第6話 喧嘩はやめて(レイジ目線)

 ビックリした。まさか二人が殴り合う事になるなんて。いや、その前に、まさかいきなりリョウ兄さんにキスされるなんて。俺は、顔は赤くなるがそんなに酔っていないのだ。

「ちょっと、二人ともやめてください!」

殴り合ったりしたら、顔が腫れるし、怪我するかもしれない。ああ、どうしよう。後で事務所に何て言えばいいんだよ。

 止めようとしてもダメだ。どうしよう。そうだ、

「カズキ兄さん、どうしよう!」

俺はカズキ兄さんにテレビ電話をかけた。そして、フラフラになりながらまだ殴り合っている二人を映した。

「マジか!今行くから!」

カズキ兄さんはそう言って電話を切った。今行くって言ったって、それまでこのままじゃ・・・と思ったら、1分もしないうちにカズキ兄さんがやってきた。

「カズキ兄さん!?なんでこんなに早いの?」

「心配でさ、近くで張ってたんだよ。」

嘘だろ・・・。でも助かった。

「リョウ兄さん、もう止めましょうね。美貌が台無しになりますよ。」

カズキ兄さんはそんな事を言いながら、リョウ兄さんを後ろから羽交い締めにした。俺も、まだ掴みかかろうとするテツヤ兄さんを後ろから抱きしめた。

「ほら、兄さん帰りますよ。レイジ、テツヤの顔冷やしておけよ!」

カズキ兄さんはリョウ兄さんを肩に担ぎながら、振り返ってそう言った。そして、なんだかんだ言っているリョウ兄さんをなだめながら、家を出て行った。

 やれやれだ。俺はテツヤ兄さんの顔を冷やそうと、タオルを水で濡らして絞った。

「これでいいかな。」

テツヤ兄さんはまだリビングに突っ立っていた。

「こっちに座って。顔を冷やそうよ。」

俺が言うと、テツヤ兄さんは無言のままソファに移動して座った。俺は横に座り、濡れタオルをそっとテツヤ兄さんの頬に付けた。

「どう?冷たい?」

「ああ。」

ただ一言、そう返って来た。

「なんで、殴ったりしたの?」

俺が聞くと、テツヤ兄さんは目線を俺に向けた。

「リョウ兄さんが、お前にキスしたから。」

あ、チャンス、来たかも。そもそも今夜の目的は、テツヤ兄さんにヤキモチを妬かせる事、妬いてくれるかどうかを見る事だったのだ。ヤキモチだったのか、そうじゃなかったのか、確かめるチャンスだ。

「キスしたから、怒ったの?なんで?」

ドキドキしながら、言葉を選びながら、質問をする。

「だって、俺の大事な・・・。」

「大事な?」

「・・・弟に、手を出すから。」

「・・・。」

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