第27話 新しい教室の席へとつけば? (3)

「私の名は山本加奈……。今日から山田君と同じクラスだからよろしく、ね」と。


 ここでやっと大変に恐ろしい山本加奈さまが、俺に自己紹介をしてくれたから。


 俺も自身の口を開き。


「ああ、山本さん。こちらこそよろしく」、


「えへっ!」と。


 俺は加奈に対してこの時は、取り敢えず明るく笑い、気丈に振る舞いつつ、言葉を返したと思う?


 そんな俺に加奈は。


「山田君の希望大学は確かH大だよね?」と尋ねてきたから。


 俺は「うん」と頷き。


「山本さんって、俺と同じクラスに一度もなっていないのに。俺の志望校がH大だとよく知っていたね」


 俺は、にへらと笑いながら、加奈に尋ねた。


「……ん? 私?」


「そう、君だよ。君……。山本さんだよ……。俺がH大だなんて、よく知っていたな? と思ってさ。あっ、ははは」と。


 この時の俺は、加奈が無表情、無感情のわりには、妙に俺のことに詳しいと言うか?


 余りにも積極的……。


 初めて会話をする俺に対して加奈の奴は、無表情でさり気なく甘え……。


 そう、加奈の奴は、俺の膝の上に素知らぬ顔をしながらさり気なく、自身の華奢な掌を添え──。


 スリスリしながら甘えているんだよ。


 元カノ?


 ああ、まだこの時はフラれる前だから今カノの沙紀でさえ、彼氏の俺にしたことがない、優艶な甘えをさり気なく、股や大事なところも触ってきた。


 だから俺! 最初は加奈のことをなのかな? と思ったから。


 この時は、自身の顔色を少し変えたかな?


 でもさ、加奈の恐ろしさは、これだけじゃないかね。


「山田君~?」


「な、何、何かな、山本さん?」


 痴女の加奈に対して上擦った声を上げつつ、言葉を返した俺にあいつはさ?


「私ね、山田君の事が一年生の時から好きだったの……。告白するつもりだったの。私と付き合ってくださいとね。でもさ、新宮寺さんに先を越されてしまったから。告白出来ずに終わった。だから遠目から山田君の事を想い見詰めるだけだったの……。でもね、山田君と目指す大学も学部も同じだから。H大に入学してから山田君と既成事実作ってから新宮寺さんから奪うつもりでいたけれど。神宮司さんが山田君と別れてくれそうだから。私嬉しい……」と。


 加奈は俺に囁くとピト! と、しな垂れかかる、じゃないのだよ。


 ガブリ!


 カミカミ! と。


 俺の耳を齧るから。


「うぎゃ、あああっ!」と。


 俺が驚愕しながら、絶叫をあげるから。


 クラスのみんなが俺に注目だよ。


「な、何だ?」


「何が遭った?」


「山田に何が遭ったんだ?」と。


 この他にも色々な声──!


 そう、沙紀との件で落ち込んでいた俺だから、クラスのみんなが俺のことを心配? してくれながら小声で会話──!


 騒めきが喧騒へと変わるから。


「山田、どうしたの?」


 沙紀の阿保ではなく!


 とうとう蘭が加奈の俺への行動が気になるのか?


 俺に声をかけながら向かってきたよ。


 もう一度言うが!


 沙紀ではなく蘭が!


 加奈の俺への行動を遠目からチェック! 監視していたみたいだから。


 俺が加奈の積極性のある行動に困っているのではないか? と。


 あいつは思い、俺に声をかけてきた。


 でも、蘭の今回の素早い行動よりも、加奈の方が一枚上手だから。


「山田君、別に何もないわよね? 只虫が居ただけだよね?」と。


 何処かで聞いたことのある台詞を加奈は蘭へとシラッと言ってのけたから。


 俺も「うん」と頷くしかなく。


「大田、ごめんな。俺が変な声をだして」と。


 俺は蘭に、にへらと笑いつつ告げるのだが。


 あいつは加奈の行動を監視していたから。


「山本さん、今山田にキスをしたわよね?」


 蘭が俺と加奈の机の近くまできて仁王立ち──。


 俺達二人のことを見下ろしながら憤怒しつつ、加奈へと呻り、吠えるものだから


「えぇ、えええっ!」


「嘘ー!?」と。


 教室内のあちらこちらから、クラスメイト達の声を大にした叫び、問いかけが響き渡るから。


 沙紀の奴も、俺のことを無視続ける訳にはいかなくなったようだから。


 あいつのツレ達と一斉にこちらへと注目──。


 沙紀の奴は、ポカ~ン! と空いた口が閉まらない、可笑しい顔をしているから。


 俺自身、一瞬クスッ! と、笑いそうになるのだが。


 今は、それどころじゃない。


 蘭と加奈が一触即発状態に陥っているから。


「お、おい。二人とも……」


 俺は蘭と加奈の二人にガンのつけ合い、飛ばし合いをするな! と、無言で諫め告げた記憶があるけれど。


「山田は黙っていて」と。


 蘭が鼻息荒く、俺に告げれば。


「山田君はちょっと驚いただけで、別に嫌がっていない訳だから良いじゃない」と。


 加奈は、沙紀の友人である蘭へと威風堂々と怯むことなく告げると。


「新宮寺さん、もう彼氏いるのでしょう? 先程大田さん達、新宮寺さん話しをしていたじゃない。今山田君と二股状態だから。山田君と直ぐに別れるようにと言っていたじゃない。山田君と新宮寺さんの今の彼氏に悪いから」と。


 蘭も気が強いけれど、加奈の奴も、こんな大人しい顔をして、こいつも気が荒いじゃじゃ馬だから。


 蘭の諫め!


 俺に近づくな、だったのかな?


 あの時の乱の加奈への諫めはね。


 でもさ、加奈も呻り、蘭に吠えるのだが。


 ここでクラスのみんなはね、加奈の罵声を聞いても。


『えぇ、えええっ!』


『嘘~?』


『マジ~?』


 広島弁で『ほんまに~?』が、一人も吐かれなかったと、俺の脳内に記憶として残っていたから。


 俺がトイレで、沙紀のことで泣いている時に、アイツ……。


 沙紀の奴は蘭や井上、澤田達に。


『本当に山田の事は良いの?』


『沙紀、後で後悔をしない?』


『沙紀、絶対に後悔をすると思うよ?』とか、言われて。


『別に和也と別れても後悔なんかしないし』、


『せいせいするし』


『もう二度と和也の顔を見たくもなし、話しもしたくはないから』とか、言っていた! 悪態をついていた! と。


 俺は思うとさ、自身のはらわたが煮えくり返り。


「大田~、別に俺~。山本さんの唇が別に少し当たろうが気にもしないし。どっちかと言えば嬉しい~」と。


 俺は蘭にヘラヘラ笑いながら告げると。


 その後、開いた口が閉まらねぇ、沙紀の方へと視線を変え──。


「何処かの、誰かさんわ、俺と二年も付き合って、キスすらせてくれなかったからな~。帰って嬉しいわ~」と。


 俺はヘラヘラ笑いながら告げてやった!


 だからもう後戻りはしねぇ、アイツ! あのバカとは別れると。


 俺は腹を決めたから。


 今度は沙紀から蘭へ視線を変え、あいつへのいつもの調子で。


「大田~、あれならば~。お前も俺にチュチュしてくれるかぁ~?」と。


 俺は蘭に頬を殴られるのを覚悟で、冗談交じりで告げたけれど。


 蘭の奴は別に、怒らずに。


「えっ、あの、ど、どうしよう?」と。


 あいつらしくない、しおらしい振る舞いをするから。


 俺が「えっ!」と驚嘆を漏らせば。


「大田さんも山田君の事が好きなのね?」


 俺が驚愕をするようなことを加奈が、教室のみんなにまた聞こえるように告げた記憶がある。



 ◇◇◇







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