episode4.0 〜理想に近い日々だった。〜
それからというもの、顧問の先生をお願いしたりどんな内容にしようか思案したりした。
特に大変だったのは、友人1号を作ることだ。
別段仲の良かった人はいなかったわけではない。
が、それも中学生までの話であって、高校生活が始り数ヶ月。
まともに会話する友人が一人もいないのだ。
当然、何も始まらないわけで...
勇気を出して誰かに話してみることにした。
ただ、これがまた怖かった。
知らない人に話しかけるのですらも億劫なのに、ましてや友人になろうと思っているのだからハードルは高い。
ここでふと思い当たったのが、登校日前のアンケートで書いた自己紹介だ。
記憶が正しければ、登校三日目あたりに全員のことが書かれたものが配られたはずだ。
早速一枚目から目を通していったがなかなか話しかけやすそうな子は見つからなかった。
…動画編集もできる様な奴いねえかなぁ
どんどんページはめくられ、残り三ページとなった時だった。
趣味は動画編集。友達ができるか不安ですが、みんなと仲良くできると嬉しいです!
いろんな本とかも読んでるので、そういう話もしたいです!
「...わぁお」
次の日の朝。いつもよりも二本早いバスに乗って学校に向かった。
「おはよう!」
「おう!おはよ。あ〜今日なんか寒くね?」
「言われてみればそうかもな。あ、でも今日雨降るらしいからそれかもな」
「え?まじ?傘忘れたわぁ」
そんなこんなで出会った二人。
そこからというもの、音速で意気投合。
何をどう伝えるのか、どんなふうに撮ると良さそうか、どう言うストーリーにしようか。
そんな会話をする中にまで成長した。
して、この二人の出会い、必然か偶然か。
ここから、彼らの作品作りが本格化する....
「ねえ聞いた?なんか映像研に入ってくれあいか?って聞き回ってる子がいるらしいよ」
「え?まじ?てか、映像研って潰れてなかったっけ」
「あったあった。これでしょ」
そう言ってスマホを見せる人。
「それそれ、廃部のお知らせってやつ」
「何それウケる」
そんな会話でゲラゲラしてる女子三人組に向かって一言。
「…映像研入らない?」
「…は?」
「いやいや、私たち映像とかできないし」
「ってか興味ないし〜」
「そ…そこをなんとかっ!」
「はい。カット〜」
よし、最初のシーンの撮影できた。後は、
「いや〜。まさか私たちが出るとはね」
「あ、ありがとうございました。撮影もありがと」
「いいんだって。俺は映像作んのは好きだけど出たいわけじゃないから」
「そうなん?あ、今の会話もメイキングで使えるかも知んないからデータ送っといてくれる?」
「お…おう」
今回のテーマとは、青春とリアル。
まさに高校生向けと言ったタイトルだ。
ではリアルを追求した時に必要なものってなんだろう。ノンフィクションのようなものは確かにリアルかもしれないが、青春というスパイス的な何かを表すにはイマイチな気がした。
では逆に、フィクションでリアルを求めても残念ながらそのリアルを僕自身が知らないわけで。
だったら、今からリアルに触れていく様をそのままお話として落とし込めないだろうか。
つまりは、自分がリアルに触れていきつつ、その導線となることで今しかできないような作品ができるというわけだ。後は、どう導くかだが…
映画を作ってみたい。その映画の内容をあらかじめ考えておき、映画を撮らないか?から始まるストーリにすればいいわけだ。
残る問題はカメラマン。でもここで、ジャンプヒーローばりに遅い出会いがあった。そう彼だ。
こういう作品を作るという話を先生にした時だった。
近くに居合わせた、彼と目が合い、再び意気投合。
そのままゴールイン!ではないものの、一緒に活動するようになった。
企画してから一ヶ月足らずで冒頭シーンの撮影開始。
画面録画を開始し、隣の席の子に頼んでクラスグループに招待してもらった。
それから、一言
『映画作りませんか?』
青春の始まりを告げそうなメッセージと、それに反応するリアル。
最初の数分返事が来ない時は焦ってが、またここで運が回ってきた。
『何それ!面白そう』
何その完璧な返し。最高じゃん
そのチャット記録が数分。どんなのを撮影するのかを話し合いつつも、一旦会話を終わらせてその後に作品の趣旨を伝えた。
映画を作るっていうこと自体が、すでにイベントであることを踏まえた上で、映画制作していくわけだ。
正直怖かった。全員に無視されるかもしれないし、馬鹿にされるかもしれない。
だが我々は幸か不幸か青春に飢えていた。
柑橘系を思わせる甘酸っぱい果実のような青春に。
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