第11話 婚約者に誤解されました

学院からの帰り道、今日も私はクロードと共に公爵家の馬車に乗り、屋敷まで送ってもらっていた。


乗り込み、向かい合って座り合い、ここまではいつも通りの光景だったのだが、さきほどからどうもクロードの様子がおかしい。

まあ、私も記憶が戻ってからは、クロードのイケメンぶりに度々狼狽え、そわそわしてしまうので、様子がおかしいのはお互い様なのだが。


「クロード?」


あまりにもしゃべらない上、ずっと俯いているクロードが心配になり、私は話しかけてみることにした。

多少は以前よりイケメンに免疫も出来てきたしね。


「具合でも悪いのですか?馬車に酔ったとか?」


するとクロードはガバッと急に顔を上げ、私を必死な表情で見つめながら言った。


「アメリア、お願いだ。正直に言って欲しい。」


なんだかとてつもなくシリアスな感じ。

もしかして、私が前世の記憶を取り戻したことがバレちゃったかな?

おかしな態度をとっていた自覚は山ほどあるしね。


バレているなら仕方ない。

正直にすべて話そう。


「実は・・・」「他に好きな人が出来たのではないか?」


ほえ?

好きな人?

他にってどういうこと?


不思議そうな顔で戸惑っているであろう私に、更に悲壮感を漂わせつつ、クロードが語り始めた。


「いや、だって、最近のアメリアは僕といても俯いている事が多いし、距離だって前より遠い。だいたい断罪劇なんてものをいつどこで知ったんだい?斬新な劇の終わり方だって、誰かに教えられたんじゃないのかい?アメリアの元婚約者だとか名乗っている男もいるようだし。もしかして僕との婚約を破棄したくて、あんな劇を提案したのかい?」


余程悩んでいたのか、一気に捲し立てられる。


まさかクロードがそんなことを考えていて、ここまで追い詰められていたとは。

悪いことをしてしまった。

驚いたけど、誤解は早めに解かねばならない。

本当に婚約破棄されてしまっては、洒落にならない。


「落ち着いてクロード。他に好きな人なんていないわ。私が好きなのはクロードだけだもの。知っているでしょう?婚約破棄なんて考えたこともないわ。」


面と向かって好きと言うのは恥ずかしかったが、今はそれどころではない。

真っ赤になっているだろうけど、ちゃんと目を見て本心をきちんと伝えなければ。


「でも最近のアメリアはよそよそしく感じる。」


うん、それは謝ります。ごめんなさい。

うっかり前世の記憶のボロが出たら困ると思ったら、上手くしゃべれなかったんです。

何より、クロードが格好良すぎるのに慣れなくて、近付けなかっただけなんだけど。


しっかし、ここでもアーサーが出てくるとはね。

本当にジャマオだわ。


『元婚約者』って。

『元恋人』にもビックリだったのに・・・。

どれだけ嘘を言いふらしてるんだか。

あいつ、本当に絶妙に邪魔なんだけど。

いつかギャフンと言わせたい・・・。


しかし、とりあえず今大切なのはクロードである。

誤解を解いて安心してもらう為に、私は前世の記憶を取り戻したことを、全てクロードに話す事にしたのだった。


どうか気味悪がられて嫌われませんように、と祈りながら・・・。

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