第13話 花蕾龍葉を撃退せよ(前)
あの面倒臭い(以下略)大作戦とは、いったい何なのだろうか。
勇気は彼と花蕾龍葉の関係性を知っているが、どうしてその結論に至ったかが分からず。
真宵に至っては、シンプルに何もかもが分からない。
「いやちょっと待てよ太志、先ずは説明しろ」
「そうよ、何でアタシまで連れてこられてるのよ?」
「なんだってっ!? 君たち二人には自覚が無いのかっ!? ボクをピンチに陥らせておいて、なんてバカップルだブヒヒっ!!」
ふんがー、と鼻息荒く巨腹を揺する太志は、学ランの内ポケットからスマホを取り出すと二人に突きつけて。
「見るんだ勇気!! 水池さん!! ボクだって鬼じゃない愛する二人にラブホに行くなとは言わないよ……でもね、でもさ? ――せめて制服で行くな!! そんでもって、出来るだけ龍葉ちゃんに見つからないように遠くのラブホへ行ってくれブヒよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
何故か涙を流し、机を両手で叩いて嘆く彼に。
しかして勇気と真宵はそれどころではない、だってそうだろう自分達がラブホから出てくる所をバッチリ撮影されているのだ。
「~~~~~~っ!? あ、あんにゃろうっ!! ぶん殴ってやる!! 盗撮なんてしやがって!!」
「アタシも行くわユーキ!! 落とし前付けさせてやるッ!!」
ガタっと席を立ち上がる推定バカップルに、太志は急に冷静になって笑う。
「あ、その辺は大丈夫だよ二人とも。龍葉ちゃんにはボクがきっちりお仕置きしておいたブヒ」
「恐っ!? 相変わらず切り替え早すぎだって太志っ!?」
「うわッ、うわ~~、アタシ知ってる。こういう感じのヤツはマジでヤバイし有言実行してるって知ってるわ」
「はははっ、酷いな二人とも。ちょっと龍葉ちゃんのスマホのデータをPCのバックアップ諸共全データ消去した後、物理的に粉々にして復旧不可能にしてさ。亀甲縛りで放置してきただけさ」
爽やかな笑顔で言い放った親友に、ブヒという語尾が取れた彼に。
戦慄した勇気は、思わず姿勢を正して。
「あ、俺用事思い出したから返します太志さん、今度の誕プレはSM用の鞭でよろしいでしょうかっ!!」
「ちょっと勇気っ!? なんで毎回その反応するワケブヒっ?!」
「いやそーなるでしょうに……、天見君『も』外見に似合わず過激なのねぇ……」
「『も』? おい真宵っ!? ほかにもヤベェやつが居るのかっ!?」
「うーん、ボクが思うに勇気はもうちょっと自覚した方が良いブヒよ?」
「いや俺ヤバくねぇから、英雄兄さんみたいに全裸でおっぱぶ行ったり、幼馴染みを亀甲縛りとかしねぇし、いや普通だわ、俺ってばマジ普通、これは……陰キャの中の陰キャじゃね?」
「ユーキ? アンタより上が居てもアンタ自身がヤバい奴だって事は変わらないわよ」
「そうだよ勇気、というかボクより君の方がヤバいと思うブヒ。普通の人は教室に調理道具持ち込んで料理しないし、初対面の女の子に一目惚れキモ男を演じて、お見合いを断らせようとかしないでしょブヒ」
「畜生っ、味方が居な――――…………うん?」
あれ? と勇気は固まった。
今、太志は何か変な事を言わなかっただろうか。
「ちょっと待てテメェ、今何て言ったっ!?」
「突然どーしたのよアンタ」
「いや真宵は気付けっ!! コイツ、今言ってただろうがっ!!」
「えーと、勇気は童顔というか女の子みたいな顔してるからイジられる事もあるブヒけど、イジって来た相手には必ず手作りドーナッツを無理矢理食べさせて復讐してるって言った辺りブヒ??」
「一言も言ってねぇよっ!?」
「え、そんな事してたのアンタ……マジでヤバい奴じゃん」
「離れんな真宵っ!! というか最後の、ほらっ!! お前言ってただろ太志っ!!」
すると太っちょな親友は、ごめんごめんと笑って。
「もしかして、一目惚れしたキモ男の事ブヒ?」
「それだよそれっ!! ――どうして知ってるんだ太志!? 俺は単に許嫁が出来たとしか言ってねぇだろっ!!」
「ッ!?」
勇気と真宵は驚愕すると共に、警戒し顔を険しくするが。
太志は苦笑をひとつ、頭をかきながら言った。
「お見合いの部分はカマをかけただけブヒ、キモ男の部分は、ほら。ボク達なんだかんだで十年ぐらいの付き合いじゃない、流石に思考パターンぐらい読めるようになるブヒよ」
「なん……だとっ!? くぅ~~~~っ、な、なんてヤツなんだ太志ぃっ!! お前こそ親友!! マイベストフレンド!!」
「あ、ちなみに春樹と話し合って出した結論だから」
「は? あの陽キャ野郎め後で絶対にブン殴るっ!!」
「なんでアンタ、春色君だけ厳しいワケ??」
思わず問いかけた真宵だったが、勇気は真顔に戻って素直に答えた。
「何となく」
「何となくってアンタ……、はぁ、それで? 天見君は結局アタシ達をどうしたいワケ?」
「そうだね、そろそろ話を戻そう」
「どーせまた、花蕾に夜這いされたとかだろ? 俺達がラブホに入ったからとか無茶苦茶な理由でさ」
勇気の投げやりな言葉に、太志は深く溜息を吐き出すと。
「そうなんだよ、今年に入って二十回目だよあのクソ女に襲われるのっ!! 君は想像できる? 朝起きたらあの女の顔がドアップだったり、お風呂入ってたら勝手に侵入してきたりっ!! 駅でトイレの個室に入ったら待ちかまえてたりするんだよアイツ!! 助けてブヒよ勇気! 水池さん!!」
「アイツも懲りねぇなぁ……、んで今回は?」
「パフェ奢ってくれるっていうから、一緒に駅まで言ったらラブホに連れ込まれそうになった。その時さぁ、この写真をバラまかれたくなかったらって脅すもんだから、ボクかっとなちゃって。ついね、SM部屋選んで縛って放置してきたよ。ああ、心配しないで
良いブヒよ、時間経過で解けるようにしといたし」
トゲトゲした怒りがヒシヒシと伝わってきて、二人は思わず顔を見合わせた。
「……これ、アタシ何て言えばいいの? ホイホイ一緒に行くあたり仲良いでしょ」
「しっ、それは言うな真宵。……太志はちょっと甘い物が絡むと残念な頭になるんだよ」
「いや聞こえてるからね二人とも、とにかくだ。――ボクはあのクソ女の撃退計画をついに発動しようと思うブヒ!!」
「具体的には?」
「シュールストレミングス缶でテロる」
「成程、それは効果的…………はい? シュル缶?」
「うん、シュル缶。最悪の場合は学校で自爆覚悟で決行するつもりさ。――――デブの意地、見せてやるブヒよ!!」
真宵はシュル缶をスマホで調べて、顔を真っ青にして絶句。
勇気は思わず頭を抱えて、助けを求めるように天を仰ぎ。
「………………何でそうなるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
親友の凶行は、何としてでも止めなければならない。
学校の平和は今、勇気と真宵の二人の肩にかかっていた。
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