第14話:鬱だ。詩能。08
次の日。
貴族寮。
使用人の用意した朝食を食べながら、
「バスターレーザーの威力は理解したな?」
カオスは確認をとった。
「はい……」
同じく朝食をとっているセロリが頷く。
「強力だろう?」
「戦慄……するほどには……」
実際にセロリにとって、
「バスターレーザー」
は過分な力だ。
実際の……星さえ分断するカオスの、
「バスターレーザー」
とは事を異にするもセロリのソレとて地上においては強力な詩能だ。
「ならいい」
とカオスは納得する。
「何が良いのか?」
とセロリは思ったが、実際にはコンソメスープを飲むのみだ。
「これでブリアレーオリミッターも解除されただろ?」
そんなカオスの言に、
「?」
「?」
「?」
リリンとアイスとセロリが首を傾げる。
「なんですその……」
「ブリアレーオリミッターって云うのは……」
これはリリンとアイスの疑問だ。
同時に、
「…………」
セロリの疑問でもある。
「詩能ってのは不思議でな」
カオスが言う。
「強力な詩能ほど長い詠唱を必要とする」
基礎の基礎を。
「それは……」
「当たり前じゃないですか?」
金色と赤色の瞳が疑問を訴える。
「ところがそうじゃないんだな」
カオスは、
「むぅ」
「むむ」
リリンとアイスの意見を破却してのけた。
「セロリ」
とカオスはセロリを呼ぶ。
「はひ……」
と噛みながらセロリが応答する。
「お前は強力な詩能を覚えた」
「です……」
そこに反論の余地は無い。
実際にカオスの前世記憶による知識提供によってシビライズドリミッターを突破したセロリであるのだ。
否定そのものは出来ない。
「で、ある以上だ」
カオスが言葉を紡ぐ。
「バスターレーザーを至高とする」
「…………」
「それは間違いないな?」
「です……」
他に言い様もない。
「じゃあお前の過去の詩能であるブリーズは今でも五節詠唱か?」
根本的な問いに、
「っ……!」
セロリは絶句した。
感覚的に悟ったのだ。
「既にそれは範疇外だ」
という認識を。
「それがブリアレーオリミッターだ」
カオスは言葉を紡いだ。
「何故強力な詩能ほど長い詠唱を必要とするか……」
カオスはくつと笑う。
「お前らにわかるか?」
「そういうモノではないんですか?」
「考えたことさえありませんね」
「常識じゃ……ないの……?」
リリンとアイスとセロリは、
「わからない」
と言った。
「だが俺はバスターレーザーを一節詠唱で具現化してみせた」
「っ!」
これはリリンとアイスとセロリの絶句。
「つまり詩能の威力と詠唱の間に因果関係は本来は無い」
「それは……!」
「あまりに……!」
「暴論かと……」
そんな反論に、
「だからさ。別の要因があるんだよ」
カオスは黙らせてみせた。
「強力な詩能ほど長い詩を必要とするわけじゃない。詩人が『価値がある』と認識している詩能ほど長い詩を必要とするんだよ」
「それじゃ……お兄ちゃん……」
「そうだ」
カオスは首肯する。
「バスターレーザーという強力な詩能を覚えたお前は一般的な詩能の常識から幽離している。そよ風の……ブリーズの詩能なんか一節詠唱で出来るはずだろ?」
「そうだけど……」
「つまりさ。バスターレーザーを修めた時点で、それ未満の効果しか持たない詩能に関してお前は価値を覚えられないってわけだ。である以上一般的な詩能は一節や二節で完結出来得るはずだろうよ」
反論は出なかった。
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