第4話 リョウ兄さんの帰国(レイジ目線)

 俺たちのグループが、事務所の先輩であるリョウ兄さんとコラボ曲を出すことになった。リョウ兄さんはだいぶ前にグループを解散し、単身アメリカへ渡ってダンスや歌の勉強をしていたのだが、この度帰国した。実に5年ぶりの再会である。

「リョウ兄さん、お帰りなさい!」

「お帰りなさい!」

俺たちはリョウ兄さんを出迎えた。事務所のスタッフが用意した花束を、代表して俺が渡した。

「おお、お前ら元気そうだな。アメリカでも人気だぞ。っていうか、お前レイジだよな?ずいぶん大きくなったなあ。」

リョウ兄さんは改めて俺を見て驚き、そして俺の頭を撫でた。う、照れる。

「レイジはリョウ兄さんのファンだったよな。リョウ兄さんに憧れてうちの事務所に入ったんだろ?」

タケル兄さんに言われて、余計に照れる。

「え、あ、はい。」

俺は小さくなって、少しずつ後ずさりした。が、リョウ兄さんはすかさず俺を捕まえて、ハグをした。

「レイジ、これからよろしくな!」

ポンポン、と俺の背中を叩いてリョウ兄さんが離れた。

「はい。」

「うわ、イケメンだなぁ、笑うと余計に。」

リョウ兄さんがそう言って笑った。


 ひとしきり再会の儀式に盛り上がった後、カズキ兄さんが俺の所へ飛んできた。

「レイジ、レイジ、俺良い事思いついた!」

俺を捕まえて小声で、しかし興奮気味に言う。

「何?」

「ヤキモチ作戦だよ。俺じゃ頼りないけど、リョウ兄さんなら効果絶大だよ!」

「えー、そうかな。それで妬いてくれなかったら・・・。」

「大丈夫だよ、絶対。だってな、さっきお前がハグされた時、テツヤの顔を見たら、もう。」

「え?顔を見たら、どうだったの?」

カズキ兄さんはニヤニヤして、なかなか次の言葉を話さない。

「教えてよ!」

小声で詰め寄る。

「ものすごい形相で睨んでたよ。あいつの顔、迫力あるからな。あははは。」

笑い事ではない。テツヤ兄さん、俺の事怒ったのかな。ヤバい。フォローしに行かなきゃ。

「まあ、待てよ。だからさ、絶対に作戦成功するよ。」

「作戦って?」

「そうだな。例えば、お前んちにリョウ兄さんとテツヤを呼ぶんだ。」

「呼ぶ?」

「酒でも飲もうとか言ってさ。出来れば、三人でというのは隠しておいて、あたかも二人で飲みましょう、みたいな感じで誘ってさ、二人を。」

既にハードルが高い。

「それで、リョウ兄さんとちょっと仲良くして見せて、テツヤがどう出るか見てみたらどうだ?」

「それで、もしヤキモチ妬いてくれたとして、どうすればいいの?」

「まあ焦るな。まずは妬かせて、少しずつアプローチしていけばいいんだよ。お前のキスは、けっこう気持ち届いてるみたいだぜ。」

「は?」

気持ちが届いてるって、どういう意味だろう。

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