episode6.0〜スタートして。リスタートして。〜

いつももより、鳥が元気に鳴いている気がする。

昨日の友人1号からの連絡。

なぜだか、行かなくちゃいけないという使命感を覚えた。

「あ、母さん。今日学校行くから」

「そうなの?でも開いていないんじゃない?」

「なんか今日は開いているっぽいからさ」

「そう?気をつけて行くのよ」

「うん」

以前登校してた時に比べて、すれ違う人の数が減った様に思える。

特に、子供が一人もいない。

いったい何が何だか…

家を出て40分。見慣れてるはずなのに違和感しかない学校に来た。

「こっちだ!こっちに来い!」

「え?」

友人1号が、学校の裏道から手招きするのが見えた。

「おおう!でもなんでまた?」

「しっ!静かにこっちこい!先生に見つかるだろうが」

「え?」

すると校舎の方から何か足音が聞こえた。

「わ..わかった」

友人1号に先導されるまま、裏手の集積場前のベンチに腰をかけた。

「で?急に呼び出して、こんなにこそこそした感じでいなきゃいけないのはなんで?」

「ってめえよぉ。まだわかんないのかよ」

「なんだよ急に」

「俺らが作ってたのはなんだ?」

「動画…でも、あれは…」

「それって登校できなくなった途端、はい終わりってなる安っちい物?」

「そうじゃ..ないけど…でも無理じゃん!?」

「だからって何もしてこなかったのか?」

「そうだよ?だって無理じゃん!撮る場所もなければ人も集められない。それにみんなのやる気だって…」

「誰のやる気...だって?」

「でも、みんな音沙汰なくなっちゃったじゃないか」

「そう思ってんのはお前だけだぞ。少しはやる気も無くなったかもしれないよ?でも」

「やっぱりそうじゃん!」

「でも!それ以上に、何もできないもどかしさの方がずっと強かったんだよ!」

「はぁ?なんでそう言い切れるんだよ」 

「俺はずっと待ってたんだ。次に何をしようするのか。君の見せてくれた物語の続きを...」

「そんなのわかるわけないじゃんか!」

「ああ。俺だってお前がこんなだなんて思ってなかったさ」

「…っ!」

「もっと本気で向き合えよ。ここまで来たんだよ?ここまでやって完成しませんでしたが通じるわけないだろうが…もっと…もっと足掻けよ」


その言葉が、胸に引っかかって雁字搦めになって解けなかった。

…僕はばかだ

勝手に始めて、みんなを巻き込んで…勝手に自滅して。

どこか逃げたかったのかもしれない。

完成させることが怖くなってたのかもしれない。

「ごめん…でも」

「やる気は…でたか?」

ゆっくりと頷いた。

でも何ができるというのか

「撮影許可が下りたのはたったの3日間。明日から」

「それはどういう…」

友人1号が徐に取り出した一枚の紙には、校内の撮影許可『図書館・パソコンルーム・会議室・茶道室』

と書かれた用紙に校長印が押されていた。

「本気で当たってみないとね!」

ああ..そうだ。その通りだ。

軽く頬を叩き、気を引き締めた。

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