! うそ?)と思い。自身の口が開いたまま、少しの間──。


 自身の部屋の前で只茫然と佇んでしまう、失態に陥る。



 ◇◇◇



「御迷惑おかけしました」と。


「山田君、加奈の事をよろしくお願いします」と。


 加奈のお母さんが家のお袋さまと親父さま。でッ、最後に俺へ加奈のことを頼むと告げてきた。


 だから俺は「はい」と元気良く言葉を返したよ。三日前の夜にさ。すると直ぐに加奈から、俺へと。


「じゃ、さようなら。和也」と、無表情ではなく、嬉しそうに微笑みつつ、手を振ってきたよ。


 だから俺も「ばいばい」と「じゃなぁ」


 そして「また学校でな」と振り返して、家の玄関先で別れ。その後は・


「可愛い娘じゃないか、和也」と家の親父さまが、ニヤニヤと意味深に、と言うよりも? いやらしく笑うけれど。


 俺は「そうだね」とだけ、家の親父さまへと言葉を返した。


 でッ、その後は、家の親父さまやお袋さまと会話もすることなく、二階へとあがり。自身の部屋に入るなり「はぁ~」と大きな嘆息を漏らしてしまう。


 だって俺の部屋のあちらこちらに置いてある備品と言うか?


 まあ、机や本棚……。俺の可愛いペットがぬくぬくと入っている室内温室等のあちらこちらに貼っていた。俺と沙紀との思い出のプリクラ写真のシールを加奈は全部黒マジックではなく、殺意を込めた赤マジックで全部塗りつぶしているのだよ。


 俺が先ほど加奈のためにと、真心こめてインスタントコーヒー淹れている最中にだよ。


 何処から出したのか? それとも加奈自身が所持していた真っ赤な油性マジックで、恨み、辛みなのか? 呪い込め、憎悪を込めてなのかは、俺自身にはわからないけれど。沙紀の奴の顔を塗り潰しているから。


 俺も流石に加奈の行動に驚愕して、


「お、おい。加奈……。お前何をしているのだ?」と尋ねたよ。


 でもね、あいつ、加奈の奴は、俺がワナワナと声を震わせ尋ねても。


「和也にはもう私がいるのだから、神宮寺さんの写真は不要よね」と尋ねてくる、ではなく。


 加奈は俺のことを自身の目を細めつつ、睨む。


 そう、加奈の奴は大変に冷たい目をしながら俺のことを睨み呻り、ワン! と鳴くから。


「えっ! いや、あの……。うん、そうだね。加奈の言う通りで、俺には不要な物だから、全部塗りつぶしても構わないよ」、


「あっ、ははは」と、俺は自身の後頭部に手を当てつつ、笑って誤魔化したよ。加奈の顔が、雪女のように冷たく、冷淡で怖いから。


「そう、ありがとう、和也……。これであなたのことを刺さなくてすんだから、私も良かった」と。


 あいつ! 加奈の奴は本気顔で俺に告げてきたから。


(うそだろう?)、(冗談だろう?)、(こいつ何、可笑しなことを言っているのだ?)と、俺は瞬時に悟るのだけれど。


(ああ、そういえば、あいつ、加奈の奴の制服の上着を脱がす時に、妙に重たい気がしたけれど。加奈の制服のポケットにはまさか、あいつのスマホ以外にナイフが忍ばせていたと言う訳じゃないだろうな?)


 俺は、にへらと笑いつつ、そんなことを思ったことを、思い出しつつ、自身の身体をブルブルと震わせ。


「くわばら、くわばら」と独り言を漏らしつつ、加奈が落書きをしたプリクラ写真シールを剥がし始めると。


 トントン!


 ギィー! と、俺の部屋の扉を叩き、開けるから。


(誰だ?)と、俺は思いつつ後ろを振り返る。


 まあ、振り返っても、どうせ家の家族、両親か双子の妹だろうと思うから。


 俺は振り返りながら「何~?」と気だるげに声を漏らしつつ尋ねれば。


「沙紀さんから電話だよ。お兄ちゃん」と。


 俺の妹の美智子が、自身のスマートフォン差し出しながら告げてくるから。


「何で美智子。お前のスマホに沙紀から電話がかかるんだよ?」と。


 俺が怪訝な表情で美智子へと問えば。


「L〇NE交換しているんだもん。沙紀さんとは。だから沙紀さんからL〇NE電話がかかってくるのは当たり前のことだよ。お兄ちゃん」と。


 美智子が、にへらと笑いながら俺へと告げてくるから。


「沙紀が、俺に何だって言っているのだ?」と。


 俺は怪訝、と言うか? 大変に迷惑、面倒くさい顔、表情をしながら、美智子へと尋ねた。


(こいつも、美和子と一緒で、沙紀の奴とL〇NE交換をしていたのか。俺はしらなかった)と。


(何でするんだよ。沙紀の奴とL〇NE交換を。俺といつ別れるかもわからない、と言うか? もう既に俺と沙紀が別れていることは。先ほど夕飯の時に加奈がいたから。こいつらも気がついている訳なのに。何で自身のスマホから沙紀の名を抹消しないのだ? こいつら姉妹、頭が弱いのか?)


 俺が自身の脳裏で思い呟いていた。


「沙紀さん、お兄ちゃんと話しがしたいと言って泣いている」と。


「変わってだって」と告げてくるから。


「何でコイツ泣いているんだ?」と、俺が美智子に尋ねると。


「知らない。沙紀さんに聞いてみれば」と。


 美智子は、にへらと笑いつつ俺に、自身のスマートフォンを手渡してくるから。


「はぁ。何なんだ。こいつは」と。


 俺はあの時、怪訝な表情で悪態をつきつつ、「ほら、かさせ」と美智子から荒々しくスマホを奪えば。


「何だぁ~。神宮寺! 俺に何の用だ?」


 俺は沙紀の阿保へと呻りつつ尋ねてみた。


「しくしく」と、スマートフォンの向こう側から沙紀の泣き声がまず聞こえたら。


「山本さんきていたんでしょう?」


 沙紀が泣きながら俺に尋ねてきたから。


「ああ、そうだけれど。それがどうした? もう新宮司には関係のないことだろう」と。


 俺は沙紀に気だるげに言葉を返せば。


「神宮寺、お前! 調子に乗るな! いい加減にしろよ!」と。


「俺と別れると言いだしたのは神宮寺、お前なの、だから。別れた男のところに二度とL〇NE電話をしてくるなぁっ! 妹のところにもだぁ! もういい加減にしろ! スマホを切るからなぁっ!」


 俺は沙紀へと荒々しく告げ、プチだ! 美智子のスマートフォンの通話を切った! 


 そして美智子へと「ほら、スマホ」と手渡し。


「これで沙紀からは、二度と電話がないと思うぞ」と告げたのだが。


「お兄ちゃんが沙紀さんに対して優しくないから、他の人に盗られるんだよ」と。


 俺が美智子に荒々しくスマートフォンを手渡せば、こいつが何故か、寂しそうに告げきたのだよ。


「はぁ~、どう言う意味だ、美智子?」


 だから俺! あの日の俺はね! 今度はスマホの向こう側に居た沙紀ではなく、自身と対面──。正面に立つ、妹の美智子へと呻りつつ尋ねた。


 するとあいつ、美智子の奴はこうだよ。


「直ぐにお兄ちゃんは怒るのだから」と。


「受験! 受験! 勉強! 勉強って! お兄ちゃんは彼女よりも勉強が大事な訳?」


 美智子が怪訝な表情で俺へと、沙紀よりも大学の受験勉強が大事なのか? と、可笑しな事と言うか?


 こいつ! 美智子の奴は、沙紀からどう言った話しを聞いたかは、あの時の俺は知れないけれど。俺は沙紀に、自分の両親が受験勉強の妨げになるからと。アイツ! 沙紀の奴と! 一年半以上も部屋でイチャイチャした事もない俺と別れろと言われているのだぞ!


 アイツ! 沙紀の奴は、自身の部屋で家庭教師の大学生の兄ちゃんとイチャイチャと、何処までしているのか? までは、俺も解らないけれど。アイツ等の学園内での会話を聞く耳、立てれば。沙紀の奴は、大学生の家庭教師と色々として、受験の妨げに完全になっているのにさ。


 何で俺が、アイツの両親に悪者扱いをされないといけない訳だ?


 俺は、自分が悪く思われたくないから、沙紀の受験勉強の妨げはしてはいないはずだ。


 だからあの日の俺は、自分のことを怪訝な表情で睨みつけて、沙紀を庇う美智子へと。


「美智子、お前は何も知らないのだから。俺と沙紀のことに口を挟むな」と告げ。


「俺は沙紀の両親から、アイツの受験勉強の妨げになっているから別れろと言われ。悪者扱いされているのだよ。俺は沙紀の奴と長電話をしたの付き合い始めて数か月ぐらいで。沙紀の奴が両親に怒られたから直ぐに辞めた。だから沙紀の奴が今長電話をしているのは。アイツの今彼、大学生の兄ちゃんじゃないのか? アイツ学校でも暇さえあれば、メールや電話を午前中は調子よくしていたからな」と。


 俺は美智子に、にへらと笑いつつ告げれば。


「ほら、美智子。俺の部屋から出ていけ」と。


 あの時の俺は、この後、ベッド! 寝床に入って恐ろしい経験をするとは思わないから。妹の美智子へと悪態を尽きつつ、背を押し、自身の部屋から追い出すのだった。



 ◇◇◇




「しくしく」


(……ん? 人の声……)


 あの時の俺……と、言うか? 三日前の俺だけれど。沙紀のクソバカのスマートフォンからの、いい加減な言い訳を聞き、俺自身胸糞が悪くなり。その日の夜は不貞腐れたように睡眠へと入った俺……。また、そのためだろうか? 寝の浅い俺は夜中に、自身の部屋で、自分以外の人の声を耳にして、完全に目覚めた。


 そして声の主……。多分、俺の予想だと、女性の声音でのボソボソと独り言ではなく。多分、俺の勘と、言うか? 俺の聞き間違えではなければ、女性の啜り泣きが、自身の耳へと聞こえるから。


(えっ! 何で、女性の啜り泣きが、俺の部屋から聞こえる訳なのだ?)


 俺は脳裏で呟けば。


(部屋のどの辺りから女性の啜り泣きが聞こえるのだろうか?)


 俺は、こんな事を考えながらあの日! 三日前の夜に、自身の身体を起こし、泣き声はどの辺りからするのか? を確認するために。


 俺は自身の身体を起こそうとすれば、あれだ! これだよ! 俺の身体は世に言う、【金縛り】に遭い。自身の身体を起こせなくなる。


 まあ、なっているからね。「ふんがぁ! ふんがぁ! ふごっ! ふごふご!」と、俺は声を漏らしつつ抗い、暴れたよ。自身のベッドの上で。でもさ? みなも、と言うか?


 自信が金縛りに遭った経験者ならばわかると思うけれど。自身が金縛りに遭っている最中に、『誰か助けてー!』、『助けてくれよー!』、『お願いだー! 頼むよー! 誰かー!』、『美智子、美和! 頼むから兄ちゃんのことを助けてくれー!』と、自身が声を大にして叫び、抗おうが。


 他人が傍から、叫び。抗う、俺の様子を見て、聞いても。俺自身は只、眼を閉じたままの状態で、自分の眉間に皺を寄せているだけで。


 俺自身の声の方も。


『ヒィ、ヒィ』と熱に魘されているような声を漏らすだけだから。俺の隣の部屋で寝ている妹達や親父さま、お袋さまも、俺の異変に気が付かず、只寝ている。


 そう、俺以外の家族の安眠の妨げになるような声等、基本声にでていないみたいだから。


 俺自身が一人で恐怖に堕ちるだけだから。


(も、もしかして、これって金縛り?)と、俺自身も思えば。


(俺の耳に今でも聞こえる女性の啜り泣き声だけれど。それって、もしかしてお化けなのかな?)


 俺は自身の脳裏で、更にこんなくだらないことを思う、じゃないよ!


『本当! 本当に! 本物のお化けが出たぁあああっ!』、


『でたからぁっ! 誰か助けてくれぇえええっ!』と。


 俺自身は、超スーパー大きな声を出し叫び、抗ってみるのだけれど。お化けと言う奴は、俺が以前考えていた物よりも甘くはない。本当に恐ろしい者達だから。


 ミシ、ミシとフローリングがきしむ、と言うか? 誰かが歩いているのと?


 バキ! バキ! と、俺の部屋の天井の四隅……。俺自身は、音の出場所を特定できないけれど。俺の部屋の中でちゃんとしたラップ音もあちらこちらで、生木が割れる音を出してくれるから。


 俺の背筋は一発で凍結──。俺は畏怖! 恐れ慄くのだ! それも金縛りで、俺の身体は動かないはずなのに、震えが出始めるから。


 俺自身は心の中で(身動きとれないのに、何で震えるのだよ)と俺は叫び、嘆くじゃないかも?


 もしかしたら俺自身は、声を大にして叫んでいるのかも知れないけれど。翌日俺は、親父さまやお袋さま、双子の妹達へと、俺は夜中の怪談話を話し、説明をしても。俺の家族には絶叫、嘆願も全然聞こえなかったらしいけれど。


 三日前の俺は、部屋のフローリングがきしむ音……。


 多分誰かが? この世の者ではない誰かが? 俺の方へとゆるりと向かってくる。


 それも相変わらず?


「しくしく」と泣きながらこちらへと向かってきているようだから俺は──!


「(くるな! くるなぁあああっ! 頼むから俺の許へとくるなぁあああっ! こないでくれぇえええっ! 頼むよ! お願いだよ。許してくれ……)」と。


 俺は自身へと向かってくるお化け様へと別に罪を犯した訳ではないけれど。何故か、あの時の俺は、お化けさまに対して、今にも泣き出しそうな情けない声音で嘆願をしながら許しを乞うのだが。


 お化けさまに、生きている者達の気持ちは解らない。悟ることもできないようだから。彼女は「しくしく」と泣きながら、俺のベッドまでくると。彼女の足音やラップ音は止んだから。


(あれ? お化けは消えたのかな?)


 俺は脳裏でこんなことを思えば、自身の身体が動くのかを確認し始める。


(あれ? 俺の身体まだ動かないや……。もしかして俺? まだ金縛りの最中?)


 俺が更に、自身の脳裏でこんなことを思い、呟けば。


 ギィ、ギシ、ギシ! と。


 今度は床、フローリングではなく、俺の身体が横たわる、ベッドの上を人が歩き、きしむ音が。身動きとれない俺の耳へと聞こえてくるから。


 俺はあの日の晩に、ヒヤリ、タラリと、なり。自身の背中から嫌な汗……。


 そう、冷や汗と言うものをタラリ、タラリとかきながら、俺は自身の生唾をゴクリ! と鳴らしつつ、飲み込む。


 それは俺の耳へは聞こえてきたけれど。俺の相手……。世に言うお化け、幽霊さまには聞こえたかどうだかは、俺自身にはわからない。


 だって彼女、お化けのお嬢さま、お姉さまなのか? までは、俺自身にも解らないことだけれど。


 彼女は、「しくしく」と泣きつつ、俺の許──。背後へとお化けさまは、気にすることもなく忍び寄ってくるから。


 もしかして彼女は、自身の耳が悪いようだから、俺の喉の音だけではなく。


「お化けー! くるなぁあああっ! くるなぁあああっ! こないでくれぇえええっ!頼むよぉおおおっ!」と。


 俺は、お化けな、彼女に、自身の背へと忍びよらずにユーターン! 帰って! 帰宅をしてください! と。


 俺はこの後も、何度も嘆願をしたのだよ。


 あの日! 三日前の夜にね!


 だけどお化けのお姉さまは「しくしく」と恨めしそうに涙を流しつつ、俺の背後へと忍び寄るのだ。


 だから俺は本当に生きた心地がしなかったから、自身の両目に涙……。


 そう俺は、乙女のキラキラ涙を目に溜めつつ、ポロポロと流しながら。お化けのお姉さまに対して俺は最後には。


「お化けさま好きにして……。その代わり、俺のことをひとおもいに殺してね。お願いだから」と告げた記憶があるよ。


 頼むから内気な俺のことをいたぶり、弄び。まあ、遊ばないで欲しいとね、嘆願をした。


 でもね、お化けのお姉さまは、そんな俺の気持ちなどお構いなしでね。俺の背の後ろに立てば。彼女は、俺の容姿が自分の好みなのかを、確認しているのかな?


 少しばかりの間、「しくしく」と泣いてはいたけれど。お化けのお姉さまの身動きは完全に止まる。


 でもね、少しばかり時計の針が、カチ、カチ、カチ……と音を、俺の耳へと大袈裟に聞こえさせればね。


 彼女! お化けのお姉さまは──! 俺の真横へと座り……だけじゃないよ。


 彼女、お姉さまも、俺の真横で添い寝……だけならばよかったけれど。彼女さ? とても大胆な女性御人でね。俺に抱きついてきたよ。それもさ?


 お化けの彼女は、生前はとても優しく、甘えっ娘だったのかな? 俺の背や首筋に頬ずりやキス……。


 それも幽霊さまの氷のように冷たい身体で抱きつき、俺に優艶に甘えてくるから。


「ヒィ~!」と俺は変な声を出しつつ、ピクン! と反応──! 自身の身体を海老のように逸らしたと思う?


 た、多分ね?


 俺自身もあの時は、本当によく気を失わなかったな? と思うぐらい驚愕し、動揺をしたからね。余り覚えてはいないのだ。


 だから本当にごめんね!


 でもさ、お化け! 幽霊のお姉さま!? 俺が彼女に抱きつかれ、大変に驚愕! 動揺をした様子を彼女に見せてもさ。俺のことを解放……。


 そう、あの日! あの時の俺は! 心の底から彼女! 幽霊のお姉さまのことが怖くて、恐れ慄き、震えていたのにさ。俺のことを全然許してはくれない、どころか? ますます彼女はエスカレート!


 だって幽霊のお姉さまは、俺が着衣をしているパジャマと肌着……。


 まあ、背中部分だけれど。俺の柔肌? を出して。彼女は俺の背へと、自身の氷のように冷たい頬で頬ずり……。


 そしてキス……。


 自身の更に冷たい舌を使用してペロペロと舐め始めるのだ。


 だから俺は更に「うぎゃぁ~!」、「ぎゃぁあああっ!」、「助けてぇえええっ!」と。


「父さんー! 母さんー!」、「美和でも! 美智子でもいいから。俺のことを今直ぐ助けてくれぇえええっ!」、「お願いだからぁあああっ!」と叫び、嘆願した。


 まあ、翌朝、四人に、俺の部屋にお化けが出て、金縛りに遭った。だから俺は四人に何度も大声で助けを呼んだ! なのに? 誰も俺の部屋へと駆けつけてはくれなかった! プンプン! と、俺が家族に不満を漏らしても、誰も知らない。聞こえなかったと。長男の俺に対して薄情なことを告げてきたぐらいだから。


 俺がいくら幽霊のお姉さんから逃れ、解放をしてもらうために、声を大にして命乞いをしようが。


 彼女、幽霊のお姉さんは、俺の命乞いに対して聞く耳持たず……どころか?


 俺が「ひえぇえええっ!」、「ひやぁあああっ!」、「ふにゅ~!」と変な声を出す度に、『ガブリ!』と噛みつかれ。幽霊のお姉さまら無言で『黙れ!』と脅され続けたよ。


 だから俺は幽霊のお姉さまに、自身の身体を、彼女の心行くまで貪られ、堪能された。


 でッ、俺自身も幽霊のお姉さまに弄ばれる続ける中で、最後には気を失い、堕ちてしまった。


 だから最後は何をされたのかは、俺自身も全く覚えていないほど。俺は三日前に恐ろしい目に遭う。


 でも俺が恐ろしい目に遭ったのは、その日だけではなく翌日もね。俺は大変に酷い目に遭う。



 ◇◇◇



「母さん、悪い。今日も学校を休むわ。だから学校への電話はおねがい」と。


 俺は二日前、自身の部屋に置いてあるダ〇ソーの百円だったかな? それとも二百円だったかな? 俺自身も結構前に購入したから覚えていないのだけれど。部屋の置き鏡で、自身の顔……。


 そう、三日前? それとも二日前になるのかな? 俺自身も時計で、時間を確認しなかったのでよく解らないけれど。お化けのお姉さまが出た! 出現した翌朝に! 自身の顔色が悪く。げっそりとした顔を鏡で見詰めつつ。我が家のお袋さまに嘆願をしたのだよ。


 昨晩に俺の部屋へと現れたお化けのお姉さまに俺は多分? 生気を吸われたと思うから。自身の体調が余りにも優れないので、学校を休ませて欲しいと。


「和也~? あんた~、本当に大丈夫~? もしも身体の調子が悪いのならば。絵美ちゃんの所の病院へと行ってみるかい~?」


 家のお袋さまは、階段の下から、俺に病院へといってみるか? と尋ねてきたのだが。


「いや~、母さん。俺の体調不良は、先ほど告げ、説明をした通りだよ。昨晩、俺の枕元に出た、女性のお化けに。俺は生気を吸われたがために、体調不良になっている奴だから。俺病院へといっても治療の使用がないと。病院の先生が困るだけだから。病院へはいかない」と。


 俺が二階の自身の部屋から気だるげに、階段の下で叫ぶ、お袋さまへと告げれば。


「えぇ、えええっ! 和也! あんたぁ~! 女性のお化けに精気を吸われたと言う事は? 女性のお化けとしたのかい。和也! あんたわぁ~?」


 家のお袋さまが俺に対して、生気は生気でも、違いを言うから。


「母さんー! 俺は別に、女性のお化けとはしていないし~。いい加減にしてくれ~!」と。


 俺が二日前の朝に憤怒しつつ、お袋さまに茶化さないでくれ。俺さまは真剣に悩み、考えているのだからと、絶叫交じりで叫び、告げれば。


「でも和也、あんた~。女性のお化けが甘えてきたかから、自分は恐ろしくなり、気絶したと言っていたじゃない……。それに和也、あんたは~。ふるちんでパンツも履いていない状態だったと言っていたじゃない。朝目が覚めたら……」と。


 家のお袋さまは、あの日の朝は。最初は階段の下からケラケラと笑いつつ、俺を揶揄しながら告げていたけれど。


 次の話しは、真剣な声音で、俺へと告げてくれば。


「和也、あんた。もしかすると? あんたの大事な所、腐って無くなるかもよ?」と。


 家のお袋さまは、更に真剣な声音で俺へと告げ、覚悟をするようにと、二日前に。俺のお〇んこが無くなる宣言をしてきた。


 だから二日前の俺は、お袋さまの話しを聞いて、「どうしよう?」と。


「お袋~。そんなことってマジであるの?」と、俺は今にも泣き出しそうな声音で、家のお袋さまに尋ねたよ。


 俺自身、本当に恐ろしくて仕方がないからね。だってさ、自分のあれが! 何が! 病原菌に侵され、腐り、落ちると、家のお袋さまが言ってきたからね。俺は真剣に悩み、涙がぽろぽろと落ちそうになったよ。


 でッ、そんな俺と言うか? 家のお袋さまに、お化けとあんなこと。こんなこと。遭ったでしょう? と。罪を犯したかも者の、自身の何が落ちると言うことはあるのか? と、尋ねた俺にお袋さまは。


「母さんが幼い頃に読んだお化けの実話の本の中にね。仕事帰りに良く見かける。夜の公衆電話ボックスの前に一人で立っている女性が居たらしいから。ある日気になって、『こんな場所で立っていてもタクシーは来ないから。次の賑やかな街まで送っていってあげるよ』と。その男の人は若い薄着の女性に声をかけたらしい。すると女性は『ではお願いします』と、男性に告げ。後部座席に乗り込んで来たらしい」と。


 家のお袋さまは、自身が幼い頃に読んだ怪談話を二階の、自身の部屋から顔を出す、俺へと話してくれたから。


「そうなんだ?」と、俺が言葉を返せば。


「うん」とお袋さまは頷き。


「まあ、良いんじゃない? 和也、あんたも今迄好き放題をしてきて、女の子達を沢山泣かしてきた訳だから」と。


 家のお袋さまは、しんみりと落ち込んで、ではなく。「あっ、ははは」と笑いながら。


 そう、この俺を産んだ母親のくせに、完全に他人行儀……。俺のような、女泣かせのナンパ男には、いいクスリだ! とでも言いたい様子で告げてくるから。


「俺別に女に対して好き放題はしていないから」と。


「俺どちらかと言えば、いつも泣かされている方だから」と、俺はお袋さまに荒々しく告げるのだが。


「嘘~? 冗談でしょう、和也?」


 俺はお袋さまから、ケラケラと笑われつつ言葉を返されるから。


 ムカ~! だよ。


 俺はあの日の朝、自身の顔を真っ赤にさせながら。


「俺が誰と、誰を泣かしたんだよ!」と。


 俺が更にお袋さまへと罵声を吐けば。


「絵美ちゃんと神宮寺さんだっけ? あっ! それと今度は山本さんかな……? あっ! 未だ居たは? 和也、あんたの年上の彼女……。結構しつこく電話が家にかかってきたもね。あんたが居ないかって?」と。


 家のお袋さまは、その他にも、あの娘? この娘? と。俺が今まで交際してきた彼女達の名前をあげてきたけれど。


 俺が別に悪い訳ではないからと。俺が豚さんになってブゥブゥと不満を漏らせば。


「まあ、どっちにしても和也。あんたの自業自得だから、自分で考えなさい」と。


「もしかして、昨晩出たお化けも。和也、あんたの元カノかも知れないよ?」と。


 家のお袋さまが大変に恐ろしいことを俺に告げてくるから。


「えっ! うそ~?」と。


 俺は二日前の朝に、二階からお袋さまへと驚愕しつつ、言葉を返した記憶がある。



 ◇◇◇



『和也、大丈夫?』と。


『何処か悪いの?』とも、加奈の奴が二日前に、学園を休んだ俺へとメールをしきりに送ってきたよ。もう完全に俺の彼女気分でさ。


 でッ、最後には『もしかして未だ新宮寺さんの事を気にしているの?』と、加奈は俺へと意味深にL〇NEで尋ねてきた。


 でも、俺が二日前に学校を休んだのは、沙紀のことが気になるとか? 加奈が三日前に俺の家へとやってきて、優艶に絡んできたことが迷惑だった? と。俺に尋ねてきたり。あのことは、余り気にしなくてもいいから。私に気を遣い。遠慮しなくてよいから。加奈は学校にきてくれと。俺にやたらと気を遣い、L〇NEメールをくれたけれど。


 まあ、みなも知っての通りで、俺が二日目に学校を休んだのは。前の日の夜に、俺の部屋へとお化けが現れて、精気を……。じゃなかった。(笑)


 俺の生気を吸い尽くしていくから。俺は体調不良になった訳で。別に加奈が原因ではないから。


『別に加奈は、俺の体調不良は気にしなくていいよ。俺自身病院へといったら、病院の先生に風邪だから、しっかりと休養すれば直ぐに良くなると言われたから大丈夫だって』と、加奈にL〇NEを送れば。


『本当に?』と。


『ああ、良かった』と。


『じゃ、今日は和也の家に寄らなくても大丈夫だね?』と。


『お気をつけて』、


『愛している』と加奈は、ニコちゃんマークを添えて、俺へとL〇NEを送ってきたから。


(あいつ、また俺の家にくるつもりだったのか?)、


(加奈のお母さんがこっちまで迎えにきてくれると言っても。渋滞かかるから大変だぞ)と。


 俺、あの日は、前の晩に、お化けに生気を吸われたし。お〇んこなくなるかも知れない疑惑があるから。二日前の俺は元気、体力の方はないぞ! とも思い。



 まあ、加奈が俺に優しいから、沙紀のことはすっかり忘れて、一人和んでいると。俺のスマートフォンもお知らせが光るから。


(あれ?)と思い。


 俺は自身のスマートフォンを眺めた。


(あれ? 大田じゃないか? どうしたんだろう、あいつ?)


 まあ、二日前に、俺はこんなことを思いながら、自身のスマートフォンの画面を覗き、ロックを外して、L〇NEを開ければ。やはり大田からL〇NEメールが珍しくきているから。


 俺は自身の首を傾げつつ、(何だろう?)と思いながら更に進み。大田が俺宛に送ってきた文章を読めば。


『(山田、どうしたの? 学校を休むのが、今日で二日目だけれど。そんなに体調が悪いの?』と。


『山田、もしかして? 沙紀の件が気になるから学校に来ないの?』と。


 俺の体調不良の心配と。俺がまだ沙紀との別れの件を気にしているのか?  と言った感じの内容なのだが。


 まあ、俺自身は、沙紀の件は、全部忘れた! 気にもしていない! と言えば強がりと。嘘偽りになるから。そこまでは言わないけれど。まあ、俺は加奈の強引さに押し負けして、何とも言い難い関係になったから。


 俺自身が沙紀のことを考えるゆとりが今はないのと。それと以前に説明をした通りで、俺を捨て他人の物になったような女に、俺はもう興味はないから、大田が心配するようなことはないのと。


 俺の体調不良は、お化けに生気を吸われたための体調不良なのだと。俺は真剣な声で、大田に告げ、説明をすることもできないから。


「(大田、俺は只の風邪だと病院の先生に言われたから。風が完治できたら学園へと戻ってくるから、俺のことは心配しなくても大丈夫だぞ)」と。


 俺が昼寝後の午後……。


 まあ、夕焼け、こやけの歌の音楽やフラワーフェスティバルの音楽が流れる前に気がつき、大田へとメールを送れば。


〈ピン、ポ~ン!〉と。


 家の玄関のチャイムが鳴るから。


(ん? 誰だろう?)


 俺はこんなことを思いつつ二日前に大田蘭へと、夕焼け、こやけの、赤とんぼの前にメールを返した。



 ◇◇◇



「あ、あの、初めまして……。私は、あの山田君と同じクラスの大田と言います……」と、あいつの大変に緊張した声が、二階の俺の耳へと聞こえれば。


 あいつ! 大田の奴は、家のお袋さまに対して、緊張が解けぬままの声音でね。


「あ、あの、今日も山田君が学校を休まれたので、彼の身体が心配……。気になって、お見舞いにきたのですが。山田君は起きていますか?」と。


 まあ、二日前の大田の奴は、何と可愛いと言うか? あいつもしかして、ボーイフレンドと呼ばれる男友達の家に遊びにきたのは、俺が初めてなのかも知れないな?


 だってあいつ! 大田の奴は! 家のお袋さまに対して、余りにも緊張した様子で、自分のことをアピールしつつ、俺のお見舞いにきたのだと告げたから。


 俺が二階で聞いていても、大田の奴初心だな、と思いつつ。自身の顔をニヤケ面にした記憶があるからねと説明をすれば。


 俺自身が二日前に思ったぐらいだから。家のお袋さまも思う訳で、『ニヤニヤ』と家のお袋さまは、まだ初心で可愛い様子を魅せる大田に対して、


「和也ならば二階にいるから上がって」と。


 やはり大田の時も加奈の時と同じように、息子のガールフレンド! まあ、彼女の取り扱いに馴れている母らしい様子で大田に、二階の自分の部屋に俺はいるから上がりなさい! と。


 あの人は、「ふっ、ふふふ」と笑いながら太田へと告げたらしい。俺が後で大田! 蘭から聞かされ、凄く恥ずかしかったのだと。


 俺が初めて見る蘭の可愛さ……。


 そう、いつもの俺達の『大田の姉御!』ではない。JKの年頃の少女らしい仕草を俺は蘭から魅せられ。自身のハートがドキュン! となった記憶があるから。二日後の俺は更に沙紀どころではない。


 だから調子に乗って、学校近くに車を停車させ、俺の感に触ることをした沙紀と、アイツの彼氏に俺は悪態をついて、乱闘になりそうになった。俺自身があいつ、沙紀のことをもう、どうでもいいと思っているのと。


 まあ、こんな感じだよ。家のお袋さまが、年齢のわりに色気があり、俺達よりも年上に見える蘭の奴を俺の部屋へと平然とあげるものだから。


 蘭の奴は、この通り、俺に甘えてきては、事ある毎にキスをしては甘えてくる状態へと陥っている訳で。


 自身の瞳をお酒にでも酔ったように潤ませつつ、何度も優艶に甘えてくるから、俺はどうしよう? となった訳で。


 だって俺は、加奈から平然とキスをされ、アイラブユー! と言われる立場へと、もう既になっていたから。


『大田悪い。俺はもう、山本加奈の物で……。本当にすまない」と。


 俺は二日前に蘭へと加奈の件を包み隠さず説明をすれば。その後俺は蘭に強引に押し倒され、優艶に甘えられ。俺は蘭とも平然とキスが出来……。蘭のこの傲慢過ぎるぐらい、バカデカイオ〇パイを、以前のように。


『大田の姉御、少しでいいから、俺に愛の恵みで、触れ触らせてくれんさい』と、広島弁でニヤニヤ、自身の顔を緩ませ、鼻の下を伸ばし、長くしながら。


『チョン!』、


『チョン、チョン』と先を突いたり。


『ワシワシ』と握らせてもらうのではなく。このようにいつでもお好きな時に触ってくれんさい! 状態へと陥ってしまったから。


 俺は本当にどうしよう? どうしたらいい? と思うのだが。


 今回マジで蘭の奴の生乳みたけれど! マジでこいつの物はね、爆乳! オ〇パイがでかい!


 もうそれこそ? 沙紀や加奈と比べても。グラビアアイドル並みにでかくて、スタイルも本当にいいのだ! 蘭の奴は。


 それが『和也、うちはあなたの物よ』と言われ、『いつでも好きにしていいからね』と甘えながら言われた俺だから。流石に俺自身も、他人に気が多いと言われようが。こいつも手放すのが欲しい……と言うか? 手放したくはない。


 それと蘭は、加奈と三人で仲良く、美味くやろうとも俺に告げ。


「うちは今後和也のストーカーになるから。和也に彼女が出来ようが。和也が結婚して奥さんができても。うちは和也のストーカーだから一生ついて回るからね」、


「ふっ、ふふふ」と妖艶に薄ら笑いも浮かべてくる蘭なのだが。何故蘭が加奈と三人で仲良く、永遠に暮らしていきましょうと告げてきたかと申せば?


 先ほど俺に加奈からスマートフォンへとL〇NE電話が鳴り、響き、送信者【山本加奈】と名前が画面に記載されれば。


「和也、山本さんからの電話でしょ?」


 あいつ、蘭の奴が、俺へと二日前に尋ねるから。


「えっ、いや、あの……」と。


 俺は慌てて、自身のスマホを握りながら、画面を隠しつつ、蘭へと言葉を詰まらせながらも言葉を返した。


「そ、そうだけれども。それがどうかしたのか、蘭?」と言葉も返したと思うよ?


 でも俺自身も、まさか加奈から、大した時間も開いてもいないのに再度電話がかかるから。俺自身の顔も本当に引き攣り、強張っていたと思う?


 だから俺は蘭に、にへらと笑いつつ言葉を返し。自身のスマートフォンを慌てて隠した。


 でも、そんな俺に蘭は飛びかかるように抱きつきつつ、俺がスマホを握る腕を掴み。俺の腕から強引にスマートフォンをとれば。ロックのかかっていない。間正直な俺のスマホちゃんだから。またそのことを知っている蘭は、俺からスマートフォンを強引に奪い、取り上げると。


 蘭の奴は、俺の代わりに加奈の電話に、「もしも、山本さん」と出て。その後二人は電話で、『別れろ!』、『別れない!』で口論、口喧嘩を始め、終われば。


「はぁ、はぁ」と息荒く、「和也?」と俺のことを呼ぶから。


「な、何?」、「な、何かな、蘭?」と。


 俺は自身の顔を強張らせつつ、にへらと笑い。それもちゃんと笑い誤魔化しながら、蘭へと言葉を返せば。


「今後和也の事は、山本さんと共有になったから」と告げてくるから。


「えっ!?」と俺は声を漏らし。


「えぇ、えええっ! うそだろう~?」と改まって、俺が驚愕しながら絶叫! 最後に蘭へと尋ねるのだが。


 あいつ! 蘭の奴は、直ぐに俺のことを睨み、威圧……。責任はちゃんととってもらうからと言った顔をしながら。


「和也、別に良いよね?」と低く、重たい声音で告げてくるから。


「う、うん……。お前達二人が、それでいいなら」と。


 俺は二日前に、下を向きつつ蘭へと言葉を返した。


 でッ、言葉を返せば。あいつ、蘭の傲慢過ぎるぐらい大きな胸の谷間に再度顔を埋め、悪戯してもよい許可を得たから俺は、直ぐに御機嫌がよくなり。蘭の奴に甘え、貪った!


 ああ、貪ったよ。悪いか、お前達? 俺は二日前に、ハーレム王になる決意をしたのだ!


 だから俺に好意のある女子達は! みんな俺の物だ! わっ、はははっ! と。


 まあ、こんな感じで強気でいる俺なのだけれど。実はさ? その日もさ? 俺の許……。


 そう、ラブコメの主人公さまへと昇りつめている俺への許へとまた事件、厄災が訪れるのだ。深夜になればね。また俺の枕元に立つんだよ。お化けのお姉さんがね。そして今度は、こんな恨み辛みを俺に彼女は告げてきた。


「うぅ、ううう。裏切り者……。裏切り者……。お前の事は絶対に許さない。許さない。七代まで祟ってやる。祟ってやるからな」とね。


 それもさ、昨日は、俺の背から、自身の冷たい身体……。


 そう、雪女のような冷い肢体で、俺に抱きつき甘えていた。


『和也』、『和也~』、『和也、愛している~。いるからね~』と。


『許して』、『許して~』、『許して和也~』と、啜り泣きしながら。幽霊のお姉さんはまるで、この俺さまのことを知っている者! 知人のように懺悔しつつ許しを乞うてきたのに。


 今日の彼女! お姉さま! お化け! 幽霊さまは! 一味も! 二味も! 違うのだよ。


 最初はさ、幽霊のお姉さまも、昨日のように俺の背に、自身の冷たい肢体で抱きついてきた。


 まあ、抱きついてきたのだ。セオリー通りにね。だから俺は、三日前の晩の通りに「ひっ!」と、何とも情けなく、か弱い。女の子みたいな、感じやすい声を漏らし。自身の身体をブルブルと震わせ、幽霊のお姉さまから退避! 逃げようと試みる。


 でも、みなさんの知っている通りで、この手! あの手! 睡眠の最中に、叩き起こされ、お化けが出れば、必ず金縛りに遭うといった感じだからね。


 俺はお化けのお姉さまから回避や逃避──。


 そう、逃げるに、逃げられない状態だから。まあ、この通りだよ! 俺の背中に、自身の氷のように冷たい肢体で抱きつき。その後は、俺の背! 後方から! 俺の首を絞めてきて、お化けのお姉さまは悪態振りだ。


「和也~、殺してやる~! 殺してやる~!」と。


「うらめしや~、うらめしや~」と唸りながら俺に不満を告げ、首を絞めてくるから。


『貴女の背後に飯屋はないでしょう?』と俺は、自身の首を、氷のように冷たい手で握り、閉めてくるお化けのお姉さんへと悪態をつきたい衝動に駆られるのだが。


 あの時! 二日前の俺は、それどころではなく。彼女! まあ、幽霊のお姉さまだけれど。彼女の大変に冷たい、雪女のような手で、首を絞められている俺だからね。俺自身の意識もそんなに長くはない。まあ、持たないから。


 俺はお化けのお姉さまに、自身は殺される! まあ、殺されたと! あの日は思ったほど。俺自身も、自分の口から「あわあわ」と声を出しつつ、泡と涎を垂らしつつ。俺は不甲斐無く、意識を飛ばし、あの世へと行かずに済んだけれど。


 それでも俺自身は、意識は遠のき、無くなり。朝まで目を開けられない状態でね。俺がいざ朝目が覚めると、自身が失禁していることに気がつき。家のお袋さまや双子の妹達から。


「和也~、どうしたの~? 高校生にもなってお寝症~?」と。


「まだまだ、坊やね」、


「ふっ、ふふふ」と、俺はお袋さまに侮られ、嘲笑いの刑に遭い。


「和也~、お寝症布団は、自分で干してね~。それも近所の人達や隣の由美ちゃんに見られたら、『これは俺がした! 漏らした! お寝所だ!』と、ちゃんと報告するのよ。和也」とまで、俺はお袋さまに揶揄され、更に侮られてしまう。


 でも、俺のことを侮り、嘲笑い。揶揄するの、家のお袋さまだけではない。俺には双子の妹達がいるからさ。


「うわぁ~、一兄がお寝症~、お漏らししている~」と、美和子が驚愕しながら、俺の濡れた布団を見て、声を大にして叫べば。


「うわぁ~、きちゃないよ~。一兄ちゃんは~」と、美智子は俺のことをゴミ扱いをすれば。


「もう一兄ちゃんは~。高校生にもなってお寝症するなんて、本当に大丈夫?」と。


「私、以前から一兄ちゃんの事、頭が可笑しい、変な人だと思っていたけれど。やっぱり可笑しいんだ~。一兄ちゃんは~」と、驚愕したかと思えば。



 その後は、「わっ、ははは」と、自身のお腹を押さえつつ高笑いに、嘲笑いを始めるから。


 そんな美智子の様子を美和子は見て確認すれば俺の方へと視線を変え。


「一兄は女の人ばかりを泣かすから、お化けも出るし。お寝症もする羽目になるのだよ」と。


 俺のことを諫めつつ、ちゃんと嘲笑う、悪態をついてくる。


 でも、俺は基本、今回の沙紀の件も含め、元カノに泣かされることは多々遭った。情けない男だから。


「はぁ~、美和子~! 俺がいつ女~! 彼女を泣かしたぁ~!?」と呻り、吠え、威嚇をすれば。


「ほうらぁ~、直ぐに一兄は吠える。吠えるのだから。ワンワンと野良犬みたいに」、


「ねぇ、美智子やママもそう思うでしょう?」と。


 この場! その場! 俺の部屋にいる! いて! 俺もお化けが出たから怖くて失禁をしただけなのに。労りの言葉ではなく。この俺さまのことを妙に嘲笑う、メンバー、家族達へと、美和子のアホは問うものだから。


 俺へと返る言葉、台詞はこの通りなのだ。



 ◇◇◇


「美和子の言う通りで、ママもね。和也は、自分の息子だけれど。本当に酷い男だと思うな? 私が学生の時ならば、絶対に付き合わない男性、№1って感じかな?」と。


 こいつ! と、言うか? まあ、俺のお袋さまの癖に、こんな酷いこと。俺にお袋さまは二日前に、ケラケラと自身の息子を侮り、嘲笑いながら告げてきたのだ。


 だから俺も、お袋さまに『沙紀の件は、最初に俺を振ったのはアイツで! アイツは、俺以外の男に、女の子の大事な物をやった癖に。出戻りしたいと、アホなことを俺にほざくから。俺はだめだ! 許さない! お前が乙女をプレゼントした、あの大学生の家庭教師に責任をとってもらい。今後は二人仲良く余生を過ごしていけばいいだろうが!?』と告げただけだから。俺自身は悪くはないのだ! と告げ、説明をしようとすれば。


「ママね、絵美ちゃんの件でも和也は、本当に酷い男。情けない男。どうしようもない男だと思ったもの」と。


 俺のお袋さまは、沙紀の件ではなく。俺が中学生の頃に付き合っていた幼馴染の絵美の件……。


 そう、中学を卒業後、急に音信不通……とまではいかないけれど。俺が絵美へと電話をしても大変に忙しそう、と言うか? 大変に嫌! 困っている! と言った声音で電話に出ては。彼氏の俺をあしらい、悪態をついてきて。最後にはL〇NE電話もメールもしてこない。かけても反応が無くなったから。


 俺と絵美は自然消滅をしたはずなのに。家のお袋さまは、絵美のことが可哀想と嘆くから。


 俺は『お袋、あのな?』と声をかけようとすれば。


「えっ! ママは絵美さん推しなんだ?」


 美和子が驚愕しながら、お袋さまへと尋ねると。


「そうよ~! ママはやはり、小さい頃から知っている、絵美ちゃん推しよ~」と、ニコニコと満身の笑みを浮かべつつ、驚愕した顔のままの美和子へと言葉を返せば。


「美和子は、大変に驚いているようだけれど。絵美ちゃん推しではないの?」と、自身の首を傾げ、考える人へとなりつつ尋ねると。


「うん」と美和子は頷き。


「私、別に絵美さんの事が嫌いではないけれど。昔から、私絵美さんとは、ほとんど会話もした事も無いから。私と美智子の二人は、大変に仲の良い。L〇NE友達でもある沙紀さんかな……? ねぇ、美智子?」と。


 自身の双子の妹になる美智子へと美和子は、少し困った顔をしつつ、にへらと笑いながら尋ねる。


「うん、美和の言う通りで、私もやはり沙紀さん推しかな? 仲が良いからね」と。


 家のお袋さまに、俺の双子の妹二人は。俺の中坊の頃の彼女、絵美ではなく。俺を平然と捨てて、家庭教師の物になり。また阿保のように俺の許へと帰りたい。復帰したいと、ばかげたことをほざいている、沙紀推しだと。


 まあ、三人揃って、家の女共は、俺の目の前でふざけたことを言いつつ。その後もあぁだの、こうだのと、口論を始め出すから。二日前の俺は、三人に対して「いい加減にしてくれ!」と荒々しく告げ。


「俺は、沙紀や絵美とは、復縁する気は一切無い!」と荒々しく告げ。


「あいつら二人は、揃って俺のことを捨てたんだ!」と、俺は三人に吠えると。


「そんな信用の無い女と俺は、再度付き合う気はないの」と、プンプンと呟き。


「俺達のことは放っておいてくれ……。特に俺は今、加奈と蘭の件で頭が痛いのだから」と、家の女共に告げると。


 俺は、その後も、家の女共が。俺へと不満を漏らしてきたけれど。俺は無視して、自身の失禁で濡らした布団を、近所の目を気にしながら干し。その日も学校を休むから。


 俺は計三日も休むことになるから、昨日も大変な目に遭う。



 ◇◇◇



 ピンポーン!


「…………」


 ピンポーン! ピンポーン!


(……ん? あれ? 誰も家にいないのか?)と俺は思えば。


「(あっ! 蘭、ごねん。人がきたみたいだ)」と。


 俺はL〇NE電話で会話をしている相手、蘭へと告げれば。


「(俺の家、今誰もいないみたいだから、出るわ)」と告げる。


「(明日は学校に来るよね?)」と、蘭が大変に心配をした声音で、昨日俺へと尋ねてきた。


「(明日には風は治ると思うから。学校の方へはちゃんといくから大丈夫だ)」と。


 俺は昨日だけで加奈と蘭の二人に、立て続けにL〇NE電話がかかり、昨日は何故、学園を休んだのか? と問われ。


 俺は夜にお化けがでて気を失い。失禁をしてしまった。


 だから恥ずかしいから、学園をさぼった! と言うことはないけれど。俺のお袋さまや双子の妹二人に揶揄され、何だか面白くはない。気分が優れなくなったから、学園を休んだのだ! それが悪いか!? と。


 俺さまは二人に告げることもできないから、昨日も学園の方は風で休んだのだ! と告げ、説明をすれば。


『(そう、お大事に)』と。


『(そうなんだ~)』で、ことが終わったから。俺は蘭とイチャイチャ、ラブラブな話しをしつつ、ケラケラ笑っていると。


 俺以外は誰もいない家の玄関のベルを「ピンポーン!」、「ピンポーン!」と、今も連続で鳴らし、帰ろうとしない訪問者が、玄関にきているみたいだから。


 俺は蘭に、L〇NE電話を切ると告げ。


「(蘭、また明日な~)」と告げ、スマートフォン切れば。俺は自身の机の上にスマートフォンを置いて、自身の部屋から出て、階段を降り、玄関へと向かう。


 そして玄関へと俺は到着すれば、家の玄関の鍵をガチャガチャと明け。


「は~い。どなた~? 家の両親は今いませんが。何用ですか~?」と。


 自身の脳裏で、(押し売りならばお断り~。余りしつこいようならば。俺は鉄拳制裁を食らわすよ~)と思いつつ。


 俺は家の玄関の扉を開けると! そこは雪国でした! とはならずに。


「和也!」と女性の声──!


 それも、俺の脳や耳が覚えている少女の声音で聞こえるから。


「え、絵美……」と、俺は唖然、呆然としながら、家の玄関に立つ少女……。


 そう俺の、中学生の頃の元カノさまへと呟けば。


「和也!」と、絵美は以前と変わらない勢いある声音で、ズシズシ! と俺に迫り──。後ずさりを始める俺について玄関内へと入ってくるから。


「え、絵美……。な、何でお前が?」と。少しばかり時間も経ち、我に返った俺が元カノじゃないか? 俺の元カノは沙紀のアホだから、絵美は元々カノさまだから。俺は元々カノさまへとうわずった声音で、自身の顔色を変えながら尋ねると。


「先程お母さんと会ったの」と。


 あいつ、絵美の奴が昨日、俺に告げてきた。


 だから俺は絵美へと「お前、母さんと会ったのか?」と尋ねると。


「うん」とあいつは頷き。


「あがるね、和也」と絵美は俺へと告げると。昔のあいつらしく、ウムも言わせない勢いで、俺に告げ。家の中……。俺の部屋へと向かうから。


「お、おい! ちょ、ちょっと待て絵美……」


 俺は、自身の履いているスニーカーを脱いで家に上がり。俺の部屋へと向かう絵美……。


 自身のお尻をフリフリしながら階段へと向かい。登り始めたあいつへと昨日俺は慌てて待つようにと告げる。


 でもあいつ! 絵美の奴は、自身の背後から、顔色を変えつつ、トカゲの尻尾のようについて、階段を昇りつつ自分へと尋ねる、俺の言葉……呼びかけに対して、完全に無視……。


 素知らぬ振りをしながら、昔のように俺の部屋の入り口へと到着すれば。


 ドーン! と勢い良く、部屋の扉を開け。室内へと侵入──。俺の部屋に入るなり。部屋の中をジロジロと、自身の小さな頭を動かしつつ、部屋内を探索し始めるから。


 俺は(何か嫌だな)と、最初は不快感を募らせる。そして時間が経てば。


(何か、絵美に見られて不味い物が置いてなかったけぇ?)と。


 俺は自身の脳裏で呟きつつ、顔色を変え、部屋の中をソワソワと落ち着きなく見渡し始める。


「和也、何処から出るの?」


 そんな俺に対して絵美の奴が急に尋ねてきた。


 だから俺は「何が?」と言葉を返せば。


「お化けよ! お化け! 私、お母さんから聞いたのだから……。でるんでしょう、この部屋に? 女性のお化けが?」と。


 絵美が俺に、事細かく尋ねてきた。


(うぅ、うううっ。くそ、母さんは、絵美に余計なことを言ったな)と。


 自身の脳裏で呻り。


(あの、くそババ~。多分絵美に、俺が失禁したこともばらしただろうな?)と。


 俺は更に自身の脳裏で、ガルルと呻り、ワンワンと吠えるから。俺の顔は大変に不機嫌極まりない顔へと変貌していたみたいでね。


 昨日、絵美が数年振りに、俺の部屋へ来たのにさ。


 だから絵美の奴は、お化けのお姉さまの出る場所を探索する行為を辞め。俺の顔をジロリ! と見詰めるではなく。


 俺の顔を昔のように、自身の眉間に皴を寄せ、睨みつけてくれば。


「和也は、私が来たら、不満な訳?」と、俺に尋ねてくれば。


 バチンだ!


 絵美の奴は、俺にウムも言わせないぐらい素早く、頬をビンタ! してきた。


「えっ!」


 だから俺の口から驚嘆は漏れるが直ぐに。


「絵美ー! 何でお前は、理由もなしに俺の頬を殴るんだ!」と。


 親父に一杯殴られたことがある俺だけれど。直ぐに自身の脳裏で、あの有名なSFロボットアニメの主人公がサブキャラの男性に殴られ、悪態をつく場面を俺は呑気に思い出しつつ、絵美の阿保に不満を罵声すれば。


「あの娘と別れたのでしょう、和也は?」と。


 絵美は今度は、先ほどまでの勢いが伏せ、大人しく、小声で俺に尋ねてきた。


「う、うん」


 だから俺は歯切れの悪い口調で絵美へと言葉を返し、下を向けば。


「何で電話かメールくれないの?」と。


「私、待っていたのよ。和也……」


 絵美が悲しそうな声音で、俺に告げてきた。


 でもみなも知っての通り、俺が何度も説明をした通りだ。


 絵美も沙紀と一緒で、新しい彼氏ができて、俺のことを捨てた女だから。


「絵美、お前に彼氏が出来たから、俺との自然消滅を狙って音信不通にしたのだろう?」


 だから俺は、にへらと笑いつつ、こいつへと告げた。


「誰にいつ! 何時! 何分に彼氏が出来たのよ! 私は只和也に今、勉強が忙しいから、電話やメールは後にしてくれと言っただけじゃない」


 でもこの通りだよ! 俺が絵美、お前が悪い! と告げても。昨日絵美の奴は、自分は悪くはないと言葉を返してきた。


「それに連絡をよこさなくなったのは、私ではなく。和也じゃない!」とも告げてきた。


「和也の通っている学校も進学校だから、入学早々、色々とあったでしょう? 全国模試や学年模試。その他のテストも……」と、今にも泣き出しそうな顔、声音で、俺に告げれば。


「私が成績落ちたら、家のママに、和也の事を悪く言われるのをあなただって知っているじゃない。だから私必死になって勉強して、テストはママが納得するような点もとったよ」と。


 絵美は更に俺へと説明をしてきたよ。


「家は女子高じゃない?」と俺に尋ねてもきたから。


「うん」と頷けば。


「私が仲良くなった娘達って、皆彼氏とかいなし。お付き合いもした事がない娘達ばっかりだから。『私彼氏がいるの。今日は彼氏と逢わないといけないから帰るね。ごめんね』と、私も友達に告げる事が出来ずにいて、合わせていたから、中々和也と会う事ができなくなっただけじゃない」と。


 絵美は俯く行為を辞め、自身の顔を上げ、俺のことを睨みつつ、荒々しく告げ、説明してきた。


「私、和也ならわかってくれると思っていたし。私の事を信じてくれているとも思っていた。私の全部をあげたのだから、和也はこれくらいの事ならが大丈夫だと思って、私も高を括っていたら。和也は二週間程度ぐらいで、私を裏切り彼女をつくるんだもの……」と。


 絵美は俺が裏切り者だと荒々しく告げ。そして終わればまた下を向いた。


「和也の嘘つき! 私を騙したわね! 絶対に責任をとって結婚をしてくれる! と言ったのに~! 和也のうそつき~!」と。


 俺自身も、今でも覚えている台詞をあいつ、絵美の奴は俺に告げると。またあいつらしく、俺の頬へと平手打ち! ビンタの刑だ!


 でッ、その後は泣きながら俺の腕に噛みつき、自身の憤怒している気持ち! 荒々しく高ぶった気が鎮静化するまで。俺への不満を腕を噛み、呻り、吠え、悪態を散々……。


 自身の気が収まるまで告げ、最後には、俺の胸で泣き崩れるから。


「ごめん」、


「ごめんよ」、


「俺が悪かった」、


「すまなかった」と、俺が絵美に謝罪し。


 俺が今置かれている立場を説明……。


 俺のような気の多いい、だらしない。平成のラブコメ主人公のような、いい加減男とは別れた方が良い。付き合わない方が良いと。加奈、蘭に続いて告げ、忠告するのだが。


 それでも絵美は泣きながら、俺の許へと返ると告げるから。俺は天罰! 天誅でもくだったかのように! 昨晩も恐ろしい目に遭うのだった。



 ◇◇◇



「和兄?」


「……ん? 何だ、美和子?」


「沙紀さんから電話……」


「えっ? 俺に?」


「うん。そう、和兄に?」と。


 そう、昨晩……。絵美の帰宅後……。


 俺は昨日、絵美あいつに胸で泣かれ、その後甘えられ、あいつが俺の家から帰宅をする時に、明日学校へといって、他の奴等と話しをするからと。大丈夫だからと。


 俺は絵美の奴が安堵して家に帰ることができる台詞と約束事を何個かした。


 だからあいつ、絵美の奴は、大変に喜び、安堵して、自身の家に帰ってくれた。


 最初は俺に纏わりつく、ストーカー行為をしてくるお化けを退治! 撃退してやるのだ! と、鼻息荒いあいつだったけれど。


 俺が絵美へと『俺のことならば大丈夫! 大丈夫だから!』と告げ。


『今日は自分家に帰れ!』と告げた。


『うん、分かった!』、


『今日は帰るね!』と、絵美は素直に自身の家に帰ると俺に告げれば。


 その後はラブコメのお約束……。仲直りをした元カップルのお約束事……。


『チュ!』と俺の頬へと優しく接吻をしてくれた。


 でッ、その後は『ブチュウ~!』と大人のキスを俺の唇、口内へとすれば。


 俺に手を振り、『和也、またね』と帰ってくれた。


 だから俺はホッ! と安堵じゃない!


「うわぁ、あああっ! どうしよう?」、


「どうしたらいい?」、


「どうすればいいのだぁ~、俺はぁ~!?」


 俺は絵美が帰宅後は、自身のベッドの上……。まだ絵美の香りと温もりがするベッドの上で、ラブコメの主人公らしくのたうち、暴れ回るのだ。


 絵美に対して俺は安易に、加奈と蘭を説得して、四人で今後の人生を仲良く、楽しく暮らそうじゃない!


 あいつ! 絵美の奴は! 篠田……。


 まあ、影は薄いが、俺の親衛隊の隊長さんのことを知っていて。俺がアイツ、沙紀の奴と別れたのは。


 絵美と同じ塾に通う篠田の奴から教わったと俺は聴かされ、唖然としたし、呆然もしたよ。


 俺の口はまさに開いたまま閉じないくらいにね。


 だから俺は確実に自身の破滅へと秒読み状態で向かっているのだ。


 そう俺は、友達百人出来るのでは無く。彼女が百人出来るかな? の地獄の黙示録へと確実に歩み始めるから。


 自身の部屋! ベッドの上で! 絶叫! 奇声を上げつつ、のたうち回っていれば。


『和兄入るね』と。


『大きな声を出すのを辞めてくれない?』、


『私達受験生なのだけれど』と。


『沙紀さんが和兄の事が心配だからと電話してきたよ』、


『はい~』とあいつのスマートフォン手渡しされた状態が、今の俺の状態と言う訳なのだけれど。


 俺は今と言うか?


 まあ、みなも知っての通りで加奈、蘭、絵美……。そして篠田達、俺の親衛隊達のことを考えるので。俺の思考、精神は一杯だから。


「えぇ、えええっ」と俺は美和子の奴に、大変に怪訝な顔、嫌がりを見せれば。


「あのね、和兄? 沙紀さんも和兄が今日も学校を休んだから心配になって電話をかけてくれた訳だから、ちゃんと逃げず、嫌がらず電話に出てあげて。沙紀さんも私や美智子に頼んで、和兄に電話を取り次いで欲しいと嘆願をするのは、本当に勇気のいる事だから。和兄も、そこはちゃんと察してあげてよ。お願いだから」と。


 美和子が、にへらと笑いつつ俺へと告げ、嘆願をしてきた。


 でも俺は、何度もみなに告げた通りで、もう沙紀のことなど、どうでも良い……と、言うか? 俺自身がもうそれどころではないのだ!


 だって、今の俺には加奈と蘭と対立する、篠田率いる親衛隊のメンバー達……。


 それでも、自身の頭が痛い状態なのに、元々カノの絵美が復縁したいから、加奈と蘭と話しをさせてくれと嘆願してきたから。取り敢えず、今は無理だ。俺が先に二人へと事情を説明して、それから絵美も二人と話しをすればいいと告げ。


 篠田の件は、絵美も知っているし、了承しているから。まあ、問題はないらしいのだが。


 加奈と蘭の方は、どう言う訳にはいかないから、俺自身明日は学校へと登校して、直接二人と会話……。絵美の件を相談するしかないと思っているのに。


 このクソアホ~!


 そう、沙紀自身が浮気をして捨てた俺が、自身と別れた同時に、超がつく程のモテ期……。


 彼女が何人できるかな? の、ラブコメ、ハーレム王へと進化したから、俺と別れたのが惜しくなり。慌てて出戻り出来るように乞うてくる女など! 俺はもういらないに! 俺の気持ちとは裏腹に。沙紀の奴は、俺に自身のストーカーになるなと言って悪態をついてきたのにさ。


 今はアイツ! 沙紀の奴が俺のストーカーへとなってきているから。俺は「はぁ~」と大きな嘆息を漏らし、(気怠いな)、(面倒だな)と思いながら。


「はい、もしもし……。何のようだ沙紀?」と、美和子から受け取ったスマートフォンを自身の耳へと当て──。重たい口調でアイツ、沙紀へと問う。



 ◇◇◇



「(和也、風邪の方は大丈夫?)」と。


 俺に対してスマートフォンの向こう側から、オドオドとしらじらしく問いかけてくる。偽物染みたアイツ! 沙紀の奴へと俺は「(……ん? 大丈夫だ)」と告げ。


「(何のようだ。沙紀)」と俺は、アイツのことを昨日冷たくあしらってやった。


「(えっ! いや、あの、別に用事らしい、用事はないのだけれど。ただ和也が珍しく三日も学校を休んだから体調の方は大丈夫かな? と思って……。和也、今まで、こんなに長く学校を休んだことなどないのに休むから。和也の身体は大丈夫かな? と私思って、和也へと電話をしたのだけれど。和也まだ私のことを怒って着信拒否にしているから美和ちゃんに電話して変わってもらった、の)」と。


 沙紀は完全なラブコメのダメヒロイン……。


 そう、どうしょうもないビッチな、負けヒロインらしく小さな声で、オドオドと気弱な自分を装い、演じながら俺へと尋ねてきた。


 でも俺はコイツ! 沙紀の振る舞いに騙される気もないし。俺自身がもうそれどころではないのだ!


 みなも知っての通りでね。だから俺は沙紀の奴へと冷たく、冷淡な口調で。


「(そうか、ありがとうなぁ。加奈や蘭、篠田達からも早く学校へと来いとL〇NE電話やメールが着たから、明日はいくよ。じゃなぁ、神宮寺、ありがとうなぁ)」と。


 俺はスマートフォンの向こうから淡々と沙紀へと、にへらと笑いもしないで冷たくあしらう。


 そしてスマートフォンの画面の、着信のところを切り、スマホを美和子へと返そうと試みようとすれば。


「(か、和也! ちょ、ちょっと待ってぇ! お、お願いだから! 電話を切らないでぇ! お願いよ! 頼むから私の話を聞いて和也~! あのひととは別れる! 別れるからぁ~! 頼む! 頼むからぁ~! お願いよ! 和也~! 頼むから……)」と。


 アイツ、沙紀の奴は……。最後はスマートフォンの向こうで泣いていたのかな? 俺の耳へと昨日、アイツの啜り泣き、嗚咽が聞こえてきた。


 だから俺はアイツ! 沙紀のことが可哀想……と、なる訳ないじゃ、ん! 


 まあ、俺のことを傍から男子諸君が見れば、『和也、お前は本当に酷い奴だ!』と諫め、罵られるかも知れないけれど。


 俺のことをアニメやマンガのラブコメ主人公へと導いたのは、スマートフォンの向こうで啜り泣き、嗚咽を、わざとらしく漏らす。


 そう、俺から同情票をもらい。『沙紀ちゃんは可哀想だね』と優しい言葉をかけ、もらおうとしている、策士の悪しき女、新宮寺沙紀本人が張本人で、アイツが浮気をして俺のことを捨てフリーにしなければ。俺自身はこんなにもややこしいことにならずに済んだ訳だから。


 沙紀の奴が、スマートフォンの向こう側で泣くのはお門違いだと、みなも思わないか? と。


 俺自身がスマホの向こう側いるバカの不満や愚痴を漏らし、終えたところで話しを元に戻すけれど。


 まあ、俺自身は加奈に蘭……。


 そして沙紀の天敵である篠田達親衛隊と。アイツ! 沙紀の奴が一番気になるだろう、俺の元々カノの絵美までも復帰したいと言っている訳だから。


 俺自身はその件で頭を抱えている状態なのに。もう既に他人の物になったビッチな女等、俺はいらない。勘弁して欲しいと。昨晩の俺は本気で思ってから。


「(はぁ~)」と大きな嘆息を漏らし。


「(神宮寺、お前以下減にしろ)」と。


「(俺に何度も言わせるな!)」とも告げ。


「(俺さ、別れたお前だから言うけれどさ。新宮寺の前に付き合っていた彼女……。俺が医大を目指す原因にもなった元々カノの絵美が、今日尋ねてきてさ。先ほどまで俺の部屋にいたんだよ)」と、にへらと笑いつつ説明をすれば。


「(えっ!)」と沙紀の奴は声を漏らすのだが、俺は無視して。


「(あいつさ、彼氏なんか作っていなくてさ。只新しく出来た女子高の友達に、ついあいを合わせていたり。入学最初にあるじゃないか? 俺等の学校にもあったけれど。学力テストや全国模試……。そしてあいつが通っている駅横の塾模試等が忙しくて、俺への電話が疎かになっていただけみたいでさ。あいつ、絵美の奴は、俺のことを裏切った訳ではなかったんだよ)」と。


 あの時の俺! 昨日の俺は! 沙紀の奴に対して、大変に嫌味たらしく。『ざまぁみろ!』と言った感じで、ニヤリといやらしく、スマホの向こう側から笑いつつ告げた。


 でもさ、俺の沙紀への恨み、嘲笑いは、これだけで終わる訳でもなく。俺は沙紀のことをくそくらいだ! と思いつつ。


「あいつ、絵美の奴の言い分だと。俺があいつのことを裏切ったような感じになっているらしくて。あいつ自身も俺と別れたとは思っていない。只新宮寺との件は、俺が浮気をしているだけだと認識して。どうせ俺と新宮寺は、こんな感じで別れるだろうから。あいつ大学にいくまでは我慢をしておこと思っていたみたいでさ。新宮寺と別れたのならば自分のところに戻るのが筋だからと。浮気するのもいい加減にしろと言われたんだよな)」とも告げ。


 最後には、俺の口から「(だから新宮寺悪い)」と。「(俺は新宮寺にかまう暇等ないんだよ。だから二度と電話をかけてこないでくれ。俺自身本当に迷惑だと思っているから)」と、沙紀の奴へと止めを刺し。俺は美和子のスマートフォンの画面へとタッチ……。


 そう、沙紀との通話を遮断すれば。


「ほら、美和子」と。


 俺は、自身の妹様へとスマートフォンを返す。


「絵美さんと寄りを戻すんだ?」


 美和子が俺に尋ねてきたから。


「うん」と頷き。


「俺、あいつに責任をとらないといけないから」と告げ。


「沙紀の奴は、アイツが大事にしていた物をやった奴に、泣きついてでも責任をとってもらうといい」と告げ。


「美和子、お前は勢いで大事な物を安易に男にあげたりするなよな。俺のように結婚相手はバー〇ンじゃないと嫌だ! と言う男も結構いるし。結婚してから細かくなる男もいるみたいだから気をつけた方がいいぞ」と。


 俺は兄貴として、にへらと笑いつつ美和子へと注意をした。


 でも美和子の奴は「…………」


 俺の部屋から無言で出ていった。



 ◇◇◇



「うぅ、うううっ。く、苦しい。苦しい……。だ、誰か、助けてくれ。助けてくれ、お願いだ」と。


 俺は昨晩と、言うか? 今晩と言った方がいいのかな? 日替わりした可能性もあるからな? 俺がまたお化け……。


 そう、女性のお化けに襲われた時はと、俺が説明をすれば。『ああ、また女性のお化けが出たのか?』と、みなさんも思うかも知れないが。俺の許にお化けの女性がまた尋ね、現れてきた。


 そして今度は、彼女は大変に攻撃的でね、いつものように俺の許へと深夜……。多分、丑三つ時だと俺は思う時間に彼女、お化けさまは現れると。


 最初は「うらめしや~」、「うらめしや~」と彼女は、俺が(あれ?)と思う台詞……。


 そう、いつもと違う台詞……。お化け! 幽霊の代名詞だとも言える『うらめしや~』と呪いの台詞を俺へと告げると。彼女はそのまま、いつも通りに、俺の背後へと忍び寄り、抱き付き、冷たい身体……。氷のように冷たい肢体で俺に抱きつき、ハグだよ!


 だから俺は「ひっ!」と変な声をあげる。


 でも直ぐに俺の口から冒頭シーンのような苦痛な言葉漏れ、呻り始める。


 だってお化けのお姉さまは、俺に抱きつき甘えるだけでは物足りない。満足できないようで。俺の首までとうとう絞めてきたのだ。


『うらめしや~』、『うらめしや~』と、俺に呪いの台詞を告げる度に。


『ここは飯屋じゃないから、早く帰ってくれ』と、声にならない台詞を漏らしつつ、悪態をついていた昨晩の俺へと彼女は最後には。


「死ね~! 死ね~! 死んでしまえぁ~! この裏切り者~! うそばかりつきおってぇ~! 私を騙したなぁ~! このクソ男がぁ~!」と。


 俺自身、身に覚えがない言葉を告げてきたのだ。


 だから俺も昨晩はお化けのお姉さまに。


「幽霊のお姉さん~! 君は何か誤解と言うか? 俺は誰かと間違えていませんか~? 頼むからぁ~。自分を地縛霊にしたあんちゃんのところに化けて~、とりついてくれよ~。お願いだから~。頼むよ~」と。


 俺は多分?『あう、あう、ああ、ううう、ああ。ううう』と呻り声で彼女! お化けのお姉さまへと他所に……。


 そう、自分を本当に騙した彼氏の許へと現れてやってくれ! お願いだ! と昨晩俺は呻り声で嘆願をしたと思う?


 でもさ、お化けのお姉さまには、俺が何を言っているか、嘆願をしているかを理解しているみたいでさ。


「山田和也~! お前がぁ~! お前がぁ~! みな悪い! 悪いんだ~! 私のことを騙しおってぇ~! 絶対に許さない~! お前のことは呪いころしてやる~!」と。


 お化けのお姉さまは、しくしく泣きながら。「うらめしや~」と言いつつ、続けつつ。俺の首を自身の氷のように冷たい手で、握り締めながら恨み、辛みを続けるから。


「お、お前~! も、もしかしてぇ~? 志乃かぁ~?」 、


「志乃なのかぁ~?」と、俺は幽霊のお姉さまに問う。尋ねてみた。


 俺が中坊の頃に付き合っていた年上の彼女の名前を叫び、尋ねてみた。


 あ、あいつ、志乃奴ならばもしかすると? 自害した小脳性もあるから。俺は絶叫交じりで、尋ねたと思うけれど?


 俺金縛り状態だから呻り声かな?


 まあ、こんな感じで、危機感があるようでない俺に対してお化けのお姉さまは。


「…………」と黙り込んだ。


 だから俺は、「お前やっぱり、志乃か~?」と尋ね。


「志乃ならばぁ~。俺のことを恨むのはお門違いだぁ~!」と叫び。


「別れる原因を作ったのはお前だろう~? いい加減にしろ~!」と。


 俺はお化けのお姉さまにカッコ良く、怒声を吐いた。


 まあ、吐いたよ。


「和也、志乃って誰?」



「…………」


 俺がお化けのお姉さまに元々カノ~、その前のカノ~。前だったかな? 俺も忘れち待ったけれど、年上の彼女でさ。俺はそいつの浮気を二度耐え抜いた。でも三度目の浮気で、もう我慢が出来なくなり。そいつ、志乃の奴と別れたのだけれど。


 あいつは俺と別れた後に気が触れたような状態へと陥ったのだが。あれだけ浮気をした癖に、俺への執着心が大変に強くて、家の学校へと探しにきたり。家に俺がいるか? と泣きながら尋ねてきたりと。深夜だろうとお構い無しに家電話へとかけてきたり。家の玄関のベルを鳴らしてみたりと。


 まあ、最後には薬物中毒のために心療内科と強制的に入院をさせられた奴だから。


 俺はお化けのお姉さまが、もしかして志乃の奴の地縛霊ではないのか? と尋ねてみた。


 だからお化けのお姉さまは、俺の首を絞める行為を取り敢えずは辞めてくれた。


 でも俺の質問を聞き、お化けのお姉さまは完全に困惑した声で尋ね返してきたから。


(えっ! もしかして志乃ではなく、別の女性のお化けさまなのかな?)と、俺は思えば無言だよ。だって彼女に返す言葉見当たらない。


 だから俺は(どうしよう?)と、自身の脳撫で昨晩呟いた。


 それも更に、自身の額や背に冷たい汗……。冷や汗と言う物をかきつつ、(どうしたらいいだろう?)とも考える。


 でもこのまま、俺自身も沈黙を続ける訳にはいかないから。


「あれ、違うのかな?」と、俺は可愛く首を傾げた。



 ◇◇◇


【題 高校生になれば、お化けの御姉様も更に切れる!】


(ここまで)



「違うに決まっているだろ!」、


「山田和也~! 貴様はぁ、可笑しいのか~?」と。


 昨晩お化けのお姉さまは、俺の間違えを聞いてね、憤怒───!


 彼女は更に、自身の怒りを頂点にまで上げ‼ 怒声! 罵声を吐きつつ!


「山田~! 志乃とは誰だぁ~? 誰なのじゃ~?」と。


 まさに悪霊! 地縛霊らしく! 俺に呻りながら、「死ね!」、「死んでしまえ!」、「この浮気者がぁっ!」と、呪いの言葉を現代進行形で唱えつつ、首を絞め続けてきたよ。


 だから俺は、お化けのお姉さまの不満を聞き、(俺の首を絞める幽霊ってもしかして? 加奈、なのかもしれない?)と思い始めるから。


「おい! お化け? お前はもしかして、加奈か?」と。


 向こう! お化けのお姉さんも憤怒しているが! お化けの登場で失禁までしている俺だから。俺自身も憤怒だ! 怒りをあらわにした口調、声音で、お化けのお姉さん……。


 いや、加奈の奴へと俺も呻り、吠えてやった!


「加奈~! いい加減にしろ!」とまで付け加えてね。



「うぎゃ、あああっ!」、


「ぎゃぁあああっ!」、


「殺してやる~! 殺してやるからなぁっ! 山田和也~!」、


「また私を他人~! 他の女と間違えよってぇ~! もう絶対に殺してやる~! 殺してやるからなぁ~! 山田和也はぁ~! あの世いきだぁ~!」と。


 お化けの御姉さんは、俺の問いかけを聞き、答えたと思えば。こんな荒々しい言葉を俺に告げ、必ず殺してやるからなと回答してくれたところをみると。また俺の彼女への問いかけは外れのようでね。【志乃】、【加奈】と、連続して違う女性の名前を叫び、罵声を吐いた。どうしようもない男の俺に対して、お化けの御姉さまは最後に「がぁあああっ!」と叫ぶと。


 そのまま勢いよく俺の喉元に噛みつき八重歯? 犬歯? まあ、どちらか解らないけれど彼女は、俺の柔らかい首を噛みつき、歯を立て突き刺し、ドラキュラ女、カーミラのように俺の生き血をチュチュと変な……。いや、いやらしい音を立てながら吸い。


「これで私と山田和也は一心同体……。同体だから、もう逃がさん! 私の物だ」と。


 俺は只今、自身の夢の中なのでは? と思うことをお化けのお姉さまは、その後も言い続け、自己満足していたと思うのだが。俺自身が途中から情けなく堕ち、気を失ってしまったから。俺自身もよくわからないのだけれど。でもこの通りだ! 俺が首に絆創膏を張っている通りだよ! 俺の首の絆創膏を剥ぎ取れば、犬歯で噛みつかれたような跡が本当に残っているし。俺自身が今日の早朝から貧血気味なのだが。


 それでも俺は流石にこれ以上学校を休む訳にはいかないから。


「じゃ、お袋! 今日は学校へといってくるよ!」と告げ、立ち上がり。家の玄関の扉を勢いよく開けるのだった。



 ◇◇◇


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